登場人物
猫宮 夏穂(ねこみや かほ) 女性
猫カフェ『Jewelry box』のオーナー兼、看板猫
22歳、中学生に間違えられる程の童顔
猫耳と猫尻尾が生えた人間に姿を変えられる珍しい猫種
ツンデレである
鈴谷 光輝(すずたに こうき) 男性
猫カフェ『Jewelry box』の店員
24歳、カフェの全役割を任せられている苦労人
実質実働店員であり、ホール・厨房・雑用を全て一人でこなす
いじられやすい性格ではあるが、怒ると口調が崩れる
無類の猫好き
楠 伶弥(くすのき れいや) 男性
猫カフェ『Jewelry box』の店員
24歳、女性客に人気だが、あまりホールに立たず裏で猫と遊んでいる
無気力でいつもスタッフルームで猫を愛でている為、猫の扱いは得意
女性客を虜にしているが本人は無関心で無意識な為タチが悪い
いじりたがりのドエス
白銀 樹(しろがね たつき) 男性
猫カフェ『Jewelry box』の店員
20歳、動物好きだが開店中だろうが裏でゲームをしている
厨房を任されているが、必要最低限だけして全部鈴谷に投げている
基本的にホールに立たない為、お客様からの認知度は低い
閉店後に片付けと翌日の仕込みをする裏方店員である
藤田 慎二(ふじた しんじ) 男性
喫茶店『Dream』のマスター
24歳、女性客に人気で常に店は女性客の方が大半
優しい性格で店自慢のオリジナルティーを振舞う
鈴谷とは幼馴染
犬飼 真琴(いぬかい まこと) 女性
喫茶店『Dream』の看板犬
22歳、低身長で童顔である
マスターである藤田の言う事しか聞かないお転婆犬
犬耳と犬尻尾が生えた人間に姿を変えられる珍しい犬種
たまに猫宮のお店の臨時店員をしている
配役表
猫宮 夏穂:
鈴谷 光輝:
楠 伶弥:
白銀 樹:
藤田 慎二:
犬飼 真琴:
猫宮M
「世の人々の疲れを癒す猫カフェ『Jewelry box』
甘えん坊、お転婆、やんちゃ……様々なタイプの猫達がお出迎えをいたします。
ですが、他の猫カフェと違う所が一つだけ……」
鈴谷
「いらっしゃいませ!あぁ、今日も来てくださったんですね。
お客様、当店の猫ちゃん達気に入ってくださいましたか?
……それはよかったです。ドリンクはどういたしますか?……いつもので、畏まりました。
ではお好きな猫ちゃんと遊んでいてください。すぐお持ちいたします」
猫宮
「(猫の鳴き声)にゃあ」
鈴谷
「っと、注文入ったから待っててくださいね、猫宮さん。足元擦り寄ると危ないですよ?」
猫宮
「にゃっ!」
鈴谷
「ちょっ!よじ登らないでください!歩きにくいですよ!」
猫宮
「にゃーん」
鈴谷
「……あれ?猫宮さんがスタッフルームから出てくるの珍しいですね。
それに俺に甘えてくるのも珍しい。楠さんに甘えないんですか?
(抱き上げ喉を撫でる)よしよーし」
猫宮
「(喉を撫でられ気持ちよさそうに)にゃうー」
-二階にあるスタッフルームから白銀が降りてくる-
白銀
「(欠伸)あー、伶弥さんなら今朝方連絡ありましたよ。
暑すぎて出る気ないから今日は休むって」
鈴谷
「はぁ!?あの人今日シフト入ってたでしょうが!
あ、白銀さんドリンクお願いできる?注文入ってるから!
猫宮さん、ちょっと下ろしますよ?楠さんに電話しないと……」
猫宮
「(嫌がるように)にゃあ!」
鈴谷
「あー、はいはい分かりました!って、白銀さんどこ行くの!注文!」
白銀
「えー、後数分でオンラインゲームのメンテ終わるんすよ。メンテが終わったら俺のやるべき事は一つ!」
鈴谷
「今すぐ厨房に行ってお客様のドリンクを作っ……」
白銀
「(鈴谷のセリフに被せ)チームメンバーと一緒にイベント目標の敵を狩りまくるだけ!
