登場人物
猫宮 夏穂(ねこみや かほ) 女性
猫カフェ『Jewelry box』のオーナー兼、看板猫
22歳、中学生に間違えられる程の童顔
猫耳と猫尻尾が生えた人間に姿を変えられる珍しい猫種
ツンデレである
鈴谷 光輝(すずたに こうき) 男性
猫カフェ『Jewelry box』の店員
24歳、カフェの全役割を任せられている苦労人
実質実働店員であり、ホール・厨房・雑用を全て一人でこなす
いじられやすい性格ではあるが、怒ると口調が崩れる
無類の猫好き
楠 伶弥(くすのき れいや) 男性
猫カフェ『Jewelry box』の店員
24歳、女性客に人気だが、あまりホールに立たず裏で猫と遊んでいる
無気力でいつもスタッフルームで猫を愛でている為、猫の扱いは得意
女性客を虜にしているが本人は無関心で無意識な為タチが悪い
いじりたがりのドエス
白銀 樹(しろがね たつき) 男性
猫カフェ『Jewelry box』の店員
20歳、動物好きだが開店中だろうが裏でゲームをしている
厨房を任されているが、必要最低限だけして全部鈴谷に投げている
基本的にホールに立たない為、お客様からの認知度は低い
閉店後に片付けと翌日の仕込みをする裏方店員である
藤田 慎二(ふじた しんじ) 男性
喫茶店『Dream』のマスター
24歳、女性客に人気で常に店は女性客の方が大半
優しい性格で店自慢のオリジナルティーを振舞う
鈴谷とは幼馴染
犬飼 真琴(いぬかい まこと) 女性
喫茶店『Dream』の看板犬
22歳、低身長で童顔である
マスターである藤田の言う事しか聞かないお転婆犬
犬耳と犬尻尾が生えた人間に姿を変えられる珍しい犬種
たまに猫宮のお店の臨時店員をしている
配役表
猫宮 夏穂:
鈴谷 光輝:
楠 伶弥:
白銀 樹:
藤田 慎二:
犬飼 真琴:
猫宮M
「ここは、猫カフェ『Jewelry box』
定休日である今日。私達はとある一室に集まっていた。」
猫宮
「緊急会議!議題はこれ!」
白銀
「新メニューを、考えよう?」
鈴谷
「猫カフェ『Jewelry box』&喫茶店『Dream』合同会議?」
藤田
「いやぁ、いいんですかね?うちの店もちょうど新メニューを出したいなと真琴と相談してたからこちらとしては嬉しいんですが……」
猫宮
「いいんですよ!いつも真琴ちゃんにはお世話になってますので!」
真琴
「夏穂ちゃんのお店と一緒に考えられるの嬉しい!」
猫宮
「私もだよ!一緒に考えようね!」
白銀
「光輝さんの仕事が増える気がしてならないんすけど、光輝さんいいんすか?」
鈴谷
「(感動で涙ぐみながら)猫宮さん、ついにオーナーとしての自覚が!」
猫宮
「伶弥、伶弥!新作出来たら一緒に食べようね!」
楠
「んー?そうだなぁ。出来たら一緒に食べような。
夏穂に甘い物が食べたいって言って良かったよ。
俺は鈴谷さんの作った甘味が食べれて、店としても新作出せて一石二鳥。
いや、藤田さんのお店でも出せるから一石三鳥かな?」
鈴谷
「って、あんたの差し金ですか楠さん!てかもう俺が作る事前提!?
前提で話してません!?ねぇ!厨房は白銀さんの担当でしょう!?」
白銀
「あ、俺ゲームのランキング戦あるんで無理っす」
鈴谷
「いつものお約束の流れ!?ねぇ、俺の扱い酷くなってない!?」
白銀
「え、いつも通りじゃないっすか」
鈴谷
「ひっど!」
藤田
「まぁまぁ。光輝落ち着け。賑やかでいいじゃないか」
鈴谷
「慎二、お前なぁ」
藤田
「新メニューを考案なんて楽しいだろう。
きっと俺達だけじゃ考えられなかったと思うから助かるよ。なぁ、真琴」
犬飼
「うん!私とご主人だけじゃ考えも限られちゃうだろうから、真琴ちゃんに相談してよかった!こうくんもありがとう!」
鈴谷
「いや、まぁ、慎二と犬飼さんがそう言うなら構わないけど……それで猫宮さん、何か考えはあるんですか?」
猫宮
「あるよ!」
白銀
「へぇ?その考えって?」
猫宮
「秋と言えば?」
白銀
「ゲーム」
楠
「寝る」
藤田
「読書かな」
犬飼
「食欲の秋!」
猫宮
「真琴ちゃん、正解!」
犬飼
「やったぁ!」
鈴谷
「いや他の意見にツッコミないんですか!猫宮さん!」
猫宮
「食欲の秋って言ったら、フルーツでしょ?」
鈴谷
「いやスルーしないでくださいよ!?」
猫宮
「ふっふっふっ。そこで!私、猫宮夏穂!久しぶりに頑張りました!
新メニュー考案もそうだけど、今後の猫カフェと喫茶店の為に、果樹園さんと直接契約結んでくるってどうかな?
