登場人物
ジェルヴェ 男性
誰にでも優しくどんな種族に対しても分け隔てなく接する
親しみやすい人柄であり責任感が強い
役割:店長
種族:ヒューマン
リュカ 男性
ムードメーカー
誰とでも明るく接する
重く暗い雰囲気が苦手
役割:バイトリーダー
種族:ハーフエルフ
レティシア 女性
人との関わりを作ろうとせず、感情をあまり表に出さず淡々としている
近寄り難い雰囲気をしている
役割:ウェイトレス(看板娘)
種族:エルフ
母親 女性
エクシヴに依頼してきた女性
以前ここで子供が依頼したと聞き訪ねてくる
カイ 不明
一話で出てきた依頼人
配役表
ジェルヴェ:
リュカ:
レティシア:
母親:
カイ:
-入店を知らせるドア鈴が鳴る-
リュカ
「いらっしゃいませー!ようこそエクシヴへ!空いている席へどうぞー!」
ジェルヴェ
「リュカ、この料理を8番テーブルに頼む」
リュカ
「はーい!分っかりましたー!」
ジェルヴェ
「レティシア、4番テーブルにこの料理を頼む。それと6番テーブルの注文取ってきてくれ」
レティシア
「わかったわ」
-忙しく業務をこなす店員達-
-再び入店を知らせるドア鈴が鳴る-
リュカ
「いらっしゃいませー!ようこそエクシヴへ!空いている席へどうぞー!」
母親
「あ、あの……」
リュカ
「はい?どうしました?」
母親
「空いてる席って……」
リュカ
「あ、テーブル席いっぱいですね。カウンターでもよろしいですか?」
母親
「あ、はい。大丈夫です」
リュカ
「かしこまりました!レティシア、案内頼むな」
レティシア
「……こちらへどうぞ」
母親
「ありがとう、ございます」
-カウンター席に案内する-
レティシア
「ご注文はお決まりですか?」
母親
「えっと……"リガーツのテールスープ、メーヌ海風"をお願いします」
レティシア
「……申し訳ございません。お客様、そちらのメニューは当店には存在いたしません」
母親
「"ハイダウェイさんに、オススメされて来た"んですが……」
レティシア
「……かしこまりました。店長をお呼びいたしますので少々お待ちください」
-厨房の入り口に立ってるジェルヴェの元に行く-
レティシア
「店長」
ジェルヴェ
「ん?どうした?」
レティシア
「リガーツのテールスープ、メーヌ海風。ハイダウェイにオススメされてきたお客様がいるわ」
ジェルヴェ
「そうか。助かった。後は俺が対応しよう。レティシアはそのまま他のお客様の対応を頼む」
レティシア
「わかったわ」
ジェルヴェ
「おっと、そうだ。リュカと協力してな」
レティシア
「……それは、保証しかねる」
ジェルヴェ
「……(溜息)まだまだ仲良くなる道は遠いねぇ。泣けるぜ。
セヴラン、リガーツのテールスープのご注文だ。後は任せたぜ」
-厨房にいるセヴランに声をかけ、カウンターに向かう-
ジェルヴェ
「ご婦人、お待たせしました」
母親
「いえ、あの……」
ジェルヴェ
「テールスープは少々時間がかかる料理でしてね。こちらでもう暫くお待ちいただけますかな?」
母親
「は、はい」
ジェルヴェ
「失礼。少々段差がございますのでお手を」
母親
「ありがとう、ございます」
-別室へ繋がる扉を開けて地下に降りていく-
ジェルヴェ
「こちらにお座りください」
母親
「は、はい」
ジェルヴェ
「さて、もう暫くしたら他の店員もくる。暫くこれでも飲んで待っててくれ」
母親
「あの、お金が……」
ジェルヴェ