って事で、光輝さん。いつもどおり厨房もお願いします」
鈴谷
「はぁ!?」
猫宮
「にゃぁ」
白銀
「よしよし。夏穂、ゲームが落ち着いたら遊んでやるからな」
猫宮
「にゃ!」
白銀
「って訳で、後の事は任せます。材料は全部今朝方用意しておいたので大丈夫っすよ。
あぁ、後猫缶とおやつがそろそろ在庫なくなりそうなので、発注お願いします」
-それだけ言い残して二階のスタッフルームに戻る-
鈴谷
「……まじか。猫宮さん、先にお客様にドリンク持っていくから降りてくれませんか?」
猫宮
「(嫌がる)にゃ!」
鈴谷
「猫宮さん、お願いしますよ。(お客様に声を掛けられる)え、いいんですか?
申し訳ございません。すぐに用事を済ませましたらお作りいたします。
……あはは、猫宮さんは楠さんにしか甘えませんからね。
それに、こうしてホールに出てるだけでもレアなんですよ?
では、少々お時間いただきますね」
-猫宮を抱えたまま、スタッフルームに行く-
白銀
「あれ、どうしたんすか?」
鈴谷
「楠さんに電話するんだよ。さすがに出てきてもらわないと俺が動けない」
白銀
「(鈴谷にべったりの猫宮を見て)あー、まぁ、実質ホールに立ってるの光輝さんだけっすからね……って、今の攻撃避けられただろ!クソかよ!」
鈴谷
「白銀さんもたまには厨房出てきてよねぇ。
ほんとここの店の店員俺だけかよってたまに思うんだから」
-楠に電話をかける-
白銀
「そんなに不満があるなら辞めればいいじゃないっすか。
なんで愚痴零しながらもいるんすか?」
鈴谷
「……猫が好きだから。
それに、嫌いじゃないしね。ここの雰囲気も、忙しさも」
-楠が電話に出る-
鈴谷
「あ、楠さん?白銀さんから聞きましたよ。今日シフト入ってますよね?暑いのを理由に出勤しないのは認めませんよ?」
楠
「んー、だって外に出たら溶ける。暑すぎる。店に行くまでの道のりで俺スライムになって死んじゃう」
鈴谷
「人間はそう簡単に暑さでは死にません」
楠
「きっぱり言うよねぇ。熱中症なったらどうするの」
鈴谷
「水分摂ってればなりませんよ」
楠
「はぁ、俺がいなくても店回るよね。
まぁ、いつも俺がいても全部鈴谷さんがやってくるから仕事ないけどさ」
鈴谷
「今日は残念ながら、俺ですら店回せないんですよ」
楠
「は?なんで。あの鈴谷さんが回せないって何があったの。
強盗が来たとか、猫が全員ボイコットしたとか、白銀さんがゲームに八つ当たりとか……あぁ、それはいつもか……」
鈴谷
「前者が起きたらこんな悠長に電話なんてしていません。後者についてはノーコメントです」
楠
「えー?じゃあ何が起きて……」
猫宮
「(会話を遮って)にゃーん!」
楠
「……夏穂?」
猫宮
「(楠の声が聞こえたのか喜んで)にゃ、にゃあ!」
鈴谷
「ちょ、暴れないでくださいよ猫宮さん!って訳で、さっきからこんな調子で俺から離れないんですよ。」
楠
「えー、いいじゃん。いつも俺にばっかり甘えてるから、たまには鈴谷さん甘えられたいでしょ?」
鈴谷
「うっ。それは、まぁ、猫好きの身としては嬉しいですが……」
楠
「じゃあ問題ないよね。って訳で俺は休む」
鈴谷
「それはダメです!お客様の注文運べないんですよこれだと!ほら、猫宮さんからもなんか言ってください!」
猫宮
「にゃ、にゃ、にゃあ!」
楠
「……ふっ、そんな来てほしいの?夏穂」
猫宮
「にゃう……」
楠
「んー、仕方ないなぁ。すぐ行くから、いい子に待ってるんだぞ?」
猫宮
「にゃあ!」
楠
「よしよし。鈴谷さんのこと、思いっきり困らせていいから」
鈴谷
「ちょっとそこおかしいですよね!?」
楠
「気にしない気にしない。んじゃ、着替えたらすぐ行く。」
鈴谷