仲卸を仲介しないで直接店に卸してもらう訳だから、費用削減にもなるしね?」
藤田
「ああ、それはいい考えだ」
犬飼
「楽しそう!」
鈴谷
「猫宮さんにしたら真面目な提案ですね。俺もそれでいいと思います」
猫宮
「って事だから、樹と伶弥も一緒に……」
白銀
「ゲームしてるんで行ってきてください」
楠
「めんどくさいから頑張って。俺は新メニューを食べられればそれでいいから。
寝ながら報告待ってるよ。って事で鈴谷さん」
白銀
「あと、よろしくお願いします」
鈴谷
「って、あんたらなぁあああ!」
猫宮
「えー!一緒に行こうよ!」
藤田
「みんな一緒の方が楽しいじゃないか。ここは一つ、提案に乗ってみるのはどうかな?」
犬飼
「そうだよー。せっかくのお出かけなんだから!」
猫宮
「ねね、ダメ?樹、伶弥」
白銀、楠
「……見返りは?」
※バラバラで構いません
猫宮
「一日オフ。私をモフモフする権利付き」
白銀、楠
「行こうか」
※バラバラで構いません
猫宮
「やったぁ!」
鈴谷
「黙って見てたらあんたらなぁあああああ!
猫宮さんも何勝手に決めてるんですか!尻拭いするの俺なんですよ!?」
猫宮
「この旅行が終わったら光輝オフでいいよ?」
鈴谷
「(泣きながら)……ありがとうございます、猫宮さん」
犬飼
「夏穂ちゃん、扱いうまくなったよねぇ」
藤田
「真琴もあんな風になってしまうのかな?」
犬飼
「私がご主人を扱うなんて無理だよ!」
藤田
「ははは、そうかそうか。真琴は従順だからなぁ。いい子だ」
犬飼
「うぅ、ご主人私の扱いうまいよぉ」
鈴谷
「ところで、果樹園ってどこに行くかもう決まってるんですか?」
猫宮
「決まってるよ!それにアポも取得済み!」
白銀
「へぇ、頑張ったじゃん。偉いな夏穂」
猫宮
「樹に褒められたぁ!」
白銀
「いや、俺だって褒めるから」
楠
「それで?どういう組み合わせで行く?」
藤田
「俺は真琴と組もう。流石に、契約の件までそちらにお世話になる訳にもいきませんから。
今回一緒に新メニューを考えてくださるだけで充分ですよ。ありがとうございます。猫宮さん」
猫宮
「いいんですよ!ちょうど新しいメニューを出そうかなって思ってた所ですから!」
白銀
「(小声)伶弥さんに言われて、が正しいけど」
鈴谷
「(小声)俺あの人だけは敵に回したくないなぁ」
楠
「ん?なに?」
白銀
「いえ、なんでもないっす。なんでもないんでその微笑みやめてください。目が笑ってないっす」
鈴谷
「と、とりあえず犬飼さんと慎二のペアは決まりかな。残りは俺達ですね。猫宮さん、どうしましょうか」
猫宮
「(被らせるように)伶弥は私と!」
鈴谷
「だろうと思いました!」
白銀
「光輝さん、ドンマイ」
鈴谷
「寂しいとか思ってないんだからなぁ!」
白銀
「じゃあ憐れんでおきますね」
鈴谷
「ひどっ!?」
楠
「ん?俺と?そんなに俺とがいいの?」
猫宮
「伶弥とがいい!」
楠
「そかそか。じゃあ、俺と夏穂がペアな」
白銀
「って事は、俺と光輝さんがペアっすね」
鈴谷
「そうだね」
猫宮
「じゃあ、これがそれぞれの果樹園のパンフレットだよ」
藤田
「おお、いい所じゃないか。真琴、ここにするか?」
犬飼
「ご主人と一緒ならどこでも!」
藤田
「では、俺達はここに行くとしよう。帰りに美味しい物でも買っていこう」
犬飼
「えへへ、ご主人と遠出。ご主人とお散歩。ご主人と二人っきり」
猫宮
「真琴ちゃん、顔ニヤニヤしてるよー?」
犬飼
「ふわぁああああ!恥ずかしいぃいいいいい!」
-ボフンと柴犬の姿になる-
犬飼
「くぅん……」
鈴谷
「ま、まぁ仕方ないよ。俺達はどうしようか白銀さん」
白銀
「光輝さんに任せますけど……あ、強いて言うなら電波が通ってる場所でお願いします。ゲーム出来ないのは嫌なんで」
鈴谷
「白銀さんいつもそれだよねぇ。どこも電波通ってると思うけど……
そうだなぁ、じゃあ俺達はここにしようかな」
白銀
「へぇ、いいっすね。緑多くて静かそうで。でもこれ、泊まり決定じゃないっすか……」
鈴谷
「文句言わない」
楠
「じゃあ、俺達はここか。へぇ、結構観光地もあるし、名産品も多いな」
猫宮
「伶弥とお出かけ……」
楠
「距離は近いけど、日帰りは流石にきついかなぁ。いくら涼しくなってきたとはいえ……」
猫宮
「伶弥と二人っきり……」
楠
「夏穂、近くに旅館とかあるなら泊まるか」
猫宮
「伶弥と……」
楠
「……夏穂(耳元で言う感じ)」
猫宮
「ふにゃ!?にゃ、にゃに!?れ、れーや!」
楠
「……聞いてた?」
猫宮
「ぇ、え、え!?な、にゃにが!?ごめん、聞いてにゃかった!」
楠
「……だから、日帰りは俺が嫌だから、近場に旅館があるなら泊まるか?って」