「金なんて取らねぇよ。サービスだ。っと、上の料理屋は取るけどな」
母親
「は、はい」
ジェルヴェ
「上じゃ堅苦しい言葉ですまなかった。こっちが素の俺なんだ。悪いな」
母親
「大丈夫です」
リュカ
「店長、お待たせしました」
レティシア
「交代してきました」
ジェルヴェ
「おう、お疲れ。さて、あんたの依頼を聞かせてもらおうか」
母親
「……子供を……私の子供を探してほしいんです」
リュカ
「子供?」
母親
「先日、こちらで依頼をしたと聞きました。その時に、ご依頼方法を子供から聞いて……」
ジェルヴェ
「この前のあの子か……」
レティシア
「それで?先日依頼してきた子供を探してほしいって、何があったのかしら?」
母親
「オシュリス草原で、ピクニックをしていたんです。ですが、私が少し目を離した隙に見当たらなくなってしまって」
リュカ
「迷子ってことか?」
母親
「わかりません。ですが、子供はハーフです。もしかしたら、誘拐されたんじゃないかって……」
リュカ
「ッ!?」
レティシア
「……なるほど」
ジェルヴェ
「ギルドには行ったのか?」
母親
「行きました」
ジェルヴェ
「なんて言ってた?ま、ここにあんたが来てる時点で答えは目に見えてるがな」
母親
「……大きな依頼が入って人手不足だから受けられないと。目を離した私が悪いんじゃないかと、怒られました」
ジェルヴェ
「やっぱりな」
リュカ
「あいつら、子供の命をなんだと思ってんだ」
レティシア
「……お子さんが行きそうな場所に心当たりは?」
母親
「ないんです!あの子が行きそうな場所も、夫と一緒に探したんです!でも、見つからなくてっ……!」
ジェルヴェ
「オシュリス草原は比較的安全な地域だ。危険なモンスターも少ない。
だがすぐ北にシャルーズ森林があるな。迷い込むとしたら可能性が高いのはそこだ」
母親
「そんなっ!シャルーズ森林なんて……」
レティシア
「誘拐の可能性も否定できないわ」
ジェルヴェ
「そうだな。レティシアは誘拐の可能性であたってくれるか?」
レティシア
「わかったわ」
ジェルヴェ
「メーヌ海は可能性が低い。ヴィルトワ砂漠周辺を頼む」
リュカ
「僕はシャルーズ森林に行きます」
ジェルヴェ
「俺もリュカと一緒に行こう。レティシア、一人で行けるか?」
レティシア
「大丈夫よ」
母親
「依頼、受けてくれるんですか?」
ジェルヴェ
「当たり前だろ。それに、先日依頼してくれた子なんだ。少なからず俺達と接点はある。
あの子がいなくなったって話聞いて、依頼断ることなんてしねぇよ」
母親
「でも、お金……」
ジェルヴェ
「いらねぇよ」
レティシア
「ここにあなたを招いた時点で、店長は依頼を断らない。だから安心して」
リュカ
「どうしても払いたいなら、お子さんが見つかった時に怒らないで抱きしめてあげてください」
ジェルヴェ
「そうだな。二人が抱き合う姿が見れたら俺達はそれでいい」
母親
「……ッ!ありがとうございます!」
ジェルヴェ
「おし、行くぜ。俺らが探しに行ってる間は他の店員をつかせるから、何かあったらその店員に言ってくれ」
母親
「分かりました。本当に、本当にありがとうございます!」
ジェルヴェ
「いいってことよ」
-店を出る3人-
リュカ
「レティシア、本当に一人で大丈夫か?」
レティシア
「自分の心配をしたらどうかしら?」
リュカ
「はは、僕は大丈夫だよ」
レティシア
「そう」
リュカ
「……手伝ってくれてありがとう」
レティシア