「はいはい、待ってますよ」
-電話を切る-
白銀
「大変っすね。伶弥さんの相手」
鈴谷
「もう慣れたよ。俺としてはこの惨状をどうにかしてほしいけどね」
白銀
「ぷっ、光輝さん凄い毛だらけ。夏穂が暴れたから?」
鈴谷
「そろそろ抜け毛の季節かねぇ。猫宮さんお風呂に入れるの大変だからなぁ」
白銀
「夏穂、伶弥さん来るまで光輝さんに甘えてていいよ。寧ろ困らせてしまえ」
鈴谷
「君たち揃いも揃って酷くない!?そんなに俺イジって楽しい!?」
白銀
「うん、楽しい」
鈴谷
「そこ真顔で即答しない!」
白銀
「まぁ、光輝さんが弄られるのはいつもの事っすから気にしてませんけど……特に伶弥さんに」
鈴谷
「ほんとあの人、人の事弄って遊ぶの楽しんでるよね。」
白銀
「あ、そうだ。三十分後に緊急メンテナンス入るらしいんで、その時になったら厨房立ちますよ。
光輝さんにばっか任せてられないですし、伶弥さん来るなら女性客殺到しそうっすから」
鈴谷
「ほんと?助かるよ。明日は槍か雹(ひょう)でも降るんじゃないかなぁ」
白銀
「そんな事言うと立ちませんよ」
鈴谷
「冗談だよ!でもほんと、厨房に立ってくれるのは助かる。
夏日がここ続いてるし、涼みにくるお客さんも増えたからね。
さすがに俺一人じゃ回せるものも回せない」
白銀
「って事だから、夏穂。伶弥さんくるまでお客さんの事癒すんだぞ?」
猫宮
「にゃあ!」
鈴谷
「じゃあ、やりますか。お客さん待たせてるしね。
白銀さん、ほんとに三十分にはちゃんと降りてきて厨房に立ってくださいね!」
白銀
「はーい」
-ホールに戻り、猫宮を降ろし厨房に立つ鈴谷-
-注文を受けていたドリンクを作り待たせているお客の元に持っていく-
鈴谷
「お待たせしました。ご注文のものになります。
いえ、本当にお待たせしてしまって申し訳ございません。
え、猫宮さんですか?あぁ、それなら先ほど厨房前に降ろして……」
-猫宮が駆け寄ってきて鈴谷の脚をよじ登る-
鈴谷
「ちょ、だから猫宮さん接客!さっき頼まれたでしょ!
……え、大丈夫ですって……ほんとなんてお礼を言ったらいいか。
もう少ししたら、猫宮さんもホールに立つと思いますので……はい、ありがとうございます」
-稼ぎ時の昼過ぎ-
-来客を知らせる扉の鈴が鳴る-
-客ではなく楠が入ってくる-
鈴谷
「いらっしゃいま、せ……って……」
楠
「はぁ、暑い……」
鈴谷
「ちょ、楠さんなんで裏口から入ってこないんですか!」
楠
「え?あー、それは……」
猫宮
「(鈴谷の腕の中から飛び降りる)にゃあ!」
鈴谷
「(猫宮が降りた時に後ろ足の爪で引っかかれる)いてっ!」
猫宮
「にゃん!(着地し人間の姿に変わり楠に飛びつく)伶弥!」
楠
「(抱き止め、頭を撫でる)ん、よしよし」
猫宮
「いい子にしてた!光輝困らせた!」
楠
「偉い偉い。あー、暑い。死ぬ」
鈴谷
「ちょっと、ここホールなんですからその甘やかしはスタッフルームでお願いします。
てか、もう一度聞きますけど、なんで従業員用の裏口があるのにこっちから入ってきたんですか!」
楠
「あー、だからそれは……」
-楠が身体を退かすと、そこにはおすわりをして尻尾を振ってる柴犬がいる-
犬飼
「(犬の鳴き声)わん!」
鈴谷
「……は?」
楠
「店の入口でおすわりして尻尾振ってたから……拾った」
鈴谷
「拾った!?ここ猫カフェですよ!?」
犬飼
「わんわん!」
-鈴谷に駆け寄る-
-人間の姿に変わりタックルのような勢いで飛びつく-
犬飼
「こうくーん!!」
鈴谷
「(受け止めるが衝撃が腰に走る)ぐはっ!」
犬飼
「こうくん、こうくん!ねぇ聞いてよ!ご主人ったら酷いんだよ!?私のお店女性客が大半でしょ?