猫宮
「う、うん!……へ?と、お泊り?」
楠
「じゃあ泊まろうかぁ。ん?うん、お泊り。一泊」
猫宮
「ふぇ、ふにゃ、お泊りぃ?」
白銀
「ちょ、夏穂、頭から湯気出てる!」
鈴谷
「ちょっと楠さんやりすぎですよ!猫宮さんが再起不能になったらどうするんですか!」
楠
「え?そしたら、一緒に添い寝でもして、(猫姿の夏穂を)抱いて寝るかなぁ」
猫宮
「!?!?!?!?にゃ、にゃうぅ……」
白銀
「意味深っすよ伶弥さん!」
楠
「えー?」
鈴谷
「猫宮さん!?しっかりしてください!猫宮さーん!」
猫宮
「れーや、と、お泊り……?」
楠
「楽しみにしてるよ?夏穂」
猫宮
「……ふ、にゃ、ふぇ……?」
-目を回しながらボフンと猫の姿に戻る-
鈴谷
「猫宮さああああん!?」
白銀
「あーあー……」
藤田
「おや、真琴と同じになってしまったな」
犬飼
「くぅん、わんわん!」
猫宮
「にゃー……」
白銀
「どうするんすかー?あれ」
楠
「あー、楽しかった」
白銀
「俺よりSって言われません?」
楠
「ん?さぁ?俺SとかMとか興味ないし。ただ、夏穂をからかうのは楽しいかなぁ」
白銀
「うわぁ。俺絶対伶弥さん敵に回したくないっすわ」
楠
「褒め言葉としてもらっておくよ。
それとも、今度白銀さんがハマってるゲームで対戦する?俺もちょうどやってるし」
白銀
「ゲームでも敵に回したくはないっすけど、伶弥さんとゲームなんて滅多にないんでぜひ」
鈴谷
「あんたらそこでなんの約束してんだああああああ!」
藤田
「ははは!ほんと光輝のところは毎度見てて飽きないな」
鈴谷
「毎度毎度被害被ってるけどな。とりあえず、ミーティングはこれくらいにしましょうか。
明日もお互い通常営業日ですし、長くなりましたが、解散で」
白銀
「じゃあ、明日の仕込みだけ終わらせておきます」
楠
「俺は帰るよ。明日シフト昼から入ってるし」
鈴谷
「ちゃんと来てくださいよ楠さん」
楠
「はーい。んじゃ、お先に上がりますわ」
白銀
「お疲れ様っす」
藤田
「じゃあ、俺達も帰るとしようか。じゃあな、光輝。頑張れよ。お疲れ様」
鈴谷
「はは、ありがとう慎二。お疲れ様」
犬飼
「わん!」
鈴谷
「犬飼さんも、お疲れ様です」
白銀
「光輝さん、帰っても大丈夫っすよ。夏穂の事と戸締り俺がしとくんで」
鈴谷
「そう?ありがとう。じゃあ、お願いしようかな」
白銀
「うぃーす。お疲れ様っす、光輝さん」
鈴谷
「白銀さんも、お疲れ様」
-鈴谷・白銀ペア-
鈴谷
「白銀さん、早く行きますよー!」
白銀
「はっ、はぁ!こ、これは!俺が今やってるソウルスティングスから出てるオンラインRPG『 -追憶の欠片-』のイベントコード付き攻略本!
どこ探しても売り切れで諦めてたのに、こんな所で出会えるとは神のお導き!?」
鈴谷
「白銀さーん、アポの時間間に合わないんで行きますよ」
白銀
「ぁ、あぁああ!俺のマイベスト本んんんん!」
鈴谷
「仕事が終われば寄り道いくらでも出来るでしょう。左に行って、真っ直ぐ、コンビニを斜め右に……」
白銀
「ぅ、うっ、俺のイベントコード。俺のランキング」
鈴谷
「帰ったらやればいいでしょう。えっと、右行って、次が……」
白銀
「泊りがけで来てるんすから無くなったらどうするんすかぁ。俺、ランキング戦放置して来てるんすよ?」
鈴谷
「お店とゲームどっちが大事なんですかー?」
白銀
「ゲーム」
鈴谷
「即答。まぁ答えなんて知ってたけど……ここを後は真っ直ぐか……」
白銀
「帰りに買ってください」
鈴谷
「俺が買うの!?」
白銀
「いいじゃないっすか。俺、ゲーム放置して来てるんすから、それくらい」
鈴谷
「……買ってもいいけど、ちゃんと仕事してくださいねー?」
白銀
「うぃっす。とりあえず光輝さん」
鈴谷
「なにー?」
白銀
「首根っこ掴んで引きずるのやめてくれません?視線が痛いっす。俺子猫じゃないんすから、母猫に運ばれてる子猫みたいっすよ」
鈴谷
「……白銀さん離すとどこか行くでしょ」
白銀
「……ストレス溜まってますよね」
鈴谷
「だぁれのせいかなぁ?」
白銀
「うぃす。まぁ楽なんでいいっすけど。
ところで、俺達ってどこの果樹園行くんすか?」
鈴谷
「キウイフルーツだね」
白銀
「あぁ、いいっすね」
鈴谷
「メニューのイメージつく?」
白銀
「多少。単体だけだと味気ないので何か脇役が欲しいっすね。
夏穂と伶弥さんの方次第っす。合わせられそうなら合わせたいっすね」
鈴谷
「聞いてみる?」
白銀
「お願いします」
-猫宮・楠ペアに電話をかける-
鈴谷
「もしもし楠さん?って、なんか凄い猫宮さんのゴロゴロ言ってる声聞こえるんですけど何してるんですか?
