登場人物
咲(さき) 女性
20代前半。保険会社営業勤務。恥ずかしがり屋。
中々手を出してくれない悠里にモヤモヤしている。
極度の方向音痴。
悠里(ゆうり) 男性
20代後半。コンカフェ勤務。優男。
仕事の癖が抜けずオネエ口調。
手を出してほしい咲に気づいてるが、壊してしまいそうで進めずにいる。
桃(もも) 女性
咲の友達。相談相手。
※名前のみ登場。
配役表
咲:
悠里:
悠里
「それじゃあ店長。お先に失礼しまーす!」
-お店を出て走り出す-
悠里
「もう、話長いのよ!咲との待ち合わせに遅れちゃうじゃない!」
-電話をかける-
咲
「もしもし?悠ちゃん?」
悠里
「咲?ごめんなさい。今仕事が終わったわ」
咲
「お疲れ様」
悠里
「もう待ち合わせ場所にいるわよね?」
咲
「さっき着いたばかりだから、急がなくてもいいよ?」
悠里
「何言ってるの!急ぐに決まってるじゃない。
肌寒くなってきたんだから、どこかお店に入ってなさい!」
咲
「はーい。じゃあ、待ってるね」
悠里
「ええ。待ってて。すぐ行くわ。それじゃあ後でね」
-電話を切る-
-デパート前広場にて-
咲
「(携帯を鞄にしまう)悠ちゃん今お仕事終わったってことは、あと十分くらいで着くかなぁ。お店……確か珈琲ショップが近くに……あ、あった。あそこで待ってよう」
-珈琲ショップに入る-
-ドアベルの音-
咲
「(注文する)カフェオレのSサイズ、ホットでお願いします。……はい。……はい。大丈夫です。
えっと……(お金を払う)はい、ちょうどでお願いします。……ありがとうございます」
-珈琲を受け取り窓際のテーブルに座る-
咲
「(冷ますように息を吹きかけ飲む)熱っ……悠ちゃんに連絡しておかないと。えーっと……『広場の近くにあるコーヒーショップにいるね』送信っと。ここからなら悠ちゃん来た時すぐ分かるかなぁ。(飲む)あつつ……美味しい」
-暫くしてキョロキョロ辺りを見渡している悠里を見かける-
咲
「あ、悠ちゃん来た。携帯見てないのかな」
-電話をかける-
咲
「もしもし悠ちゃん?さてはメッセージ見てないなぁ?」
悠里
「え!?ごめんなさい。急いでたから届いてるの気づかなかったわ。どこのお店にいるのかしら?」
咲
「そこから見えると思うんだけど、珈琲ショップあるでしょ?窓際に座ってるよ」
悠里
「えっと、珈琲……あ、あそこね。見えたわ。まぁ、手ぇ振っちゃって。可愛いことしないで?」
咲
「今そっち行くね」
悠里
「寒いからそこにいなさい。アタシが行くわ」
咲
「分かった」
-電話を切る-
-店に入ってくる悠里-
悠里
「待たせちゃったわね。珈琲美味しかった?」
咲
「うん。美味しかったよ」
悠里
「良かったわ。遅くなってごめんなさいね」
咲
「大丈夫だよ」
悠里
「行きましょう」
-ゴミ箱に紙コップを捨てる-
-店を出るドアベルの音-
悠里
「ご飯は食べてきたのかしら?」
咲
「同僚と軽く食べてきたよ。悠ちゃんは?」
悠里
「アタシも賄いを軽く食べてきたわ。
それにしても、咲からデートに誘ってくれたの嬉しいわ」
咲
「いつも悠ちゃんから誘ってもらってたから、たまには私からって思って。
それに、ここのイルミネーション綺麗だから。悠ちゃんと一緒に見たかったの」
悠里
「可愛いわねぇ」
-ワッフルを売ってるキッチンカーを見つける-
悠里
「咲。イルミネーションの点灯時間までまだ時間はあるかしら?」
咲
「20時からだから、まだ時間はあるよ」
悠里
「あそこのキッチンカーでワッフル売ってるみたいだから、買って食べましょうか」
