登場人物
小宮(こみや) 男性
変態
村瀬(むらせ) 男性
真面目
美波(みなみ) 女性
天然
睦樹(むつき) 女性
クール
配役表
小宮:
村瀬:
美波:
睦樹:
-学校のチャイムが鳴る。ガヤガヤと廊下を歩き騒ぐ声がする。演劇部の部室に全員いる-
小宮
「……はぁ、女子の下着に生まれ変わりてぇ」
三人
「……は?」
睦樹M
「ここは演劇部の部室。新しい部員を確保する為、僕達は来月の新入生部活オリエンテーションの発表台本を決めていた」
村瀬
「……小宮、お前いきなり何言ってんだよ」
小宮
「いや、真面目な話だ。女子の下着に生まれ変わるのが俺の夢であっ、ブフォッ!」
睦樹
「(小宮を分厚い辞書で殴る)ちょっと小宮、美波のいる前で変な事言うのやめてくれる?
あんたの夢なんてどうでもいいの。来月の発表まで時間ないんだから早く台本決めるよ」
美波
「そういう台本あるのかなぁ?もしあるなら小宮くん似合いそーう」
小宮
「だよね!?美波ちゃんもそう思うよね!?そういう台本あるなら俺がやっぱり変身願望ある変態を演じるしかないよね!?」
村瀬
「こいつ等々自分から変態発言し始めたぞ」
睦樹
「こいつが変態なのはいつものことだよ。てか、なんで急に変態発言した。
台本決めてる最中だったでしょ。あんたの頭はバカかアホか天国かお花畑か」
小宮
「ぁあん、睦樹さんもっと罵ってぇええええ!」
睦樹
「うわ、キモッ。美波、こいつの顔視界にいれなくていい。声も聞くな。存在自体否定しろ」
美波
「え、でもそんなことしたら小宮くんが可哀想だよ」
村瀬
「そうだった。美波は天然だったな。この会話も所詮台本選びの一貫にしか思ってないんだろうな」
睦樹
「てか、なんで急にあんな事言い始めた?」
小宮
「いや、もし来世ってものが本当にあったとしたら、自分はどう生まれ変わって来世を生きるのかなってふと思ったんだよ」
村瀬
「来世なぁ……大体来世ってもんは死んでからじゃないとどうなるか分からないだろ。
それに、もし本当に来世があって生まれ変わってたとしても前世の記憶はない可能性の方が高い。
考えても意味ないと思うけどな」
小宮
「お前真面目すぎんだろ。夢ねぇな。俺みたいにデカイ夢見ろよな村瀬」
村瀬
「お前のは度が過ぎる夢だ」
美波
「でも、自分がもし生まれ変わったらって考えるのは楽しいし面白いよね!」
睦樹
「まぁ、僕も昔はそんな事考えてた時期があったよ。だけど、なんで生まれ変わったら女子の下着に生まれ変わりたいのかが分からない」
村瀬
「同感」
美波
「個性が出るよね!」
小宮
「(涙ぐみながら)美波ちゃん!」
村瀬
「まぁでも、そういう風に考えるの面白いよなぁ。ちょっと生まれ変わった後の設定で演じてみるか?演劇部らしくさ」
美波
「あ、面白そう!」
睦樹
「まぁ、エチュードって意味ではいいかもなぁ」
小宮
「そうと決まれば……(咳払い)
『はぁ、はぁ…前世からの願いだった女子の下着に生まれ変われたぞ!
これで、女の子の柔肌を感じ放題触り放題……ふふ、はははっ!幸せ絶頂天国じゃないかぁあああ!』」
美波
『はぁ、いいお湯だったぁ。ふふふ~ん』
小宮
『はぁああああん!いい匂いが俺の鼻を擽る!このフルーティーでフローラルな香り!
そのもちもちとした柔肌、モデルのような細い腰、白魚のような腕!