それなのにご主人が新作のデザートなんて考案しちゃったから更に女性のお客さんを魅了しちゃって、ここ最近お店が忙しくてご主人が全然構ってくれないの!
ご主人に色目使う人も増えてるし、まぁご主人のあの笑顔は確かに好まれるけど……
でもでも!私のご主人なのにお店が香水の匂いやらで気持ち悪くて私もう耐えられない!」
鈴谷
「落ちついてください犬飼さん!」
犬飼
「だからここに逃げてきた!暇だからこっちのお店手伝う!」
鈴谷
「いや、ここ猫カフェなんですけど……」
犬飼
「今は人間!」
楠
「耳ついてるけど。まぁ、それは夏穂も同じか」
猫宮
「真琴ちゃんとお揃いー!」
犬飼
「夏穂ちゃんと同じで私達珍しい種類だもんねー!」
猫宮M
「この猫カフェがちょっと変わっているところ。
それは、猫カフェ『Jewelry box』の看板猫でありオーナーである私、猫宮夏穂と……ご近所に建つ喫茶店『Dream』の看板犬である犬飼真琴は……
人間に姿を変えることが出来る珍しい種類の猫、犬である事」
-白銀が、二階のスタッフルームから降りてくる-
白銀
「(溜息)ちょっと、店の中でなにナンパしてんすか」
鈴谷
「してないからね!?いきなり飛びついてきたんだから!」
楠
「あ、そうだ。白銀さん、これ。厨房の冷蔵庫に入れておいて」
白銀
「なんすか?これ」
楠
「ケーキ。仕事終わりにみんなで食べようかと思って」
猫宮
「伶弥、優しい!ね、ね、早く上行こう!構って構って!」
鈴谷
「猫宮さん?ホール、少しは立ちましょうね?」
猫宮
「むぅ、やだ!伶弥と上で寝る!」
鈴谷
「かーほー?何度も言わせるな?」
猫宮
「うにゃ、分かったよぉ……」
鈴谷
「はい、いい子ですね」
白銀
「光輝さんがホールで怒るとか珍しい」
鈴谷
「楠さんも立ってくれますね?」
楠
「まぁ、少しなら立つよ」
鈴谷
「さて、珍しく店員フルメンバー揃ったから頑張りますか!」
犬飼
「私も手伝う!」
鈴谷
「ありがとう、犬飼さん」
楠
「夏穂、接客中は離れてるんだぞ」
猫宮
「えー、はーい。分かったぁ」
-制服に着替え、それぞれ持ち場につく-
楠
「いらっしゃいませ。あぁ、また来てくださったんですね。
……ええ、覚えてますよ?先月も来てくださいましたよね?
忘れる訳ないじゃないですか。こんな素敵な女性のお客様を……
猫達もきっと、お客様にお会いしたかったと思いますよ。
ご注文、いかがなさいますか?……アイスティーで。
畏まりました。少々お待ちください」
犬飼
「ほえぇ、相変わらず女性の扱いうまいよねぇ。くすくすって」
猫宮
「売上倍になるのは嬉しいけど、なんかムカつく……」
楠
「白銀さん。アイスティー、一つ。それと犬飼さん、お店の前でお客様が入ろうか悩んでるみたいだから様子見てきてくれる?」
犬飼
「はーい!」
-お店の外のお子様連れに声をかける-
犬飼
「いらっしゃいませ。当店の猫ちゃん達、気になりますか?
今日は日差しが強いですから暑いですよね。涼むついでに癒されていきませんか?
……お子様が猫ちゃんを乱暴に扱わないか心配、ですか……でしたら私がついてますよ?
それならお母様もお父様もご安心ですか?」
-犬飼、外の客を連れて店に入る-
犬飼
「お飲み物はいかがなさいますか?……アイスティーを二つですね。
(子供に目線を合わせ)僕たちは何か飲みたいのあるかな?オレンジジュースと、カルピスね?