咲
「食べる!」
-ワッフルを買う-
-併設されている椅子に座る-
咲
「いただきまーす!」
悠里
「いただきます」
咲
「(食べる)んぅ、美味しい」
悠里
「(食べる)ん、ほんと。美味しいわね」
咲
「悠ちゃんは何頼んだの?」
悠里
「アタシ?チョコバナナワッフルね。中に生クリームとバナナが入ってるのよ」
咲
「美味しそう。私のは普通のワッフル生地なんだけど、カスタードとミカンが入ってるんだよ」
悠里
「そっちのも美味しそうじゃない」
咲
「美味しいよ。(時計を見て気づく)あ、もうすぐ点灯時間だよ」
悠里
「あら、ほんと?」
咲
「……5秒前。4、3、2、1!」
-街灯しかなかった広場が一気に明るくなる-
咲
「わぁ」
悠里
「綺麗ね」
咲
「うん。すごく綺麗」
-カメラの音が聞こえる-
咲
「え?」
悠里
「(携帯を構えている)うふふ」
咲
「写真撮ったの!?消してよ!恥ずかしい!」
悠里
「(撮った写真を見せ)嫌よ。ほら見て?とても綺麗よ。咲」
咲
「(照れる)悠ちゃんも、綺麗だよ」
悠里
「そんなことないわ。今ここにいる人で、咲が一番綺麗よ」
咲
「なにそれー。大袈裟」
悠里
「(軽く笑う)けど、本当に綺麗なイルミネーションね」
咲
「最近は流行り病で人が集まらないように点灯してなかったんだよ。
数年振りの点灯だから、悠ちゃんと見たかったんだ」
悠里
「ただ光を見ているだけなのに、こんなに楽しいなんて思わなかったわ。咲が色々なことを教えてくれるおかげね」
咲
「そ、そうかな」
悠里
「咲といると楽しいわ」
咲
「私も悠ちゃんといるの楽しいよ。(くしゃみをする)くしゅ!」
悠里
「寒くなってきたわね。そろそろ帰りましょうか」
咲
「ん、帰ろうか」
悠里
「ゴミ渡しなさい。捨ててくるわ」
咲
「ありがとう」
-ゴミを捨て戻ってくる-
-帰路-
悠里
「少ししかいれなかったけど、今日は楽しかったわ。
次のデートの日は、週末でいいのよね?」
咲
「うん!駅前に13時に待ち合わせね!」
悠里
「分かったわ」
-暫く歩くと咲の家に着く-
咲
「(悲しそうに)ぁ、家着いちゃった」
悠里
「またすぐデート出来るわよ」
咲
「もうちょっとだけ、一緒にいたい」
悠里
「アタシも一緒にいたいわ。でも、明日もお互いに仕事でしょう?」
咲
「そうだけど……」
悠里
「すぐ会えるわ」
咲
「……うん」
悠里
「それじゃあ、またね」
咲
「うん。またね」
-見送る-
-家に入り自室のベットに倒れこむ-
-電話が掛かってくる-
咲
「もしもし。……うん、お疲れー。……うん。デートしてた。
……それがさぁ。悠ちゃん、全然手ぇ出してくれないのぉ!
……付き合って1年は経つよ。……うん。うん。……恥ずかしいけど、そろそろ手ぇ出してほしい気持ちもあるんだよね。
桃ちゃんの言った通り"もうちょっと一緒にいたい"って言ってたみたんだけど、ダメだった。
……うん。うん。分かった。今度はそうしてみる。ありがとう桃ちゃん。……うん。またねー。
(通話を切って溜息をつく)……私、魅力ないのかなぁ」
-週末-
咲
「(ワクワクしながら)悠ちゃん、まだかなぁ。(ナンパされる)……はい。なんですか?……えっと、ごめんなさい。連れを待ってるので。
あの、無理です。彼氏を待ってるんです。……や、離して!やめてください!」
悠里
「ちょっと?アタシの彼女に何か用かしら?」
咲
「悠ちゃん!」
悠里
「ごめんなさいね。遅くなって。
それにしても、あなた達……よく見たら可愛い顔してるじゃなぁい!