あぁ、こんな可愛い女の子の下着に生まれ変われたなんて!俺はなんて幸せ者なんだぁあああああああああ!』
睦樹
『ちょっと美波ー、確かあんたの下着破れてたでしょー?』
美波
『え?あ、そうだったー!ごめんねお姉ちゃん!』
睦樹
『(下着を破る)ふんっ!』
小宮
『あぁあああああ!イイ!イイ!イイわぁああああ!!もっと、もっと激しく!
もっと激しくあたしの心を深く切り裂いてちょうだぁあああああああい!!!
そして、もっともっとあたしの身体を熱くしてちょうだぁあああああい!!
はぁ、はぁ…イイわぁ…熱い夜と時間を一緒に過ごしましょほほぉおおおおおおん!!!』
睦樹
「(分厚い辞書で殴る)カット!」
小宮
「ぐは!つ、次は……学校一可愛いと言われる、マドンナ的存在の女の子のリコーダに、生まれ変わりたい、ぜ……ガクッ」
村瀬
「更にまた変態発言して死んだな」
美波
『明日リコーダーのテストだったんだ!練習しなくちゃ!』
小宮
『ふはははは!お前らは知らないだろうなぁ!学校一可愛い女の子と今キスしてるんだぜええええ!はああああああ、熱い吐息が俺の身体を駆け巡る!』
睦樹
「いい加減にせんかぁああああ!(模造刀で切りつける)」
小宮
「がはっ!ふ、ふふっ……よい腕だ。成長したな、我が弟子よ。もうなにも思い残す事は、ない……ガクッ」
村瀬
「美波も乗らなくていいからな?」
美波
「え?ダメだったかなぁ」
村瀬
「いや、ダメじゃないけど……こいつが悪乗りするから、程々にな」
美波
「うん、分かったぁ!」
睦樹
「はぁ……んで?村瀬は何に生まれ変わりたいんだ?」
村瀬
「んー?俺?」
睦樹
「こうなったら全員聞くしかないだろ。流れ的に」
村瀬
「そうだなぁ。まぁ、俺は小宮みたいに多くは望まないけど……
敢えて言うのであれば、そこら辺に落ちてる小石かそこら辺に生えてる雑草でいいかな」
睦樹
「はぁ?なんだそれ」
美波
「村瀬くんでもそんな風に曖昧で答えたりするんだねぇ」
村瀬
「まぁなぁ。中途半端な位置の成績で親や先生から過度ではないにしろプレッシャーを感じる生活には懲り懲りだからな」
美波
「頭いいもんねぇ、村瀬くん」
村瀬
「頭良いって言うか、物覚えと容量がいいって方が正しいと思うけどな。俺的に」
睦樹
「ふぅん、村瀬も大変なんだなぁ」
村瀬
「ははっ、だからたまに河原とか行ってボーッと夕陽を眺めたりしてる時あるんだよなぁ」
美波
「村瀬くんの家の近くにある河川敷?あそこから見る夕陽凄い綺麗だよね!私も好きなんだぁ!」
村瀬
「だろ?だから黄昏れるにはちょうどいいんだよ」
睦樹
「でもさぁ、小石って……それ無機物じゃん」
美波
「小宮くんのも無機物だよ?」
睦樹
「いやまぁ、そうなんだけど……あれはなんか得体のしれない別物だ」
美波
「そうなの?」
睦樹
「そうだ。だからあれは無機物に換算しなくていい。いや寧ろ、するな」
美波
「んー、なんかよくわかんないけど睦樹ちゃんが言うならそうするー!」
村瀬
「小石も捨てたもんじゃないと思うけどなぁ。まぁ小石が無理ならそこら辺に生えてる雑草でもいいかなぁ」
睦樹
「だから雑草って……犬や人間や車に踏まれて終わりだぞ!?」
村瀬
『はぁ、今日の夕陽も綺麗だなぁ。それに風も心地いい。例え踏まれたって俺はそう簡単にくたばりはしないさ。だって俺は、雑草なんだからな!』
小宮
『睦樹!競争しようぜ!』
睦樹
『はぁ?って、おい待てよ!この!』
美波
『小宮くん、雑草踏んじゃってるよ!』
小宮
『んー?いいんだよ!』
村瀬
『そう。何度踏まれても何度もまた背を伸ばして、また踏まれて、犬に囓られたりして……はは、所詮俺はそういう存在なんだ。誰も俺に目を向けてくれない。誰も見てくれない。ただそれだけの、そこに在るだけの存在なんだよ』