「勘違いしないで。あなたの為じゃない。混ざりものなんて助けたくもないわ」
リュカ
「そんな言い方ないだろ!」
レティシア
「あの母親の為に、見つけるのよ。ハーフだからって、生まれてきた子供に罪はないわ。
あなたも、エルフの血を引いてるなら責任を持ちなさい。
エルフの血を、変な正義感で汚さないでちょうだい」
-言い放って店を離れる-
ジェルヴェ
「おーおー、相変わらずだな」
リュカ
「僕、なんでレティシアにあんな嫌われてるんでしょうか」
ジェルヴェ
「まぁ、あいつは純粋なエルフだからなぁ。種族に対する想いが強いんだろうよ」
リュカ
「……ハーフの、何がいけないんでしょうね」
ジェルヴェ
「さぁな。種族間のいさかいなんざ分かんねぇよ。エルフなんてもんは数千年生きてんだ。
こびりついた考えはそう簡単に無くならないさ」
リュカ
「そうですね」
ジェルヴェ
「おし、シャルーズ森林に向かうぞ。日が傾いてきた。早く見つけてやんねぇと本格的にまずくなる」
リュカ
「分かりました」
-シャルーズ森林入口-
ジェルヴェ
「おいおい、こりゃマジでまずいぞ」
リュカ
「シャルーズ森林が……」
ジェルヴェ
「シャルーズ森林は突然濃霧に包まれる時がある。もしこの濃霧の中に依頼人の子供が迷い込んでたとしたら、急がねぇとな」
リュカ
「濃霧の時はギルド職員が森の入り口にいるはずですよね」
ジェルヴェ
「ああ、念の為にな。ちょっくらあそこにいる職員にでも聞いてくるか。リュカは待っててくれ」
リュカ
「わかりました」
-ジェルヴェが森の入り口に待機しているギルド職員に話を聞きに行く-
リュカ
「……シャルーズ森林か、昔のことを思い出しそうだ」
ジェルヴェ
「おーい、リュカ」
リュカ
「は、はい!どうでしたか?」
ジェルヴェ
「いや、子供は見てねぇってさ。恐らくここに待機する前に森に入ったんだろうよ」
リュカ
「尚更早く見つけないと!」
ジェルヴェ
「待て待て。普段なら入るだけなら構わねぇが、今は右も左も分からない濃霧に包まれてる。そんな中に入ってみろ。いくら熟練のハンターでも厳しいぞ?」
リュカ
「それでも、あの子が迷い込んでるかもしれないんですよ!?僕達が今探しに行かなくてどうするんですか!」
ジェルヴェ
「……(溜息)お前さんならそう言うと思ったぜ。
なんだ?アニエスの時を思い出したか?」
リュカ
「そんなことは……」
ジェルヴェ
「……ま、ここで引き返すなんざ俺達らしくねぇな?」
リュカ
「店長……」
ジェルヴェ
「いいか?くれぐれも単独行動はするな」
リュカ
「はい!」
ジェルヴェ
「よし、行くぜ」
-ギルド職員の目を盗み、森の中に入る-
リュカ
「思ってた通り、全然先が見えませんね」
ジェルヴェ
「どこから入ってきたのかも分からなくなるな」
リュカ
「店長、ちょっと僕の後ろにいてください」
ジェルヴェ
「お?おう」
リュカ
「……風の精霊よ。我に力を貸したまえ。我らの道を遮る霧を薙ぎ払え!ウィンド!」
-突然風が吹き抜ける-
ジェルヴェ
「お、精霊術か」
リュカ
「これで、少しは視界が……え!?」
-一瞬晴れた視界だったが、すぐに霧で視界が埋まる-
ジェルヴェ
「こりゃ、骨が折れるぜ」
リュカ
「僕の力じゃ森全体の霧を晴らすのは難しいですね。
レティシアなら、出来るんだろうな……」
ジェルヴェ
「……リュカ」
レティシア
「私でも無理よ」
-ヴィルトワ砂漠に向かったはずのレティシアが霧を掻き分け姿を現す-
ジェルヴェ