どう?アタシとこれから飲みに行かない!?オネエさん奮発しちゃうわ!」
-逃げるナンパ-
悠里
「(小声/男口調)チッ、逃げるなら最初から手ぇ出すんじゃねぇよ」
咲
「悠ちゃん、ありがとう」
悠里
「いいのよ。遅れたアタシが悪いんだから。
来る途中に店長から午後出れないかって連絡があって、話してたのよ」
咲
「えっ。じゃあ、今日のデート……」
悠里
「今日は絶対に出れないって言ったから大丈夫よ」
咲
「ほんと?」
悠里
「ええ。本当よ。今日は咲の行きたいお店の開店日なんでしょう?」
咲
「うん!本店はちょっと遠い場所なんだけど、2号店が近くに出来たから行きたかったんだ!」
悠里
「どういうお店なの?」
咲
「クレープ屋さんなんだけど、SNSで人気なんだよ!」
悠里
「あら。そんなに人気なの?なら早く行かないといけないわね。場所はどこかしら?」
咲
「ちゃんと調べてきたよ!(地図アプリを開き)えっと、待ってねー……今ここだから。えっと……あ、こっち!」
悠里
「あっちよ」
-咲の手を掴み、逆の方向に歩く-
咲
「あ、あれ?」
悠里
「相変わらず方向音痴ね。アタシ心配よ」
咲
「ごめんねぇ、悠ちゃん。手、離して大丈夫だよ?」
悠里
「嫌よ。繋いでいたいの」
咲
「なんでそんな胸がキュンとすることすらっと言うの!?心臓保たない」
悠里
「可愛いわねぇ。何度も惚れさせてあげるわ」
咲
「うぅ、もう無理ぃ」
悠里
「うふふ。あ、もうそろそろ着くわね。えっと、ここの角を曲がって……あ、あそこかしら?」
咲
「あ、そこ!マリアンクレープ!」
悠里
「流石開店初日ね。アタシ達も早く並んじゃいましょう」
咲
「うん!」
-並んでると店員が来てメニュー表を渡してくる-
悠里
「並んでる間にメニューが選べるようになってるのね」
咲
「そうだよ!店員さんが先にメニュー表を渡してくれるの。それに、クレープの種類が豊富なことでも有名なんだよ。
クレープってデザートで食べること多いけど、ここには食事系のクレープもあるの」
悠里
「あ、これね?照り焼きチキンを包んだクレープとか、サーモンサラダのクレープとか……ほんと。食事系のクレープも多いわねぇ」
咲
「でしょ?でも今日のお目当てはね、開店日から一週間限定発売のフルーツ全乗せクレープ!
お店で取り扱ってるフルーツが全部巻いてあるんだよ!」
悠里
「あら。それはとても魅力的なクレープね。せっかくだからアタシもそれにしましょう」
咲
「あ、私達の番来たよ!」
-注文の順番がくる-
悠里
「期間限定のフルーツ全乗せクレープを二つください。……はい。ここで食べます」
-出来上がるのを待つ-
咲
「わ、わ!作ってる!目の前で作ってるよ!」
悠里
「工程が見れるのいいわねぇ」
咲
「美味しそう」
悠里
「すぐ食べれるわよ」
咲
「見て見て。苺!あ、バナナと蜜柑も入れてる!」
悠里
「クリームはカスタードなのね」
咲
「あ、出来たみたいだよ!(店員からクレープを受け取る)ありがとうございます!ぁ、開店おめでとうございます。いえ、楽しみにしてました!……はい、ありがとうございます!」
悠里
「あそこのテーブル空いてるわよ。行きましょう」
咲
「うん!はい、悠ちゃんのクレープ」
悠里
「ありがとう」
-椅子に座る-
咲
「いただきまーす!(食べる)はぁうぅ、美味しいぃ」
悠里
「いただきます。(食べる)ん、カスタードもそんな甘くしてないのね。生地が比較的甘く作られてるからかしら」
咲
「(もぐもぐしながら)フルーツいっぱいで、口の中幸せぇ」
悠里
「本当に幸せそうに食べるわねぇ」
咲
「(食べる)はむっ。んんん、おいひぃ」
悠里
「(食べる)コンカフェの同僚達にも教えようかしら」
咲
「甘党の人多いの?」
悠里
「多いわよ?特に店長は甘いものに目がないわねぇ」
咲
「え!?」
悠里
「咲がそういう反応になるのも分かるわ。店長、見た目厳(いか)ついから、甘党なんて驚くわよね」
咲
「甘いの嫌いかと思った」
悠里
「ああ見えて内緒にしてるみたいけど、バレバレなのよ。アタシが言ったってこと内緒にしてちょうだい」
咲
「うん。分かった。悠ちゃんのお仕事の邪魔になるようなこと言わない!」
悠里
「バレたら怒られちゃうわぁ」
咲
「怒ると怖そう」
悠里
「そうでもないわよ?見た目が怖いだけで、あの人怒るの嫌いらしいから」
咲
「そうなんだ。そういえば、前々から悠ちゃんに聞きたいなぁって思ってたんだけど、聞いてもいい?」
悠里
「なにかしら?」
咲
「なんでコンカフェで仕事してるの?」
悠里
「あら、言ってなかったかしら?」
咲
「うん」
悠里
「コンカフェで仕事しようとした理由……そうねぇ。色々なことが重なったっていうのもあるけど、きっかけは友達が誘ってくれたからかしらね。
それに、アタシ元々接客業が好きなのよ。けど、普通の接客業に物足りなさがあってね?