あー、なるほどそういう事ですか……あぁ、楠さん達が行く果樹園の育ててる果物が知りたかったんです。
なるほど、ありがとうございます猫宮さん。楠さんに甘やかしてもらってよかったですね。
……分かりました。楠さん、ちゃんとお仕事してくださいね?……じゃあ、そういうことでよろしくお願いします」
-電話を切る-
鈴谷
「葡萄(ぶどう)だってさ」
白銀
「あー、いいっすね。キウイと葡萄なら合わせやすいっす」
鈴谷
「さっきよりメニュー考案は進むかなぁ」
白銀
「そうっすねー」
鈴谷
「集まったらまた全員で考えようか」
白銀
「うぃっす」
鈴谷
「あ、着いた。ここだよ。キウイフルーツ農家さん」
白銀
「うわ、敷地でかっ」
鈴谷
「ここら辺で一番大きい果樹園みたいだね」
白銀
「よくここのアポ取れましたね」
鈴谷
「たまに見せる猫宮さんのオーナー力は凄いよ。尊敬する」
白銀
「まぁ、伊達にオーナー兼看板猫やってないっすよね」
鈴谷
「そうだね。それじゃあ、交渉しに行こうか。
白銀さん、経営者の前ではちゃんとしてくださいね?」
白銀
「分かってますよ。店に泥は塗りませんから」
-果樹園の経営者の所へ行く-
鈴谷
「すいません。こちらの果樹園の方ですか?……あ、失礼致しました。私達、猫カフェ『Jewelry Box』の者です。
先日、オーナーの猫宮からお電話致しました。当店の新メニュー考案に関する直接契約の件でお伺いしたのですが……
はい、すいません。よろしくお願いします」
白銀
「バイト、雇ってるんすね」
鈴谷
「これだけ広いと雇うでしょう。短期バイトの子だろうと思うけど。今経営者さん呼んできてくれるって」
白銀
「にしても、ここから見る限りでも結構実ってますね」
鈴谷
「そうだね」
-藤田から電話がかかってくる-
鈴谷
「ん?慎二から?もしもし、どうした?……ぇ、猫宮さんから?
……ああ、なるほど。大丈夫だ。寧ろ助かるよ。ありがとう。
……そうだな。おう、じゃあ後でな」
-電話を切る-
白銀
「藤田さん、なんの用だったんすか?」
鈴谷
「こっちで契約結んだ果樹園の果物を向こうに少し分ける変わりに、向こうからも少し貰うって話だよ」
白銀
「いいんすかそれ。契約自体はこっちが結ぶんですから」
鈴谷
「試作品を作る時だけでいいってさ。気に入ったら慎二の方から直接契約結びに行くって」
白銀
「ああ、それなら安心っすね」
-経営者がくる-
鈴谷
「初めまして。私、猫カフェ『Jewelry Box』の鈴谷と申します。
いえ、こちらこそ突然だったのにお時間作っていただきありがとうございます」
白銀
「同じく白銀と申します。新メニュー考案にご協力いただけるということでありがとうございます。
……いえ、お客様に新鮮なフルーツを味わっていただきたいですから、産地直送にこだわっております。
猫宮の方から直接こちらのキウイフルーツを使いたいと申しておりますので、どうぞよろしくお願いします」
鈴谷
「そんなご謙遜なさらないでください。見るだけで丁寧に栽培されているのが分かります。猫宮が使いたいと言ったのも納得です」
白銀
「果樹園の中を案内して下さるんですか?ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきます」
-経営者に説明されながら果樹園を見て回る-
鈴谷
「なるほど、独自の栽培方法をされてるんですね。日光もよくあたる土地ですし、水はけも良さそうな土ですね。
……ああ、農業系の大学にいたものですから、多少なり専門知識はあります」
白銀
「この品種、青果店によく並べられてる”ヘイワード”ですよね。
甘味と酸味のバランスが良くなる品種ですし、これならゼリームースとかタルトに使えそうだな。
……ああ、私は調理系の大学です。品種に関しては独学ですが学びました。
調理の仕方やどの料理に向いてるかっていうのも品種によって変わりますから。
……え、味見させていただけるんですか?ありがとうございます」
-その場で皮を剥いてもらい味見させてもらう-
鈴谷
「(食べる)あ、美味しい。甘味と酸味のバランスちょうどいいですね」
白銀
「(食べる)甘すぎず酸っぱすぎず……うん、これならお客様に納得いくメニューが出せるな」
鈴谷
「いえ、お目にかかるなんてとんでもないです。私達は正直に言ったまでで……え、直接契約、いいんですか?」
白銀
「こんなに分かってくれているお店の方になら、自信を持って出せるって……ほんと、いいんですか?」
-二つ返事で契約承諾を受ける-
鈴谷
「ありがとうございます。猫宮も喜ぶと思います。
……はい、事務所の方に戻りましたら契約書類にサインをお願い致します」
-順調に話が進み、果樹園との契約を結び終わる-
鈴谷
「それでは、本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。
いえ、こちらも美味しいキウイフルーツを味見させていただきありがとうございます。
契約直後なのにこんなにお土産も頂いてしまって……」
白銀
「他の品種も提供してくださるという事でありがとうございます。これから、よろしくお願い致します。」
鈴谷
「それでは、失礼致します」
-お辞儀をし、その場を後にする。暫くして大きく息を吐き出す-
白銀
「はぁ。あー、凄い肩凝ったんすけど……」
鈴谷
「お疲れ様、白銀さん」
白銀
「ほんとっすよ。慣れない事はするもんじゃないっすねぇ」
鈴谷
「まぁまぁ。それじゃあ、ホテルにチェックインしに行こうか」
白銀
「うぃーす。帰りに攻略本買ってくださいね」
鈴谷
「……覚えてたんだ」
白銀
「ゲームのことに関してだけは絶対に忘れませんから」
鈴谷
「はいはい」
-猫宮・楠ペア-
楠
「ふぁ、あー、眠い」
猫宮
「眠いのはいつもでしょ?」
楠
「んー、なんでこんな朝早くから運転しないといけないのかなぁ」
猫宮
「私達が一番近い距離だから?」
楠
「理由になってない。電車でいいでしょ。仕事以外で運転したくないんだけど?」
猫宮
「立派なお仕事です」
楠
「んー、仕事っていうより……」
猫宮
「にゃ?なに、伶弥」
楠
「……ドライブ?」
猫宮
「……!?!?」
楠
「あれ、気付いてなかった?契約先行くまでは、軽いドライブだよね?