「レティシア、ヴィルトワ砂漠の方はいいのか?」
レティシア
「精霊達に聞いたわ。ヴィルトワ砂漠に迷い込んだハーフの子供も、怪しい連中も見ていないそうよ。
それに、もしいたとしてもあそこはハンターなしじゃ生きれないわ。
そもそもオシュリス草原からヴィルトワ砂漠なんて子供の足じゃたどり着くのに時間がかかるし、あそこに一人では近寄ってはいけないと母親に言われてるはず。
川を挟んだ場所にあるから、どんなに迷子になったとしても川向こうには行かないはずよ」
ジェルヴェ
「……となると、残る可能性は……」
リュカ
「ここ、シャルーズ森林のみってことか」
レティシア
「オシュリス草原で見失ったのなら、居る可能性があるのはここしかないわね。
子供の足でも十分行ける距離よ」
ジェルヴェ
「んで?レティシア。お前さんでも霧を晴らすのは無理ってぇ話はどういう意味だ?」
レティシア
「一度、私もやったことがあるのよ」
リュカ
「え!?」
レティシア
「遠い昔にね。けれどシャルーズ森林は広大。全ての霧を晴らそうとしたら尋常じゃない魔力を消費するわ。
それに、私でも晴らせる時間はほんの数秒。すぐに元通り。これ、普通の霧じゃないわよ」
ジェルヴェ
「昔から突然霧に包まれるのは原因不明とされてきたが、何かありそうだな」
リュカ
「そうですね。気になりますが、先にあの子を見つけないと危険です」
ジェルヴェ
「そうだな。オシュリス草原と違ってここには凶暴なモンスターがいる。周りの気配に気を配りながら進もう」
リュカ
「はい」
ジェルヴェ
「なるべく纏まって動くぞ。くれぐれも単独行動はするな。いいな?」
レティシア
「わかったわ」
-濃霧の中、なるべく纏まって行動する-
ジェルヴェ
「はぁああ!」
リュカ
「店長!」
ジェルヴェ
「ふぅ、こりゃ骨が折れるぜ」
レティシア
「ここの濃霧は初めてではないけれど、昔と比べたらだいぶ凶暴なモンスターが多くなったわね」
リュカ
「道を切り開きながら行くのも限度が……」
レティシア
「子供の足でも、これ以上奥にはいかないと思うわ」
ジェルヴェ
「そう思いたいがなぁ。この霧で右も左も分からねぇ状態じゃ、奥に行っても不思議じゃねぇ」
レティシア
「それもそうね」
リュカ
「レティシア、精霊達はなんて?」
レティシア
「……なにも」
リュカ
「そっか……」
ジェルヴェ
「っと、霧が更に濃くなりやがった」
リュカ
「レティシア、僕の傍を離れないでよ」
レティシア
「……」
ジェルヴェ
「どうしたもんかねぇ。何かあたりを付けられたらいいんだが」
レティシア
「一か八か、霧を晴らしましょうか?一瞬の隙を付けば探せるでしょう?」
ジェルヴェ
「いや、それは……レティシアの体調が心配だぞ」
リュカ
「それに、僕ですら一瞬だったのにレティシアの力で晴らしても何秒持つか」
レティシア
「その数秒の間に、あなたなら見つけられるでしょう?」
リュカ
「え……」
ジェルヴェ
「……ふっ、どうする?リュカ」
リュカ
「……レティシア」
レティシア
「なによ。早く決めなさい。やるの?やらないの?」
リュカ
「僕は……」
レティシア
「エルフを侮らないで。ハーフのあなたより魔力量は多いから、数秒霧を晴らしても魔力枯渇になる前に術を切れるわ。今私があなたに言ってるのは、その間で探せるかどうかよ」
リュカ
「……やる」
レティシア
「しくじったら終わりよ?」
リュカ
「やってやるさ」
レティシア