そんな時かしら、コンカフェってものがあるって知ったのわ。
アタシだけど、アタシじゃない自分とお喋りすることでお客さんを笑顔にする。
マニュアル通りの接客じゃなく、自分の話術で楽しませてあげられる。
それがアタシにうまくハマッたのかもしれないわね」
咲
「そうなんだ。悠ちゃんのそういう考え方、好きだよ。
私も接客業、といっても営業職だけど毎日しんどいもん」
悠里
「営業でも、人を相手にしてるから接客業よ。
弱音吐いたり愚痴言ったりしてても、毎日会社に行ってるじゃない。
アタシはそんな咲を尊敬しているわよ」
咲
「尊敬なんて……私なんにも出来てないよ?」
悠里
「出来てるわよ。なんてったってアタシの彼女よ?あんたは出来るの。自信持ちなさい」
咲
「……うん。ありがとう。悠ちゃん」
悠里
「どういたしまして。さて、ゴミ片してくるわ。咲はここで待ってて」
-ゴミを受け取り、捨てに行く-
咲
「(独り言)今日こそ、桃ちゃんに言われた通り悠ちゃんを誘惑するんだ。恥ずかしいけど、頑張るぞ」
悠里
「(戻ってくる)お待たせ。次はどこ行きたいのかしら?」
咲
「あ、ここに来たかったから、他の場所は考えてなかった。
んー、逆に悠ちゃんが行きたい場所はないの?」
悠里
「アタシの行きたい場所?」
咲
「うん。クレープ屋付き合ってくれたから、今度は悠ちゃんの行きたい場所に付き合う!」
悠里
「そうねぇ。一つだけあるわね」
咲
「ほんと?じゃあそこ行こう!」
悠里
「そうね。行きましょう」
-手を繋ぎ悠里の行きたい場所に向かう-
-洋服屋 試着室内にて-
咲
「……えっと、なんでこんなことに?」
悠里
「咲ー?着替えられたかしらー?」
咲
「う、うん!」
悠里
「見せてちょうだい」
咲
「(試着室のカーテンを開ける)ど、どう?」
悠里
「いいわ。すごくいい!咲は身体の線を見せる服の方が似合うわね!」
咲
「あ、ありがとう。えっ、悠ちゃんの行きたい場所って、洋服屋さんだったの?」
悠里
「そうよ?」
咲
「悠ちゃんが、服を買いたいんじゃなくて?」
悠里
「咲に着てほしい服を、アタシが、買いたいのよ」
咲
「さっきから思ったけど、これフルセットでコーディネートしてるよね!?値段見てる!?」
悠里
「勿論見てるわよぉ。あ、次はこの服着てちょうだい。絶対似合うわ」
咲
「(服を受け取りながら)き、着るけど。着るけどぉ!ワンセットだけだからね!?何セットも買わないでね!?」
悠里
「もう、値段は気にしなくていいわよぉ。アタシが好きでしてることなんだから」
咲
「ダメ!ワンセット!」
悠里
「(渋々)分かったわよ。仕方ないわねぇ」
咲
「着替えるから待ってて!」
悠里
「(嬉しそうに)はいはい」
-試着室に戻る-
咲
「(暫くして)着替えたよー」
悠里
「見せて?」
咲
「(試着室のカーテンを開ける)どう?」
悠里
「(言葉が出ない)」
咲
「へ、変じゃない?」
悠里
「……」
咲
「ねぇ、なんか言ってよぉ」
悠里
「ぇ、あぁ、ごめんなさい。思ってた以上に似合ってて……とても可愛いわ」
咲
「そ、そう?」
悠里
「ええ。さっきのよりこっちの方がいいわね。こっちにしましょう」
咲
「じゃあ着替えてくるね」
悠里
「せっかく似合ってるんだから、着替えるなんて勿体無いわ」
咲
「え?」
悠里
「(店員を呼ぶ)すいませーん。彼女が今試着してる服を買いたいんですけど、このまま着て帰っても大丈夫ですか?
