筒井大介 さんからのメッセージ


 

「子どもたちに、老いや死について伝える絵本を」というご依頼をいただき、どのような絵本を作るべきかと考えながら、子どもの頃に一緒に暮らしていた祖母の姿を思い出してみました。そして、自分は彼女のことを何も知らないということに気づき、今更ながら愕然としたのです。あの頃の自分にとって「祖母」は「祖母」であり、一緒に暮らす「おばあちゃん」でした。祖母がどんな人生を送り、何に喜び、何に悲しみ、何を得て、何を失ってきたのか、そんなことを考えたこともなく、ただただ「おばあちゃん」として接してきました。彼女は誰かの「おばあちゃん」である前に、一人の人間で、人生で起こりうる様々な出来事を経験し、時に喜び、時に絶望し、いくつもの出会いと別れを経て生きてきた筈です。


言うまでもなくそれは当たり前のことですが、子どもの頃の自分はそんなことを考えたこともありませんでした。そして、もしかしたら、多くの子どもたちもそうなのかも知れないと思ったのです。


子どもたちに「老い」や「死」について伝える絵本をどう作るか、それが手がかりになると思いました。


絵本に登場する年老いた「はなのさん」は、「わたしはね、わたしのように いきたいの」と言います。老いていく中で、「自分らしく生きる」ということはどういうことでしょうか。


はなのさんはあなたの「おばあちゃん」や「おじいちゃん」でもあり、街で出会う「お年寄り」でもあり、絵本を読む僕やあなたでもあります。


筒井大介(絵本編集者)