春の七草

1月7日は七草の日 七草を入れた七草粥を食べた.この風習は上巳の節句(桃の節句)や端午の節句などの五節句の一つで,年末年始身体をいたわるために七草粥を食し,今年一年の無病息災を願う行事である.今年はコロナ禍の中,何にでも縋りたい気持ちの一つでもあった.

七草粥を食べながら,国土交通省九州地方整備局菊池川河川事務所のパンフレットを思い出した.それには春の七草は川辺で採取できると記載されている.山国川河川事務所も同様のパンフレットを出している.

薬学部では,生薬学や薬用植物学で勉強しているはずであるが,セリ,ナズナ,カブやダイコン以外はほとんど記憶にないので改めて調べてみた.巷で言われているインターネット情報をまとめると以下のようになる.

セリ カロテン(ビタミンAの前駆体),ビタミンB群(葉酸を含む),ビタミンC,ミネラル(カリウム,鉄,銅),食物繊維 → 利尿,高血圧や動脈硬化の抑制(カリウム),増血作用(鉄),整腸効果


ナズナ(ぺんぺん草)ビタミンA.B群,E,ミネラル 食物繊維 → 解熱 利尿作用 高血圧,止血作用に効果


ゴギョウ(ハハコグサ) フラボノイド類,ミネラル(カリウム) → 咳止め,痰きり,喉の炎症,利尿作用.今回の研究結果を参照.ケルセチン → 認知機能改善


ハコベラ(ハコベ)葉緑素クロロフィル),ビタミンB群,ビタミンC,カルシウム,カリウム,カロテノイドやフラボノイド、サポニン → 利尿作用,止血作用,鎮痛作用,歯槽膿漏予防


ホトケノザコオニタビラコ 植物名に注意,科の異なる同名の植物がある,成分? 健胃,整腸作用,高血圧予防.オニタビラコの成分研究は存在.フラボノイド


スズナ(かぶ) ビタミンA,B群,C,カリウム,鉄,食物繊維,ジアスターゼ(消化促進)→ 便秘・胃潰瘍・胃炎・風邪・骨粗鬆症・がんの予防 


スズシロ(大根) ビタミンB群,C,葉酸,ミネラル全般,食物繊維,ジアスターゼ,アミラーゼ,フラボノイド → 消化不良,二日酔い,頭痛,発熱,冷え性,胃炎,便秘の解消.

調べた中にハハコグサの成分研究に関する投稿論文があったので,ケルセチンの最近の研究に関連した備忘録として紹介したい.

ハハコグサ Pseudognaphalium affine (D.Don) Anderb.(キク科)

開花期に全草を採取し水洗いして天日乾燥させたものを生薬ソキクソウ(鼠麹草)という. ソキクソウの煎液は鎮咳去痰扁桃炎のどの腫れに有効で他に利尿作用があるため急性腎炎に伴うむくみの軽減に効果があると言われている.

一 ノートー 生薬学雑誌 63 (2),46−49 (2009 ) ハハコグサ属植物のロイコトリエン 産生抑制活性成分の 同定

安藤 智 教 , 船 川 絵 美子 , 吉田 圭司郎 , 志村 進 株式会社 ロッテ中央研究所

クリックすると論文の緒言,結論を見ることができます.👇👆

緒 言

ロイコトリエンはアラキドン酸等のエイコサポリエン酸から合成される 一群の生理活性物質であり,A 〜E 型とそ の類縁体が 存在する1 ).これらの中で 肥満細胞や好塩基球から生合成されるロイコトリエンC4,ロイコトリエン D4 ,ロイコトリエン E4 は システイニルロイコトリエンと呼ばれ ,気管支喘息や ア ルギー性鼻炎といったアレル ギ ー疾患の発症に大きく 関与している2).

システイニルロイコトリエンはCysLri 受容体を介して , 気管支喘息においては気道平滑筋の収縮 ・血管透過性の 亢進 ・好酸球の浸潤等の作用を発揮する .また ,アレル ギー性鼻炎においては鼻汁の分泌亢進 ・鼻粘膜血管の拡張作用を発揮する2〕.

したがって ,システイニルロイコトリエンの産生を抑制する物質には気管支喘息やアレルギー性鼻炎の症状を緩和する働きが期待される .そこで ,著者らはラット好塩基球性白血病細胞株を用いてシステイニルロイコトリエン の産生抑制活性を有すると考えられる植物の探索を行った .

探索を行った結果 ,ハハコグサ属植物であるハハコグサ(Gnaphalium multiceps wal1) 及び同属の南米産植物で あ る Gnaphalium viravira の花 部 (この部位を現地では Wira Wiraと呼称しているので 以下 Wira Wira とす る )の 抽 出物に強いロイコトリエン産生抑制活性を認めた .