……はい。お願いします。あ、あと着ていた服を入れたいのでショッパーを1袋貰えますか?……はい。ありがとうございます。
(咲に)アタシ会計してくるから、この店員さんに服のタグ切ってもらいなさい」
咲
「ええ!?」
悠里
「行ってくるわね」
-会計をしに向かう-
咲
「すいません。お願いします。
(試着室に入る)ぁ、はい。彼氏です。……素敵、そうですね。とても素敵な彼氏です。
まさか服をフルセットでプレゼントされるなんて思いませんでした。……はい。とっても嬉しいです。
(タグを切り終わる)あ、タグ、切っていただきありがとうございました。……はい。素敵なデートにします」
-会計を済ませ、ショッパーを1つ持って戻ってくる-
悠里
「会計終わったわよ。はい、これ。ここに着ていた服入れなさい」
咲
「ありがとう」
-ショッパーを受け取る-
悠里
「……」
咲
「悠ちゃん?」
悠里
「本当に可愛すぎて、言葉が出ないわ」
咲
「さっきからそればっかり!」
悠里
「本当に可愛いんですもの。咲の可愛さで心臓が止まりそうよ」
咲
「もう。服、プレゼントしてくれてありがとう」
悠里
「どういたしまして」
咲
「ちょっと待っててね」
悠里
「ええ」
-試着室に戻る咲-
悠里
「(小声/男口調)……可愛すぎだろ。はぁ、マジ理性飛びそう」
-試着室から出てくる-
咲
「お待たせ。悠ちゃん何か言ってた?」
悠里
「なにも言ってないわよ。
他の男の視線が来そうで嫉妬しそうって思ったの」
咲
「悠ちゃんが守ってくれるでしょ?」
悠里
「勿論よ」
咲
「他に行きたい場所あるー?」
悠里
「服に合うアクセサリーを選びに行きたいんだけど、いいかしら?」
咲
「え!?これ以上買っちゃダメだよ!」
悠里
「ワンセット、でしょ?アクセサリーもワンセットの一部よ?」
咲
「そ、それはずるいよぉ」
悠里
「うふふ。いいわね?」
咲
「なにも言えないです」
悠里
「じゃあ買いに行きましょうか」
咲
「してやられたぁ」
悠里
「最近人気のお店が近くにあるらしくてね。ネットでも結構バズってるらしいのよ」
咲
「へぇ」
悠里
「そんなに高くないんだけど、有名人も来るようなお店みたいなのよ。
(目当ての店に着く)あ、あそこよ。あの緑の看板のお店」
咲
「ぇ、思ってた以上に近かった。てか目と鼻の先」
悠里
「でしょ?」
-お店に入る-
咲
「わぁ」
悠里
「好きなの選んでいいわよ」
咲
「いいの?えっと、じゃあ……うーん、どうしようどれも好き。
十字架デザインは持ってるし、トップが大きいは好みじゃないし……あ」
悠里
「好みなのあったかしら?」
咲
「うん。これがいい」
-ネックレスを指差す-
悠里
「四つ葉のクローバーね。いいんじゃないかしら?今の服にもピッタリだわ」
咲
「……悠ちゃんが嫌じゃなかったら、お揃いで付けたい」
悠里
「ペアってこと?」
咲
「うん。ダメ?」
悠里
「ダメじゃないわ。同じの二つ買いましょうか」
咲
「ありがとう」
悠里
「(レジに向かう)すいません。これください。(お金を払い商品を受け取る)ありがとうございます。あ、そこの鏡借りて付けてもいいですか?……ありがとうございます。お借りしますね」
-鏡の前に行く-
悠里
「咲、鏡の方向いてくれる?」
咲
「う、うん」
-後ろから咲の首にネックレスを付ける-
咲
「……似合う?」
悠里
「(耳元で/男口調)すっげぇ似合ってる。可愛いよ」
咲
「ひゃっ!いきなりそれはダメ!」
悠里