では、お好きな猫ちゃんと遊んでください。すぐにお飲み物お持ち致します。」
-子供達から目を離さず、厨房の白銀に注文を言う-
犬飼
「アイスティーを二つと、オレンジジュースとカルピスを一つずつ。
後お子さんへのサービスで何かつけられないかな?」
白銀
「軽いクッキーとかなら用意出来るけど……」
鈴谷
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。」
-レジを終わらせお客様をお見送りした鈴谷がくる-
鈴谷
「犬飼さんこれ。当店の猫達をモデルにしたシール。お子さんに渡してあげて」
犬飼
「こうくん、準備いい!じゃあ渡してくる!」
-犬飼、お客様の元に戻っていく-
白銀
「伶弥さん、アイスティー」
楠
「ん、ありがとう」
-先程対応した女性客の元に注文の飲み物を持っていく-
楠
「お待たせいたしました。こちらアイスティーになります。
では、ごゆっくり……ぇ、連絡先ですか?申し訳ありません。
当店ではそういう物は受け取れないんですよ。猫への差し入れでしたら大歓迎ですよ。
それに、またいらして下されば僕に会えますので……それではいけませんか?
……ありがとうございます。今は猫達に癒されてください。
次回お会いできる日を楽しみにしております」
-それを見てる猫宮は厨房の前で頬を膨らませ拗ねている-
猫宮
「むぅ」
白銀
「なに拗ねてるの」
猫宮
「だって伶弥がぁ……」
白銀
「あぁ、伶弥さん女性客に人気だからなぁ」
猫宮
「私の伶弥なのにぃ……噂聞きつけて絶対来るじゃん女性客ばっか。
今度からホールに立つの本当に禁止にしようかな」
白銀
「光輝さんに怒られるからやめな。
これ、注文のアイスティー二つと、オレンジジュースとカルピス。持っていける?」
猫宮
「平気。じゃあお仕事してきまーす。
お待たせいたしました。ご注文のアイスティー二つ、オレンジジュースとカルピスになります。
当店ご利用は初めてですよね?……ぁ、そうなんですか?猫カフェ自体が初めてですか。
では、今日は存分に猫カフェを満喫していってください。
お子様も喜んでおりますし、何かありましたらお気軽にお呼びください。」
-接客途中の中、店に電話がかかってくる-
鈴谷
「はい、こちら猫カフェ『Jewelye box』です。ご予約で……慎二?」
犬飼
「え!ご主人?」
鈴谷
「あぁ、犬飼さんなら確かにこっち来てるけど……」
犬飼
「ご主人!?ご主人!」
-鈴谷の後ろからタックルして飛びつく-
鈴谷
「ぐはっ!ゲホゲホッ、犬飼さん!そろそろそのタックルやめません!?俺の腰死ぬよ!?」
犬飼
「こうくん頑丈だから大丈夫折れない」
藤田
「相変わらずだな、光輝。真琴が迷惑かけて悪いな」
鈴谷
「いや、結構助かってるよ。こうして臨時とはいえ手伝いにきてくれてるからね。
まぁ、このタックルは毎度心折れそうになるけど……」
藤田
「真琴、あまり光輝を困らせるなよ?」
犬飼
「はーい!困らせない!」
藤田
「店が終わったら迎えに行く。それまでいい子にしてるんだぞ?」
犬飼
「うん!わかった!」
藤田
「いい子だ。って訳だ光輝。悪いけど、店が終わるまで頼んでいいか?」
鈴谷
「あぁ、構わないよ」
藤田
「ありがとう。(女性客に声を掛けられる)はい、ストレートティーですね?
アイスかホットどちらに?ホットで……かしこまりました。一緒にシフォンケーキなんていかがですか?当店おすすめですよ。
……わかりました。では後ほどお持ち致しますね」
鈴谷
「そっちも大変そうだな」
藤田
「あぁ、悪い。じゃあ後でな、光輝」
鈴谷
「はいはい。待ってますよ」
犬飼
「んー、はーい……」
藤田
「ん?なんで拗ねてるんだ?」
犬飼
「いいからご主人はお店に集中して!仮にもマスターなんだから!」
藤田
「仮りでもなんでもなくマスターだろ。まぁ、いい。じゃあ、後でな」
-電話が切れる-
鈴谷
「……犬飼さん?拗ねるのはいいですけど、僕に抱きついたままはさすがにやめていただけませんか?