小宮
「『どっちが早くあそこまで着くか勝負だ!』……って、あいつまずくないか!?」
睦樹
「おい村瀬!戻ってこい!今すぐこっちに、現実に戻ってこい!」
美波
「村瀬くん!しっかりして!」
村瀬
「……はっ!あ、あれ?俺なんか変な事でも言ってた?」
小宮
「いや、変な事って言うか……なぁ?」
睦樹
「お前の闇を見た気がしたわ」
村瀬
「はぁ?」
美波
「村瀬くんって、何考えてるか時々分からなくなるよねぇ」
村瀬
「いや、俺より美波の方が……」
睦樹
「ところで、美波は生まれ変わるとしたら何になりたいんだ?」
美波
「私?私はねぇ、お空になりたいんだぁ」
小宮
『お前なぁ、どうしてそんな大事な事言わねぇんだよ!』
村瀬
『俺達の事信じてねぇだろ。友達だったんじゃねぇのかよ!』
睦樹
『悪い。言ったら壊れちまいそうで、関係が崩れそうで、言えなかったんだよ。お前らと一緒に、卒業できねぇって……』
村瀬
『親の関係で引っ越さなきゃいけないんだろ?転校なら仕方ねぇよ。でも、離れてても俺達は友達だ。だから、また遊ぼうぜ!』
睦樹
『ッ、あぁ…約束だ。また、遊ぼうぜ』
小宮
『うぉ、晴れてたのに急に雨が……ははっ、まるで俺達の為に泣いてくれてるみたいだ』
美波
『顔を上がれば、大空が広がってる。あなたは決して独りじゃない。いつでも空が上にある。
悲しくなったり寂しくなったら上を見上げて?離れてても空で繋がってる。
見上げれば、きっとどこかであなたを想う人も上を見上げてるはずだから。
泣けない時は、私が代わりに泣いてあげる。だから、大丈夫だよ』
小宮
「やめろおぉおおおお悲しくなるううううう!
あぁああああああああ美波ちゃああああああああああああああん!」
村瀬
「美波考え直せ!空だけはやめとけ!」
睦樹
「村瀬がそれを言うか!?とにかく美波、お前がとても心優しくていい子だってのが分かったけど空だけは考え直して悲しくなる!」
小宮
「美波ちゃあああああん!俺を置いて逝かないでぇえええええええええ!」
睦樹
「勝手に美波を殺すんじゃねぇよ!つか何勝手に俺のってつけてんだ!」
小宮
「いいだろ別に!つかそういう睦樹は何になりたいんだよ!」
睦樹
「ぼ、僕も言うの!?」
小宮
「当たり前だろ!全員言ったんだから睦樹だけ言わないってのはおかしい!」
睦樹
「ッ、分かったよ言えばいいんだろ!ただ、僕の聞いても絶対に笑うなよ!」
小宮
「はぁ?笑わねぇよ。睦樹は何になりたいんだよ」
睦樹
「……ね、猫……になりたい」
村瀬
「へぇ、あの男勝りな睦樹が猫なぁ。可愛いとこあるじゃん」
睦樹
「かっ、可愛いとか言うなぁ!」
美波
「睦樹ちゃん、よくペットショップで猫ちゃんコーナーに入り浸ってるよねぇ。後は野良猫ちゃんとも仲良くて……」
睦樹
「バッカ、美波余計な事言うな!」
小宮
「……あの睦樹が、猫?あの愛くるしい猫、だと?」
睦樹
「な、なんだよ。笑いたきゃ笑えよ!」
小宮
「って事はだ。って事は、俺の膝の上に乗ってきて喉を撫でれば気持ちよさそうな声で鳴いて擦り寄ってくれるって事か!?」
睦樹
「……は?」
小宮
『ただいま。はは、なんだお出迎えか?可愛い奴め。なぁ聞いてくれよ。
今日の体育の授業、俺すげぇ頑張ったんだぜ?もう少しで勝てるってとこだったのにちょっとヘマしちまって……負けちまったんだ』
睦樹
『にゃ、にゃーん…(不本意ながら小宮に付き合う感じ)』
小宮
『慰めてくれるのか?やっぱお前は俺の愛する猫だ。今日も俺のベットに入って一緒に寝るか?』
睦樹
『(噛みつく)』
小宮
『いってえええええ!なぜだ。なぜなんだ!