「可愛い反応しないでちょうだい?いじめたくなっちゃうじゃない」
咲
「悠ちゃんもネックレス付けてよ」
悠里
「そうね」
-鏡越しにネックレスを付ける-
悠里
「……どうかしら?」
咲
「似合ってる」
悠里
「ありがとう」
咲
「お揃いだぁ」
悠里
「ペアとか嫌いじゃないのね?」
咲
「寧ろ、ずっとしたかった」
悠里
「言ってくれたらしたのに」
咲
「嫌だったらどうしようって考えたら言えなかった」
悠里
「けど、今知れたから次からは気軽に言えるわね?アタシ、彼女とのペアはしたい派よ」
咲
「良かったぁ」
悠里
「ペアネックレスの次は、ペアリング買ってあげるわ。勿論、薬指に嵌めてくれるわね?」
咲
「く、薬指って……」
悠里
「ちゃんとしたの送るまでは、ペアリングで咲の薬指、アタシのだって予約をさせてちょうだい。それまではネックレスで、ね?」
咲
「(恥ずかしがる)うん」
悠里
「(日が傾いてきてることに気づく)あら。もう暗くなってきてるわ。この時期は陽が落ちるの早いわね。
そろそろ夕飯でも食べに行きましょうか。咲、今日は何を食べたい気分かしら?」
咲
「んー、パスタかなぁ」
悠里
「パスタね。じゃあ駅前にいいところがあるから行きましょうか」
咲
「うん!」
-アクセサリーショップを出て、駅前に向かう-
悠里
「そこ、最近出来たばかりなのよ」
咲
「悠ちゃんって色々なところ知ってるよね」
悠里
「そうでもないわ。殆ど同僚に教えてもらったところばかりよ」
咲
「それでも、悠ちゃんの同僚さんが紹介してくれるお店っていいところばかりじゃん」
悠里
「それは同僚のセンスがいいのよ。おかげで咲を連れて行きたい場所が増えてく一方」
咲
「他にもあるの?」
悠里
「あるわよ。一回のデートじゃ回りきれないから、これから先のデートでいっぱい連れて行ってあげるわ」
咲
「ほんと?今から楽しみだね」
悠里
「そうね。あ、着いたわ。ここよ」
-店に着く-
-店員に案内され、席に着く-
悠里
「(メニューを開き)ありがとうございます。咲はどれが食べたいのかしら?」
咲
「んー、どれも美味しそうだけど……今日はこれの気分。悠ちゃんは?」
悠里
「アタシは、これにしようかしら。(店員を呼ぶ)すいませーん。注文いいですか?
ほうれん草と鮭のクリームパスタ。ナスとパプリカのボロネーゼをお願いします。
……そうですね。咲、サラダとスープのセットの方が安いって。どうする?」
咲
「あ、ならそれで」
悠里
「ならサラダとスープのセットで、パスタはその二つでお願いします。
……飲み物は大丈夫です。……はい。お願いします」
-店員が戻っていく-
咲
「ここ、雰囲気いいね」
悠里
「そうでしょう?同僚のオススメ。一回連れてきてもらったんだけど、気に入っちゃったのよ。咲と絶対ここに来ようって決めてたわ」
咲
「店内音楽、クラシックなんだね」
悠里
「店長がクラシック好きって話よ」
咲
「へぇ」
悠里
「店内に飾ってる花とか絵画あるじゃない?あれ、全部店長が作ったらしいの」
咲
「ええ!?」
悠里
「多才よねぇ」
-注文したメニューが運ばれてくる-
悠里
「ありがとうございます」
咲
「わぁ、美味しそう」
悠里
「冷めちゃわない内に食べましょう」
咲
「いただきます」
悠里
「いただきます」
咲
「(息を吹きかけ食べる)んー、ふふふっ、美味しい」
悠里
「(食べる)美味しすぎて笑顔になっちゃわね」
咲
「連れてきてくれてありがとう」
悠里