「エルフの名を汚さないでちょうだいね」
リュカ
「ああ」
ジェルヴェ
「ふっ、仲いいじゃねぇか」
レティシア
「は?嫌いよこんなハーフ。自分の持ってるエルフの力すら信じられないなんて」
ジェルヴェ
「そうかい」
レティシア
「やるわよ、リュカ」
リュカ
「ああ、レティシア」
レティシア
「大気を巡る風よ。強く激しく大気を震わせ、我が道を遮る霧を押し払え。ウィンドストーム!」
-強風が渦を巻きながら吹き荒れる-
リュカ
「中級精霊術ッ」
ジェルヴェ
「どわぁ!すげぇ風だな」
レティシア
「店長、飛ばされないように」
ジェルヴェ
「無茶言うぜ!」
-霧が晴れる-
リュカ
「木々に宿る精霊よ。我に力を貸したまえ。彼の者を守り、我らを繋げ、我らに道を示したまえ!プラント!」
レティシア
「……初級精霊術、の応用?」
リュカ
「霧が戻る前に、間に合え!」
ジェルヴェ
「すげぇ、植物が避けて道が出来てるぜ」
レティシア
「霧が、リュカ!」
リュカ
「大丈夫。まだ間に合う。レティシアが頑張ってくれたんだ。僕も、エルフの血を引いてるんだ!」
-霧が再び戻る-
リュカ
「(息を荒げ)ま、間に合った?」
ジェルヴェ
「多分な」
レティシア
「あなた、応用術までできたのね」
リュカ
「はは、セヴランがいつも無茶言うからね。そのおかげかな?」
レティシア
「……そう」
ジェルヴェ
「二人とも大丈夫か?」
レティシア
「私は大丈夫よ」
リュカ
「僕も、一応は、平気です」
ジェルヴェ
「よし、行くぞ」
-植物が作った道を辿っていく-
ジェルヴェ
「にしても、植物で道ができるとはな」
リュカ
「僕はレティシアみたいに精霊達の力を直接扱える訳じゃないですから。僕の場合は借りてるにすぎないんです。借りられる力で道標になりそうだったのは木々達だったので、咄嗟の判断でしたがなんとかなってよかったです」
ジェルヴェ
「そうか」
レティシア
「借りる為の媒体も限度があるわ」
リュカ
「そうだね。今のでだいぶ消耗したから、次使ったら砕けちゃうかな」
ジェルヴェ
「そういやリュカは宝石媒体だったな」
リュカ
「付けられるアクセサリーも限られてますし、装飾アクセサリーを作れる職人も少ないのであまり高位の精霊術は使えないんです」
ジェルヴェ
「支出がえぐいのはそれか……」
リュカ
「あー、すいません」
レティシア
「……アニエスが余計なのを買っているのもあるわ」
ジェルヴェ
「あいつはまた何を買ったんだ……!?」
リュカ
「(呆れ笑い)あれ、この道なんか見覚えが……」
レティシア
「見覚え?あなたこんな奥深くまで来た事があるの?」
リュカ
「あ、ああ。昔、アニエスを……まさか、あそこに?」
-植物が生い茂り、樹の球体上に包んでるところに繋がる-
カイ
「(泣いている)お母さん、お母さん。怖いよぉ、誰か助けてぇ」
リュカ
「やっぱり、ここにいた」
カイ
「え……」
-木々が枯れ、球体の中から子供が姿を現す-
カイ
「お、にいちゃん」
リュカ
「よく頑張ったな」
子供
「う、うわああああああ!」
リュカ
「よしよし、大丈夫だ。店でお前の母さんが待ってるから帰ろうな」
カイ
「お、母さんが?」
リュカ
「ああ、ちゃんと正規のやり方で依頼してくれたんだぞ」
ジェルヴェ
「お前さんがちゃんと教えてくれたおかげだ」
カイ
「ひっく、ぅ、怖かったよぉ」
ジェルヴェ
「一人で頑張ったな」
レティシア
「さ、帰りましょう」
カイ
「ん、うん」
