G7/アースデイ オープンフォーラム北海道から世界市民へのメッセージ 

G7/アースデイ オープンフォーラム北海道から世界市民へのメッセージ

 

 G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合の開催を受け、北海道内の個人や市民セクター、研究者が集まって構成した「G7/アースデイ オープンフォーラム北海道」(代表 有坂美紀)は、2023年4月15、16の両日、札幌大通高校オープンスペースにおいて「基調講演」「3つのテーマ別分科会」と「展示交流セッション」(プログラム参照)を実施しました。それらの参加者の総意を汲み、ここに政策決定者を含む世界のすべての市民に向けたメッセージを発信します。

 

1)北海道の環境課題と対応

  豊かな自然環境が残ると言われる北海道においても、明治以降の開拓や都市の発展のために、サケによる海と陸の栄養分の循環や湿地などの生態系がもたらす恵みが失われつつあります。気候変動による生態系の破壊も増えています。アイヌ文化を支える自然素材の確保にも苦労がともなうなど、残された自然環境や地域の自然に根付いた伝統文化を継承していく知恵が求められています。

 高度経済成長期からの効率性の重視とグリーンインフラではないグレーインフラへの依存は、経済的成功と安心をもたらす一方で、レジリエントな生態系を大きく脅かしています。さらに、気候変動や自然災害、都市の拡大、担い手の減少などの社会課題が、人の生活圏へのヒグマ出没に代表される、人と自然の関係性にも変化をもたらしています。災害後に「いきもの」たちが残した「レガシー」から回復した森林にみられる生態系の多様性は、片付けすぎないあいまいな景観を人と自然の間に残しておくことの重要性を教えてくれます。

 身の回りで起きている自然環境の変化に気づき、早期の行動が必要な状況ですが、人々の知識や関心は一様ではありません、専門家と市民が調べ、学び、議論して、現状や課題を理解・共有する場や機会の創出が必要です。異なる立場の人々がつながり、ともに考えることが、自然生態系への理解・共生や、その再生への価値観を醸成していくとわたしたちは考えます。

 

2)北海道の課題を解くための視点

  環境問題は他の問題とも大きく関わっています。例えば、環境の破壊とジェンダー平等の遅滞に相関関係がみられます。同様に北海道におけるさまざまな分野の課題が、環境問題の解決の妨げになっている点も見過ごせません。気候変動対策と生物多様性保全のジレンマも大きな課題です。課題の連鎖を解くためにも「だれかの課題はもしかしたら自分の課題かもしれない」という意識とまなざしの涵養が必要です。

 課題に対するリアリティの獲得には、教育が大きく関わってきます。自己との深い対話を促したり、価値観の違う他者との合意点の発見に喜びを見いだせるような教育や学びによって、諸問題を自分ごととして受け止めることが可能になります。

 このように教育の質的向上やシフトチェンジが求められるなか、北海道では「学ぶための環境」「環境のための学び」のいずれにおいても不十分です。読書環境の整備の遅滞やジェンダー平等に関する立ち遅れ、不合理な学び方・働き方の甘受など、多くの課題を抱えている状況です。

 社会課題に関する無理解は、「SDGsに取り組みたいから障がい者と繋がりたい」「障がい者だから助けたい」という思い上がった態度につながったり、「子どもは常に弱者であるから徹底した管理下におかなければならない」というような誤った思い込みをもたらします。

 性差や社会的立場に関わらず、だれもが平等に豊かな情報と知見を享受でき、自由に発信できる社会づくりを進めることは大きな意義を持ちます。それによって育まれる「自分は社会を変えることができる存在である」という実感や認識こそが、環境を含む多くの問題の解決につながっていくと、わたしたちは考えます。

 北海道の食料自給率は200%を超え、地域によっては1000%を超えます。環境容量を超えた食料生産や土地利用で疲弊している自然環境は、国の発展への貢献や経済原理の前に黙殺されつつあります。日本を分母とした北海道、北海道を分母とした地域という硬直した構図は、ときに脱炭素やグリーンエネルギーなどの環境分野においても、わたしたちにいびつな関係性を迫ります。私たちは食料やエネルギー生産で日本あるいは世界に貢献するのみならず、北海道で暮らす私たち自身が恵まれた自然資本を賢く利用していくことで、豊かに暮らしていくことができる、すなわち、持続可能な社会を先導することで日本・世界に貢献していきます。地域の将来を選び取っていくためには、ボトムアップあるいは市民参加を進めることが重要です。

 また世代間の分断にも目を向けなければなりません。環境問題はこれからの時代を担う若者がやることとか、年長世代のツケは年長世代が払うべきという押し付け合いや責任転嫁、あるいはそれとは逆の過剰な引責や自己犠牲はつまるところなにも生み出しません。世界の中の北海道、世界の中の地域のあり方を考えるために、わたしたちはこのフォーラムを契機に、地域や世代を超えて、だれもが対等な立場で参画できる分野横断のパートナーシップをよりいっそう進めていきます。

 

3)世界市民のみなさんへ

 世界の市民の皆さんに呼びかけたいのは、北海道や北海道の各地域を従来のステレオタイプの行政区・生産地・観光地・消費地として見る・訪れるだけでなく、北海道の個人や市民セクター、研究者だけに限らず、あらゆる未来志向の刺激的な行動に積極的に意識をつないでほしいということです。同時に、世界の北海道と同様な状況にある地域に目を向けるとともに、それらの地域と連携し、SDGsの推進をはかっていきます。

 わたしたちはこれらのアクションを、苦虫をかみ潰したような顔で取り組んでいるわけではありません。ときに感情的な対立に陥る場面もありますが、あくまで明朗で寛容な態度で臨んでいく考えです。なぜならわたしたちはそれを世界と地域、そして他者と自分をリアルに捉えるための美しく、価値ある行為だと思っているからです。

 

 フォーラム参加者の総意のもと、世界の市民に向けたメッセージとして上記を発信します。

 

 

 2023年4月16日

G7/アースデイ オープンフォーラム北海道