夏穂が望んでた通り大好きな俺と二人っきりになれてるけど……
なんだ、最初からこれが目的で車で行こうって言いだしたのかと思ったんだけど、違うの?」
猫宮
「にゃ、にゃ……」
楠
「電車だと公衆の目があるから思いっきり甘えられない。でも車内だと助手席に座れるし周りの視線もそんなに感じない」
猫宮
「にゃぁああ!ストップ!」
楠
「俺に甘やかされ放題だもんなぁ?」
猫宮
「うぅ、今日の伶弥意地悪だぁ」
楠
「ふっ、意地悪な俺が好きな癖に、よく言うね?」
猫宮
「全然、そんな事意識してなかったのに……」
楠
「はいはい。よしよし、いい子」
猫宮
「(楠に撫でられゴロゴロ鳴く)ふにゃぁ……」
-鈴谷から電話がかかってくる-
楠
「ん?誰から……鈴谷さん?もしもし、どうしたの。ん?ああ、今夏穂の事撫でてるから」
猫宮
「んにゃ、伶弥ー」
楠
「うん、そういうこと。それで?いきなり電話なんて珍しいね。
なにかトラブル?……ああ、なるほど。夏穂、今から行くのって何育ててる果樹園?」
猫宮
「葡萄だよー。にゃあ、伶弥そこもっとー」
楠
「はいはい。ってことだって、鈴谷さん。……分かってるよ。鈴谷さんの方も頑張って」
-電話を切る-
猫宮
「光輝なんてー?」
楠
「俺に甘やかしてもらってよかったですね、って」
猫宮
「えへへ、いっぱい甘やかしてもらってるー」
楠
「そうだなぁ。あぁ、新メニュー考えるならこっちで契約結んだ果物、藤田さんの方にも提供できないかな。
向こうのお店の分まで直接契約を結ぶっていうのは無理だけど、試作品を作る時だけでも分けて、後は藤田さんが気に入れば直接契約結びに行くだろうし」
猫宮
「あ、いいね。代わりに向こうのも少しだけ分けてもらえたりしないかなぁ」
楠
「俺、藤田さん達の連絡先知らないから、夏穂から連絡入れて。運転に集中したいから」
猫宮
「うん、真琴ちゃんに聞いてみる!」
-犬飼に電話をかける-
猫宮
「あ、もしもし真琴ちゃん?あのね、こっちで契約結んだ果物を試作品作る時に少し分けるから、そっちで契約結んだ果物少し分けてくれないかな?
……ほんとですか?ありがとうございます藤田さん!それで契約なんだけど、猫カフェとして契約結んじゃうから、もし試作品を作って果物を気に入ったなら喫茶店『Dream』として直接契約を結びに行ってくれる?
……うん、それでこの事そっちから光輝に伝えてほしいんだけど大丈夫?
……うん、ありがとう!ううん、こっちこそありがとうだよ!……うん、じゃあまたね!」
-電話を切る-
楠
「なんだって?」
猫宮
「大丈夫だって!」
楠
「そかそか。もう少しで契約先着くぞ」
猫宮
「そっかぁ……」
楠
「なに?」
猫宮
「……別にー?」
楠
「ふぅん?ま、いいけど……ほら、着いたぞ」
猫宮
「うん。伶弥、ちゃんとしてね」
楠
「はぁ、分かってるよ。オーナー?」
猫宮
「……そういうの、ずるいと思う」
楠
「好きな癖に」
猫宮
「行くよ!」
楠
「はいはい」
-果樹園に向かう-
猫宮
「こんにちは。こちらの果樹園の方ですか?
私、先日お電話させていただいた、猫カフェ『Jewelry Box』の猫宮と申します。
当店の新メニュー考案に関しての直接契約の件でお伺いしたのですが、経営者の方は居られますでしょうか?……すいません。お願い致します」
楠
「……オーナーらしいじゃん」
猫宮
「オーナーです。私もたまにはやるんだからね!?」
楠
「自分で“たまには”って言ったらダメだと思うんだけど……」
猫宮
「うぅ……」
楠
「ほら、来たよ。夏穂、ちゃんとね」
猫宮
「伶弥もちゃんとね」
楠
「当然」
-経営者が来る-
猫宮
「初めまして。こんにちは。私、先日お電話させていただいた猫カフェ『Jewelry Box』の猫宮と申します」
楠
「同じく楠と申します」
猫宮
「本日は私達の為に貴重なお時間をお作りいただきありがとうございます。
いえ、独自の栽培方法、出荷基準、消費者へのお心遣い等、とても興味深くパンフレットを拝見させていただきました」
楠
「栽培されているのが一種類にも関わらず、その品種の多さにも驚きました。
猫宮の方もこちらの葡萄をぜひ当店の新メニューにと考えております」
猫宮
「いえ、ここの気候は栽培にはよく向いてます。
ここに来るまでに収穫風景を拝見させていただきましたが、とても丁寧に扱われていて、大切にされているんだなと感じました。
自分の育てた子を送り出す親のようだと言う経営者の方も多くいるという話をよく聞きます。
そんな大切なお子さんを、ぜひ私達のお店に迎え入れたいと、ここに来て益々思いました」
楠
「当店は猫カフェです。猫に癒されるのが第一の目的にはなりますが、カフェでもあります。
中には当店のメニューも気に入って下さり、通っていただいている方もいる為、自信を持ってお客様に提供しております」
猫宮
「こちらの葡萄、ぜひ当店で使わせてください」
-いい返事が中々貰えず焦り始める猫宮-
楠
「……ところで、今あちらで収穫なされているのは、ルーベルマスカットと甲斐路(かいじ)を交配して生まれた選抜育成品種の”ウインク”ですよね?