ここ一応ホールですし、店回せなくなるんで……」
犬飼
「むぅ」
鈴谷
「迎えに来てくれるまで頑張りましょう?慎二も迎えに来てくれるって言ってる訳ですし……」
犬飼
「移り香絶対残ってるもん」
鈴谷
「んー、じゃあ俺からも店終わりにご褒美あげますよ。それじゃダメですか?」
犬飼
「ご褒美!?」
鈴谷
「はい。猫宮さんには内緒ですよ?」
犬飼
「うん!内緒にする!」
鈴谷
「はい、いい子ですね」
猫宮
「ちょっと光輝!混んできたから早く手伝って!真琴ちゃんも光輝に抱きつくのもう禁止ー!」
犬飼
「うー……」
猫宮
「にゃー……」
-地味な睨み合い-
鈴谷
「はいそこ、店内で睨み合わない」
-二人聞いてない-
鈴谷
「かーほー?犬飼さん?……やめろ?」
犬飼
「……分かったぁ」
猫宮
「はーい……」
白銀
「光輝さんが日に二回も本性表すとか珍しい」
楠
「(欠伸)あー、眠い」
-楠、猫宮を持ち上げる-
猫宮
「ふにゃ!?」
楠
「夏穂、寝よ?」
鈴谷
「ちょっ、楠さん!?」
白銀
「(小声)毎回恒例だなぁ、この流れ」
犬飼
「(小声)そうなの?たっちゃん」
白銀
「(小声)うん。最後まで見ててみなよ。最終的に光輝さんが折れるから」
犬飼
「(小声)へぇ、こうくんもくすくすには勝てないんだぁ」
鈴谷
「楠さん、今日と言う今日は閉店時間まで立ってもらいますよ?」
楠
「え、やだ」
犬飼
「(小声)わぁ、くすくす即答」
白銀
「(小声)間に挟まれてる夏穂なんて耳垂れてるし……」
鈴谷
「言わせてもらいますけど、毎度毎度開店中に猫宮さん連れてスタッフルーム戻るのやめてくれません?
その度に俺一人で回してるんですよ?」
楠
「うん、知ってる」
鈴谷
「……なら最後までいてください。混んできてるの楠さんだって分かるでしょう?」
楠
「そうだねぇ。でも鈴谷さんなら出来るって信じてるから大丈夫だよね。うん」
鈴谷
「あんた俺をなんだと思ってんだ!」
犬飼
「(小声)わぁ、こうくん口調崩れたぁ」
白銀
「(小声)溜まってんなぁ、光輝さん」
楠
「鈴谷さんなら出来ると思ってるから任せられる。
本当に嫌なら俺を辞めさせれて新しい人雇えばいいのにそれをしない。
一番にお店の事、考えてるからじゃないの?」
鈴谷
「うっ、それは……店員を辞めさせる権限は、俺にはありませんから」
楠
「鈴谷さんだから安心して任せられる。それじゃダメ?」
鈴谷
「……はぁ、分かりました。分かりましたよ。その代わり、閉店前くらいは降りてきてくださいね」
楠
「うん、降りてくるよ」
白銀
「(小声)ほらね?伶弥さんの圧勝」
犬飼
「(小声)同い年なのにここまで違うんだ」
猫宮
「だけど伶弥。お店、光輝にずっと任せっ放しだし……」
鈴谷
「猫宮さん……」
白銀
「(小声)へぇ、夏穂が珍しい」
犬飼
「(小声)やっぱ夏穂ちゃん、ここの店長さんだねぇ」
楠
「俺が寝たいって言ってるのに、夏穂は聞いてくれないんだ」
猫宮
「ふぇ?」
楠
「そっかぁ。久しぶりにホールに立って貢献した俺には何もないんだ。俺だってここの店員なのに……」
猫宮
「にゃ!寝る!伶弥と一緒に寝る!」
楠
「ほんと?」
猫宮
「うん!」
楠
「んー、よしよし。じゃあ一緒に寝よ」
-そのまま二人はスタッフルームへ入っていく-
鈴谷
「……おい!」
犬飼
「あれぇ、夏穂ちゃーん」
白銀
「まぁ、分かりきってた」
鈴谷