結 論

ハハコグサ属植物であるハハコグサ及び Wira・Wira の花 部の50% エタノール抽出物にRBL−2H3 細胞からのロ イ コトリエン産生抑制活性を見 出 した 抽出物を酢酸エチル,ブタノールで分配し最も高い活性を示した酢酸エ ル 画 分をHPLCにて分画し,活性を示したピ ークを LC −MS で 各種フラボノイド標品と 比較 したところ活性ピークの分 子量が ルテオリン,ケルセチンと一致 した .これらの結果からハハコグサ及 び Wira Wira の 主要な活性成分は ル テオリン及 びケルセチンであると同定した .なお 、Wira Wira のリテンションタイム 28.4 分 の活性ピークを同定する事は出来なかった (Fig.2),

また 、ケルセチンがロイコトリエン産生抑制活性を有している事は以前から知られており.その作用機序は 5 一リ ポ キ シゲナーゼの阻害によるものであると考えられてい る12)〜13).

なお 、Wira Wira は南米では一般的に広く流通 して おり,ケルセチンを多く含むことからケルセチンの供給源とし ても有用であると考えられる .

ロイコトリエンは気管支喘息や ア ルギー性鼻炎といったアレル ギ ー疾患の発症に大きく 関与している.ハハコグサ属植物の成分であるルテオリン,ケルセチンはロイコトリエン産生を抑制する活性を有していることを証明した.

著者らは,ラット好塩基球性白血病細胞株を用いてシステイニルロイコトリエン の産生抑制活性を有する植物の探索を行った. ハハコグサ(及び Wira・Wiraの花部)の50% エタノール抽出物に,RBL−2H3 細胞からのロ イ コトリエン産生抑制活性を見出した.抽出物を酢酸エチル,ブタノールで分配し最も高い活性を示した酢酸エ ル画分をHPLCにて分画し,活性を示したピ ークをLC−MSで各種フラボノイド標品と比較したところ活性ピークの分 子量が ルテオリン,ケルセチンと一致 した. 液体クロマトグラフィーで各ピークに対応する分画を質量分析すると,精密な分子量(同位体存在比を加味した原子量の和)が分かる.今回のように標品がある場合は,各成分を単離することく超微量で同定することが可能になり,大幅な時間と労力が節約できる.分析技術の進歩にはただ驚くばかりである.

今回はハハコグサの成分研究について紹介したが,ケルセチンはたまねぎに多く含まれているいることが最近明らかになった.たまねぎは水にさらすと成分が消失するので注意が必要とのことである.

このようなこともあり,そろそろ現代版七草を選定したら役に立つのではないかと思って,ネット検索したら以下の組み合わせが提案されていた.各々の効能の詳細はリンク資料を見てほしい,大根の消化酵素に加えてキャベツのビタミンU(胃粘膜週副作用,下図),ブロッコリーのケルセチン等など,幅広い栄養素の摂取が期待できそうである.

大根キュウリピーマンキャベツアスパラガスブロッコリ白菜

ビタミンU

ビタミンA前駆体(カロテン)

ビタミンE

追加資料

調査・報告(野菜情報 2018年3月号)

野菜の機能性研究~たまねぎのケルセチンによる認知機能改善の可能性~

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 食品健康機能研究領域 食品機能評価ユニット長 小堀 真珠子

【要約】

 人々の健康への関心は高く、健康の維持・増進に役立つ機能性を表示する機能性表示食品の市場が大きく伸びている。野菜の新たな機能性の解明やヒトでの有効性の実証もますます求められるだろう。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構という)を含む研究グループでは最近、高齢者ボランティアによる介入試験などによりフラボノイドのケルセチンを多く含むたまねぎの摂取が認知機能を改善する可能性を明らかにした。

参考資料

野菜の機能性研究~たまねぎのケルセチンによる認知機能改善 ...

ケルセチンの生活習慣病予防機能 - 農研機構

今月の薬用植物 - 熊本大学薬学部 / 大学院薬学教育部 オニタビラコの成分研究

抗酸化作用を持つフラボノイド類、フェノール性化合物のコーヒー酸誘導体を、抗アレルギー作用を持つセスキテルペンの存在が分かり、島原で用いられる民間薬の用法を化学的に証明しました、オニタビラコの報告。中国の本(中薬大辞典)には、性は涼、味は甘くて少し苦い、無毒、効能は、咽の炎症、乳腺炎など記されています。


新七草粥の作り方。小山浩子さんの胃に優しいレシピ

(2021.1.16)