ここに来るまでにも、ウインクの交配元になった日本の気候下で育成出来る欧州種の赤葡萄の甲斐路。
別名赤いマスカットとも呼ばれています。
他にもロザキにマスカット・オブ・アレキサンドリアを交配して生まれた白葡萄品種のロザリオ・ビアンコもありました。
アレキサンドリアは、マスカットの王様と呼ばれている事でも有名ですよね」
-楠の問いかけに経営者も関心する-
楠
「栽培されている全ての品種の収穫時期を被らせている事から、経営体制もしっかりなされていると感じました」
猫宮
「ロザリオ・ビアンコは皮ごと食べる品種で、甘味(かんみ)が強く酸味が控えめな為、ムースゼリーに合うかと思います。
ウインクと甲斐路はタルトに使おうかと考えております。黒と赤のコントラストにシュガーパウダーの白、アラザンの銀が映えると思いますよ」
-経営者は二人の会話に関心して、契約の話をし始める-
猫宮
「え、よろしいんですか?……あ、ありがとうございます!
それでは、こちらの契約書類にサインをお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?
……はい、はい、ええ、大丈夫です」
-受け取った契約書類にサインをし、お土産にと獲れたての葡萄を渡す-
猫宮
「え、いいんですか?……いえ、こちらこそお電話をしたとはいえ急な訪問にも関わらずお時間を作っていただきありがとうございます。
こんなに沢山のお土産まで頂いてしまって、なんとお礼を言ったらいいか……はい、いいんですよ。これから猫カフェ『Jewelry Box』をよろしくお願いします。」
-お辞儀をし、その場を後にする-
楠
「あー、疲れた」
猫宮
「伶弥、ありがとう」
楠
「んー?なにが?」
猫宮
「さっき……ふにゃ!?」
楠
「(猫宮の頭を撫で)あれは全部夏穂の力」
猫宮
「うぅ、伶弥の力でもあるよ。私一人じゃ契約なんて出来なかったもん」
楠
「ふぅん?俺はただ言いたかった事言っただけだからねぇ」
猫宮
「伶弥……」
楠
「お土産も出来たし、契約も結べたし、結果さえ良ければいいよ。ここまで運転したのが無駄にならなくて俺としては万々歳」
猫宮
「……契約結べなかったら?」
楠
「んー?……その時はその時」
猫宮
「伶弥、目が笑ってない」
楠
「はいはい。とりあえず、頑張った俺にご褒美ちょうだい」
猫宮
「え、ご褒美?」
楠
「んー?旅館近くまで俺の膝の上」
猫宮
「にゃ!?」
-驚いた拍子に猫の姿になった猫宮を抱き上げる-
楠
「そうそう、話が早くて助かるよ」
猫宮
「にゃう……」
楠
「じゃあ、行こうか。あ、そうだ。夏穂?」
猫宮
「にゃ?」
楠
「お疲れ様」
猫宮
「にゃーん!」
-藤田・犬飼ペア-
-アポを取った果樹園に向かっている-
藤田
「さて、仕事でこんな遠くまでくるのは初めてだな」
犬飼
「飛行機長かったぁ!」
藤田
「はは、たった2時間じゃないか」
犬飼
「それでも長いよ!だって背伸び出来ないし足も伸ばせなかったもん!」
藤田
「それは仕方ないな。さて、今日は仕事に集中して、明日少しだけ観光する事にしようか」
犬飼
「うん!えへへ、ご主人とお散歩ー!」
藤田
「随分と遠い散歩になったな」
犬飼
「寧ろ遠いお散歩の方がご主人と一緒にいれるからいいの!」
藤田
「そうかそうか。さて、せっかく猫宮さんがアポを取ってくれたんだから、早く行かないと失礼に値するな」
犬飼
「はっ!行こう行こう!契約結べなくなっちゃう!」
藤田
「そんなに急がなくても果樹園は逃げたりしないぞ、真琴」
犬飼
「だってー!」
-猫宮から電話がかかってくる-
犬飼
「ん?電話……あ、夏穂ちゃんからだ!もしもし、夏穂ちゃんどうしたの?
うん、うん……ご主人、夏穂ちゃんがこっちの食材少し分けてくれませんか?って!」
藤田
「ああ、構いませんよ猫宮さん」
犬飼
「だって夏穂ちゃん!うん、うん……うん!分かった!ありがとう、夏穂ちゃん!じゃあ、また後でね!」
-電話を切る-
藤田
「猫宮さん、他になんて言っていたのかな?」
犬飼
「お礼に向こうの果物も分けてくれるって!
契約自体は猫カフェ『Jewelry Box』で結んじゃうから、分けられるのは試作品作る時だけ。
気に入ったら喫茶店『Dream』として契約結びに行ってくださいって!」
藤田
「それは嬉しいな。新作メニューの考えが膨らむよ。一番は真琴に味見をしてもらわないとな」
犬飼
「え、いいの!?」
藤田
「勿論。うちの看板犬だからな。店員らしく、試食してくれるかい?」
犬飼
「うん!えへへ、ご主人の役に立てるの嬉しい!」
藤田
「そうかそうか。この事、光輝は知ってるのか?」
犬飼
「あ、夏穂ちゃんに頼まれてたんだった!こうくんに連絡入れないと!」
藤田
「ああ、俺から連絡しておこう」
-鈴谷に電話をかける-
藤田
「ああ、光輝。さっき猫宮さんから連絡があってな。
こっちの果物をそっちに分けるお礼にそっちで頂いた果物をこっちに分けてくれるそうだ。
契約自体はうちが気に入ったらしにいくから大丈夫だ。光輝もそれでいいか?