「あれ、俺うまいこと言いくるめられてない?」
白銀
「(小声)今頃気づいたんすか……」
犬飼
「(小声)こうくんって、意外と鈍感?」
鈴谷
「俺、まじでそろそろここの店辞めようかな」
白銀
「光輝さん、それ今まで何回言ってるんすか。言うだけ無駄ですよ」
鈴谷
「ははっ、うん。知ってる。言うだけタダだよ。
(溜息)さて、気持ち切り替えてお店回すよ!」
-混みだした店内を鈴谷、白銀、犬飼で回していく-
-客足が遠のき、閉店間近になるとスタッフルームから約束通り楠と猫宮が降りてくる-
鈴谷
「ありがとうございました!またのご来店お待ちしております」
楠
「(欠伸)眠い」
白銀
「ぁ、おはようございます。伶弥さん」
犬飼
「こうくーん!くすくす起きたよぉ!」
鈴谷
「おはようございます、楠さん。猫宮さんも、おはようございます」
猫宮
「んー、おはよう光輝ぃ」
犬飼
「約束通り降りてきたんですね」
楠
「さすがにねぇ。夏穂に起こされた」
鈴谷
「猫宮さんが?」
猫宮
「んー、猫パンチで起こしたぁ」
楠
「痛かった」
三人
「(呆れ)あははは」
鈴谷
「とりあえず、最後のお客様は先程お帰りになられたので、後は閉店準備ですね」
猫宮
「ふにゃあ、クローズに変えてくるねぇ」
-外の立てかけてる札をオープンからクローズに変える-
白銀
「光輝さん、伶弥さん。これ猫達のご飯」
鈴谷
「ん、ありがとう」
楠
「俺こっちにあげるから、鈴谷さん向こうに固まってる子達にあげて」
鈴谷
「はいはい、分かりました。おーいお前達、今日もお疲れ様。はい、ご飯だぞー?」
-一列に餌箱を並べれば、お行儀良く猫達は一列になり食事をする-
-その光景を微笑ましく見ていると、犬飼が近づいてきて鈴谷にの袖を引っ張る-
犬飼
「こうくん」
鈴谷
「どうしました?犬飼さん」
犬飼
「ご褒美は?」
鈴谷
「ああ、そうでしたね。ちょっと待っててください」
-レジの下の棚からある物を取り出す-
鈴谷
「はい、どうぞ。前々から渡そうと思っていたんですが渡すタイミングが中々……
ほねっこ、犬飼さん好きですよね?」
犬飼
「わぁ!ありがとう、こうくん!」
鈴谷
「猫宮さんや慎二には内緒ですよ?」
犬飼
「うん、分かった!」
-鈴谷から受け取ったのをポケットに入れる-
-札を掛け替えた猫宮が藤田と共に戻ってくる-
猫宮
「真琴ちゃん、お迎えきたよ!」
藤田
「真琴、いい子にしてたか?」
犬飼
「ご主人!」
-駆け寄り、飛びつく-
-犬飼を藤田が優しく受け止める-
藤田
「光輝、真琴が迷惑をかけたな」
鈴谷
「いや、逆に凄い助かったよ」
白銀
「これから俺達休憩なんですけど、よかったら藤田さんもどうっすか?」
藤田
「いいのか?光輝」
鈴谷
「構わないよ。犬飼さんもまだここに居たいみたいだしね?」
-犬飼を見てみれば、犬耳はピンと立ち尻尾は嬉しそうにぶんぶんと降っている-
犬飼
「ご主人、もうちょっとここにいよう?ねぇ、いいでしょ?ダメ?」
藤田
「はぁ、仕方ない。真琴もこう言っているし、少しだけお邪魔するかな」
白銀
「先にスタッフルームに戻ってていいっすよ。
明日の仕込み軽く済ませて、伶弥さんから受け取ったケーキと紅茶でも入れて持って行くんで……」
楠
「んじゃ、お言葉に甘えて行きますか」
猫宮
「真琴ちゃん、行こ行こ!」
犬飼
「うん、行こ行こ!ご主人も早く!」