いつも俺の膝の上に擦り寄って甘く鳴いてくれるあの可愛い可愛い俺の愛するペットの睦樹は一体どこにいってしまったんだああああ!
いつも俺のベットに入ってきて一緒に寝たりしたじゃないかぁああああ!!カムバック!俺の睦樹ぃいいいいい!!!』
睦樹
「だ、れ、が……お前のペットになんかなるかぁあああああああああ!(腹パン)」
小宮
「ぐはっ!はぁ、はぁ…あの睦樹が、媚び売るように擦り寄ってきて俺の膝の上に……あぁああああ、萌える!萌えるぞ睦樹!
さぁ!俺の膝の上に来てもいいんだぞ!いや、寧ろ来い!もういいと言うまで愛でてやる!」
睦樹
「いい加減にしろおおおおおおお!!!(ビンタ)」
小宮
「はぁああああああああああん!愛するペットからの愛の鞭なら痛くも痒くもなああああああああああああいい!!!!」
村瀬
「……どうする?」
美波
「んー、楽しそうだから、このまま落ち着くまで待ってればいいと思うよー?」
村瀬
「そういうお前が一番楽しそうだな」
美波
「えへへ、だって見てるの楽しいんだもん。それに睦樹ちゃん、楽しそうだし!」
村瀬
「まぁなぁ。あんなんでも同じ演劇部の仲間だしなぁ。ついて行きますかぁ」
美波
「うん!」
-下校のチャイムが響き渡る-
睦樹
「うわ、下校のチャイム!どうすんの?顧問から今日までに来月の台本考えとけ言われたのに決まってないよ!」
小宮
「はぁはぁ、過激なプレイだった…今度も期待してるぜ睦樹」
睦樹
「うっさい、僕の性癖を勝手に決めるな。元はと言えば小宮が変な事言いだすからこういう事になったんだろ!あぁ、マジでどうすんだよ」
村瀬
「んー……あ、そうだ。この生まれ変わりの流れ書きおこして台本にするっていうのはどうかな?」
睦樹
「あ、それいい案だね!」
村瀬
「小宮の役だけは絶対嫌だからな」
小宮
「えー!なんでだよ!」
村瀬
「絶対嫌だ。断固拒否する。お前自身なんだしお前がやれよ!」
美波
「でも今のお話の流れを台本って、構成どうするの?」
睦樹
「あ、それだけどこういうのはどうかなぁ」
-三人で台本の構成の話し合いをしている中、小宮は少し離れた場所から見て笑みを零す-
小宮
「ふふ……」
村瀬
「なんだよ気持ち悪い」
小宮
「いや、何ていうかさ?俺がこうやって変態発言したりバカ騒ぎ出来たりするのって、お前らがいてくれるからなんだよなぁってよ。
来世とか考えるのもいいけど、やっぱお前らとこうやって笑えてる今が一番楽しいわ」
村瀬
「いきなりなに言ってんだよ」
小宮
「いや、なんでもねぇよ。さて!そうと決まればさっそくやろうぜ!」
幕