……はは、こちらとしても助かる。一石二鳥になったな。
……ああ、そういう事だから、後でよろしくな」
-電話を切る-
藤田
「光輝もOKだそうだ」
犬飼
「じゃあ、帰ったらみんなでメニュー考案会議だね!」
藤田
「それは楽しそうだ」
犬飼
「うん!凄い楽しみ!」
藤田
「俺もだよ。さて、着いたな。ここが猫宮さんがアポを取ってくれた果樹園だ」
犬飼
「わぁ、大きい。あれ?ねぇねぇご主人。誰かあそこに立ってるよ?」
藤田
「おや、もしや経営者の方かな?」
-経営者と思われる方に近づく-
藤田
「こんにちは。すいません、こちらの果樹園の方ですか?
……いえ、わざわざお出迎えいただきありがとうございます。
疲れたなんてそんな、お気になさらないでください。……はい、お願い致します。」
-果樹園の中を案内されながら、事務所に通される-
藤田
「改めまして、こんにちは。本日は貴重なお時間を作っていただきありがとうございます。
私、喫茶店『Dream』の藤田と申します」
犬飼
「同じく、犬飼と申します」
藤田
「先日、猫カフェ『Jewelry Box』の猫宮という者からお電話致しました。新メニュー考案に関する直接契約の件でお伺いさせていただきました」
犬飼
「はい、私共の店と猫カフェさんとは仲良くさせていただいております。
今回、合同で新メニュー考案をと言う事で、猫宮の方からお電話させていただきました」
-経営者の方からも、意外と好印象な発言を貰える-
藤田
「いえいえ、ぜひ当店にこちらの林檎を使用させていただきたくお伺いしたんですよ。
林檎農家さんだとは聞いておりましたが、実際に見させていただくと林檎の種類だけでもいくつかありますね」
犬飼
「分かりますよ。大きさや果皮の色でも種類は見分けられますから。
見る限りですとこちらは紅玉(こうぎょく)を多く栽培なされているんですね」
藤田
「新メニューとしてアップルパイを出そうかと考えておりまして、荷崩れしにくい紅玉が最適なんです。
他にも見る限りですと王林、つがる、ジョナゴールドも栽培されておりますよね?
とても種類も豊富で、王林はコンポートにしてムースケーキに、つがるとジョナゴールドは果肉がしっかりしているのでタルトに使用させていただこうかと……」
-経営者も二人の意見に同意する-
藤田
「いえ、フルーツを扱ってる身ですから多少なりの知識はありますよ。
まだまだ勉強不足な点もあります。色々教えていただきたいですね」
-経営者の方から直接契約の話を始める-
藤田
「私共としてはこちらと契約を結びたいと思いお伺いしたんですよ。
そんなご謙遜なさらず、自信を持ってください」
-契約者の方からも「ぜひに」と契約承諾する-
藤田
「ありがとうございます。快く承諾いただけて嬉しいです。
(契約書類を出しながら)え、契約のお話は私共が初めてなんですか?……私共の店舗が初。
それは勿体無い。こんないい林檎農家さんを見過ごすとは……はは、お世辞なんかじゃありませんよ。正直な感想です。
あ、こちらの内容で間違いなければここにサインをお願いします」
-渡された書類にサインを書く-
藤田
「はい、ありがとうございます。こちらの林檎を使わせていただけるのを楽しみにしております。きっとお客様も喜ばれます」
-せっかくだから試作品作りにいくつか持っていってくださいと言われる-
藤田
「よろしいんですか?……ありがとうございます。では、お言葉に甘えていただいていきます」
犬飼
「(経営者がお土産用にと林檎を取りに席を立つ)よかったね、ご主人」
藤田
「ああ、ここまで順調にいくとは俺も驚きだ」
犬飼
「(経営者が戻ってくる)こんなにいただいてしまってよろしいんですか?
ありがとうございます。試作品作りに使わせていただきますね」
藤田
「それでは、我々はこれで失礼致します。
あ、帰る際果樹園の中を見学させていただいてもよろしいでしょうか?
……はい、分かりました。急な訪問にも関わらずお時間を作っていただきありがとうございます」
犬飼
「はい、今後とも喫茶店『Dream』をよろしくお願い致します。それでは、失礼致します」
-事務所を後にし、果樹園の中を見て回る-
犬飼
「んー!お仕事完了!」
藤田
「真琴、荷物重いだろう。俺が持とう」
犬飼
「大丈夫!ご主人は持たなくて、あっ!」
藤田
「(犬飼から荷物を取る)女性に重いものを持たせる訳にはいかないからな」
犬飼
「むぅ、ご主人ずるいー」
藤田
「真琴はお転婆だからな。はしゃぎすぎて転ぶだろう。
それに、せっかく貰った林檎も台無しになるぞ?みんなとのメニュー考案楽しみじゃないのか?」
犬飼
「はっ!そうだった!それはダメ!夏穂ちゃん達と一緒に作るの!」
藤田
「なら、俺に大人しく持たせてくれ」
犬飼
「はーい」
藤田
「いい子だ。しかし、ここは本当に自然豊かだ。栽培されている林檎も丁寧に扱われている。情を込めているのが分かるな」
犬飼
「こんないい林檎、使わせてもらっちゃっていいのかなぁ」
藤田
「託してくれたんだ。大切に使わせてもらおう」
犬飼
「うん!」
藤田
「さて、ホテルのチェックインまでは時間がある、観光していくかい?」
犬飼
「うん!する!」
藤田
「じゃあ、行こうか」
-後日:猫カフェ『Jewelry BOX』にて-
猫宮M
「それぞれ無事に契約を終えた私達は、それぞれの成果の報告と試作品作りの為、猫カフェのとある一室に集まっていた」
鈴谷
「へぇ、それは俺も見たかったなぁ」
白銀
「伶弥さんの仕事モードとか滅多に見れないっすからねぇ」
猫宮
「もう、凄かったんだよ!」
楠
「二度としたくない」
犬飼
「夏穂ちゃん助ける為にくすくす頑張ったんだよねー?」
楠
「早く済ませたかっただけ」
犬飼
「くすくすツンデレだー」
藤田
「それにしても、凄い量の葡萄だ。何品種あるんだ」
鈴谷
「全部で三品種。それを三房ずつって、楠さんどんだけですか」
猫宮
「もう伶弥がいなかったら契約取れなかったかもしれないくらいだったんだよ!