リュカ
「ぁ、霧が……」
-突然霧が晴れる-
ジェルヴェ
「晴れたな」
レティシア
「本当、ここの濃霧現象は不思議ね」
リュカ
「これで帰れますね」
ジェルヴェ
「そうだな」
レティシア
「あなたまさか帰りの道標作ってなかったの?」
リュカ
「この子の場所に繋げることしか、考えてなかった」
レティシア
「はぁ……」
ジェルヴェ
「ま、うまくいったからいいじゃねぇか」
レティシア
「(溜息)そうね」
リュカ
「帰ろう。みんなのところに」
-エクシヴ、店内-
カイ
「お母さん!」
母親
「カイ!あぁ、よかった。本当によかった」
カイ
「わあああああ、ごめんなさい!」
母親
「私こそ、目を離してしまってごめんね」
ジェルヴェ
「一件落着だな」
リュカ
「そうですね」
母親
「本当に、ありがとうございました!」
カイ
「お兄ちゃん、ありがとう」
リュカ
「いいんだよ。もう母さんに心配かけさせんなよ?」
カイ
「うん!お姉ちゃんも、ありがとう!」
レティシア
「わ、私はなにも」
ジェルヴェ
「礼は受け取っておけ」
レティシア
「……どういたしまして」
カイ
「店長さんも、ありがとう!」
ジェルヴェ
「いいってことよ」
母親
「この場所があって、本当に助かりました」
カイ
「今度は僕がお母さんを守るんだ!」
リュカ
「お、その意気だぞ!」
カイ
「うん!」
母親
「まぁ、ふふ、頼もしくなったわね」
ジェルヴェ
「いいかー?泣きべそかいてお母ちゃん困らせるんじゃねぇぞ?」
子供
「な、泣いてない!」
ジェルヴェ
「ははは!そうだな、お前さんは強いな。
ご婦人、またなんかあったら来てくれ。いつでも歓迎するぜ」
母親
「はい。ありがとうございます。それでは失礼します」
カイ
「ばいばーい!」
-母子を見届ける-
レティシア
「私はそろそろあがるわ」
ジェルヴェ
「おう、ゆっくり休んでくれ」
レティシア
「ええ」
リュカ
「ありがとう、レティシア」
レティシア
「……少しは、エルフの血を引いてる自覚は持てたかしら?」
リュカ
「え?」
レティシア
「(溜息)これだからハーフは嫌いなのよ」
リュカ
「ちょ、それってどういうっ!?……行っちゃった。
店長、僕レティシアに何かしたんでしょうか」
ジェルヴェ
「前途多難だなぁ、こっちの関係は」
リュカ
「一生仲良くなれない気がします」
ジェルヴェ
「頼むから仕事中は協力してくれ?」
リュカ
「頑張ります」
ジェルヴェ
「ところで、あの子が隠れてた樹の洞(うろ)……」
リュカ
「はい。昔アニエスを見つけた場所と同じでした」
ジェルヴェ
「そういや、アニエスもシャルーズ森林で迷子になってたな」
リュカ
「はい。その時は霧がなかったので僕一人でもなんとかなりましたけど、今回はほんとレティシアに助けられました」
ジェルヴェ
「まぁ、純粋なエルフだからできたんだ。そんな気負うな」
リュカ
「レティシアには、やっぱり認められないのかな」
ジェルヴェ
「時間はたっぷりあるんだ。ゆっくり時間かけてわだかまりを無くしていけばいい」
リュカ
「そうですね」
ジェルヴェ
「おし、店じまいするぞ」
リュカ
「はい、手伝います」
ジェルヴェ
「ありがとよ」
-ホールに行くリュカを見て-
ジェルヴェ
「(小声)ハーフの存在も、やっと認められてきたんだ。昔に比べたら、今の方が生き生きしてるぞリュカ」
幕
2023/06/28 「Exclusive~Ep.2 確執~」 公開