-楠の後を追うように、猫宮と犬飼は手を繋ぎ二階へと上がっていく-
藤田
「そう焦らなくてもちゃんと行くぞ。まったく、元気すぎて手が焼ける」
鈴谷
「猫宮さんと同じだな。手が焼ける所とか、特定の人にしか甘えない所とか、似た者同士だ。」
藤田
「でも、ほんと助かってる。お店が忙しくなると構ってあげられなくなるからな。
目を離した隙にこっちで臨時店員をしていた時は流石に驚いたが……」
鈴谷
「はは、それからだよな。犬飼さんがよく来るようになったの。
今度ちゃんと犬飼さんの為に時間取ってやれよ?」
藤田
「そうするよ。可愛い看板犬だからな。光輝もそうしろ?」
鈴谷
「ははっ、時間取らなくても自由奔放な猫宮さんは毎日が休日のようなものだよ。」
藤田
「そうか。苦労人だな、光輝は……」
-スタッフルームに入る-
-楽しく談笑していると仕込みを済ませた白銀がケーキと紅茶を持って上がってくる-
白銀
「伶弥さん、ケーキ5個しかなかったんすけど……」
楠
「あ、そうか。犬飼さんが来るのは予想してたんだけど、藤田さんの分忘れてた」
藤田
「いや、俺は急遽お邪魔した感じだから楠さん達で分けていいよ。俺は紅茶だけ貰えれば……」
白銀
「流石にそれは……今から軽く作りましょうか?」
楠
「……あぁ、分かった。こうすればいいよ」
-楠は箱からケーキを取り出し小皿に移す-
-鈴谷以外の前にケーキを置く-
楠
「うん、これでよし」
鈴谷
「いや、良くないですよ!?俺のは!?」
藤田
「悪いな。光輝」
楠
「はい、意義はないねー?」
犬飼
「わんわんおー!」
猫宮
「にゃんにゃんおー!」
鈴谷
「そこ二人!」
白銀
「まぁ、安定っすよね。俺もそこは意義なしで」
鈴谷
「ちょっと白銀さん!?慎二も何か言ってくれよ!」
藤田
「ははっ、愛されてるな光輝!」
鈴谷
「慎二!」
猫宮
「みゃう~、このフルーツタルト美味しい!」
犬飼
「甘くてほっぺた落ちちゃいそう!」
鈴谷
「てか、犬と猫にタルトとか大丈夫なんですか!?」
楠
「大丈夫じゃない?ネギ類与えなければ」
鈴谷
「いや、それは知ってますけどそういう問題じゃなくて!」
白銀
「今は人間って部類になるから、大丈夫じゃないですかね?」
犬飼
「今は犬と猫じゃなくて人間だから問題ないのだ!」
猫宮
「にゃいのだ!」
藤田
「帰ったらちゃんと歯磨きしような、真琴」
犬飼
「はーい!」
白銀
「夏穂はシャワー浴びような」
猫宮
「お水やだ!」
白銀
「……ん?な、ん、だっ、て?」
猫宮
「うっ……は、いるぅ……」
白銀
「はい、よく言えました。暴れたら縛り上げてでもするからな?
メンテナンス時間過ぎたらイベントランキング落ちるから。」
猫宮
「その笑顔が怖いよ、樹!」
楠
「その後遊んでやるから、白銀さんの言う事聞きな」
猫宮
「うぅ、はーい……」
犬飼
「夏穂ちゃん、頑張って!お水慣れたら平気になるから!」
猫宮
「が、頑張る!」
鈴谷
「あー、もう!なんでここにはこんな自由な人しかいないんだよぉおおおおおおお!!」
猫宮M
「少し変わった自由気ままな看板猫がいる猫カフェ『Jewelry box』
従順だけど自由な看板犬がいる喫茶店『Dream』
そんな賑やかな猫カフェでの日常は、こうして過ぎ去っていった。
貴方も是非、一時(ひととき)の癒しを求めに当店へ来てみてはいかがですか?
当店の店員、猫一同がお迎えいたします。」
幕