でも伶弥の言葉に凄い関心示してくれて、信用してくれたの!」
白銀
「よかったな、夏穂。
その後伶弥さんにいっぱい褒めてもらったんだろ?」
猫宮
「(照れながら)う、うん」
白銀
「よかったじゃん」
藤田
「じゃあ俺達の成果かな。意外とすんなり契約の話には持ち込めたよ。
向こうも契約自体の話をされるのは初めてらしく、初契約が俺達の店だ」
犬飼
「うん!凄い優しそうな人だった!」
藤田
「林檎の種類も、紅玉、王林、つがる、ジョナゴールドをいただいたよ」
鈴谷
「いい品種ばかりじゃないか」
楠
「香りもいいですね」
藤田
「分かりますか。流石ですね楠さん。
紅玉はアップルパイ。王林はコンポートにしてムースケーキ。
ジョナゴールドとつがるはタルトにしようかと考えていてね。
白銀さん、どう思う?」
白銀
「いいと思いますよ。甘味と酸味のバランスがいい品種ばかりなんで、林檎は結構どんなスイーツにも組み合わせが利きますから」
猫宮
「葡萄はムースゼリーとタルトに使おうかなって」
鈴谷
「どれも大粒品種の皮ごと食べれる種類ですね。
あ、葡萄の皮でジュースとか、ジャム、クッキーとかもいいかもな」
犬飼
「こうくんの頭フル回転!」
楠
「じゃあ、鈴谷さん、作って。俺寝てるから出来たら起こしてよ。試食はする」
鈴谷
「あんたそれだけが目的だろ!」
楠
「えー?最初からそれ目的だったよー?」
犬飼
「(小声)わぁ、くすくす言い切ったぁ」
猫宮
「(小声)いつもだよー?真琴ちゃん」
犬飼
「(小声)そうだったねー」
藤田
「ところで、光輝と白銀さんの方はキウイフルーツだけど何に使うんだ?」
鈴谷
「ああ、グリーンキウイのヘイワードとゴールドキウイのゼスプリゴールドはレアチーズタルトの飾り付けにしようかなって」
白銀
「薔薇の形にして乗せるんすよ。後は普通にムースゼリーっすかね。キウイジュースでもいいっすけど」
藤田
「ふむ、喫茶店で出せるようなメニューが作れるかな……」
犬飼
「んー、ケーキ系統しか思いつかない」
鈴谷
「そうだなぁ。慎二の店でも出せるようなメニュー……」
楠
「……藤田さん、喫茶店『Dream』は紅茶をメインに出してますよね?」
藤田
「お客様のニーズに合わせて出してますが……」
楠
「ロシアンティーとか、どうですか?」
藤田
「ああ、それは名案だ」
猫宮
「ロシアンティーって、紅茶にジャムを入れて飲む?」
楠
「それは間違った飲み方」
猫宮
「そうなの!?」
藤田
「濃く煮出した紅茶を用意するんだ。ティーカップとは別に用意された器にジャムが添えられているんです。
スプーンで直接ジャムを舐めながら濃い目の紅茶を飲むというのが本当のロシアンティーの飲み方なんですよ」
猫宮
「へぇ、知らなかった」
鈴谷
「季節によってジャムを変えれば一年を通して楽しめる。慎二、いい新メニューになったな」
藤田
「ああ。ありがとうございます、楠さん」
楠
「いいんですよ。参考になったようで」
白銀
「楠さん、知識量やばいっすね」
楠
「常識」
犬飼
「ご主人、濃い目の紅茶ならアッサム、ニルギル、ディンブラだけど、これ飲み比べとジャムの組み合わせをお客様に見つけてもらうとかどうかな?」
藤田
「真琴、それはいい考えだ。楽しくなってきたぞ」
犬飼
「えへへ、ご主人に褒められたー!」
白銀
「じゃあ、さっそく新メニューの試作品作りしますか。早めに終わらせてゲームしたいんで」
犬飼
「たっちゃんはいつもそれだねー」
鈴谷
「楠さん、逃げないでくださいね」
楠
「はぁ、分かってるよ」
白銀
「キウイフルーツの皮剥くの苦手なんすよねぇ」
猫宮
「……ねぇねぇ、樹」
白銀
「ん?どうした?夏穂」
猫宮
「なんか、凄いいい香りする」
白銀
「あー、結構追熟したからなぁ」
猫宮
「それもだけど、なんか、頭がぼーっとして……」
白銀
「え?」
猫宮
「ふにゃ?」
白銀
「夏穂!」
-ふらっと身体が揺れ、そのままペタンと座り込む-
鈴谷
「え、猫宮さん!?」
犬飼
「真琴ちゃん!」
猫宮
「にゃあ、れーやー……抱っこぉ……」
楠
「夏穂、急にどうした」
猫宮
「にゃんか、ふわふわ、するぅ?えへへ、気持ちいいー」
楠
「……酔ってる?」
藤田
「これは、どういう事なんだ?」
猫宮
「えへへ、れーやー……」
楠
「よしよし。いい子だ。白銀さん、夏穂がこうなる前何してた?」
白銀
「え、普通にキウイフルーツを……あ」
楠
「うん、それが原因だね」
犬飼
「え、え?どういう事?」
藤田
「ああ、なるほど」
白銀
「光輝さん。キウイフルーツって、マタタビ科、ですよね?」
鈴谷
「……あ」
幕