「いいのよー。アタシが連れてきたかったの」
咲
「(じーっと見つめる)」
悠里
「ん?なにかしら?」
咲
「いや、悠ちゃんって……唇薄いんだね。なんか、食べて唇動いてるところ、えっちだなぁって」
悠里
「(むせる)」
咲
「ゆ、悠ちゃん大丈夫!?」
悠里
「ゲホッ。だ、大丈夫よ。急に変なこと言うんだもの」
咲
「ご、ごめん」
悠里
「いいのよ。そんなこと言われるなんて思わなかったわ」
咲
「な、なんかふと思っちゃって」
悠里
「気にしないでちょうだい」
咲
「そ、そっか。(食べる)んー、美味しい。(目線を逸らした悠里に気づく)ん?なぁに?悠ちゃん」
悠里
「咲が変なこと言うから、唇。意識して見ちゃうわね」
咲
「み、見ちゃダメ。恥ずかしい」
悠里
「安心して。見ないわよ」
咲
「(悠里を見ずに料理を食べる)」
悠里
「アタシのこと、見てくれなくなっちゃったわ。少し寂しいわねぇ」
咲
「い、意識しちゃうから」
悠里
「自分から言ったんでしょう?」
咲
「そ、そうだけど。見られるのがこんなに恥ずかしいなんて思わなかった」
悠里
「アタシの気持ち、分かったかしら?」
咲
「ん、分かった」
悠里
「ふふっ。今は料理を楽しみましょう」
-暫く二人で食事を楽しむ-
咲
「ご馳走様でした」
悠里
「ご馳走様でした」
咲
「満足ぅ」
悠里
「良かったわ」
咲
「またここ来たい」
悠里
「ええ。また来ましょう」
-会計をしに行く-
咲
「ご馳走様でした。美味しかったです!」
悠里
「ご馳走様。また来ますね」
-店を出て帰路に着く-
咲
「(外の寒さに震える)くしゅっ!」
悠里
「咲。手」
咲
「ん」
悠里
「(繋ぐ)これなら寒くないかしら?」
咲
「悠ちゃん、手ぇ暖かいね」
悠里
「咲の手は冷たいわねぇ。夜寝る時大丈夫なのかしら?心配よ」
咲
「大丈夫だよ。生姜湯飲んでから寝てるから!」
悠里
「健康的ね。アタシもそうしてみようかしら」
咲
「オススメだよ。生姜湯。風邪の時、喉にもいいんだ」
悠里
「次風邪引いたら試してみるわ。けど、風邪引かないことが一番ね」
咲
「それもそうだね」
-咲の家に着く-
悠里
「さ、着いたわよ。今日のデートも楽しかったわ」
咲
「私も」
悠里
「それじゃあ、アタシは帰るわね。
……咲?手、離してくれないと帰れないわ」
咲
「……帰ってほしく、ないもん。もっと悠ちゃんといたい」
悠里
「……」
咲
「悠ちゃんは私といたくないの?私だけが一緒にいたいみたいで……」
悠里
「そんなことないわ。アタシも、咲ともっといたい」
咲
「じゃあ、なんで?」
悠里
「……」
咲
「(意を決したように)悠ちゃん。ちょっと屈んでくれる?」
悠里
「え?ええ」
-言われた通り屈む-
咲
「(頬にキスをする)」
悠里
「ぇ……」
咲
「ゆ、悠ちゃんが中々手ぇ出してくれないから、私から手ぇ出しちゃうもん!」
悠里
「(小声/男口調)……可愛いことすんなよ」
咲
「え?」
悠里
「咲」
咲
「なに?悠ちゃ、んっ……」
悠里
「(唇にキスをする)」
咲
「ん、待って。悠ちゃ、んっ」
悠里
「キスするなら、頬じゃなくて唇に、でしょう?」
咲
「ふえ?」
悠里
「(小声)ずっと、抑えてたのに……これ以上は無理ねぇ」
咲
「悠ちゃん?」
悠里
「アタシが怖気づいてたところを、簡単に踏み込んでくるんだから。困っちゃうわ」
咲
「なにが?」
悠里
「ごめんなさい。咲が先に進みたがってたの、気付いてたわ」
咲
「私、悠ちゃんに手ぇ出されてもいいよ?」
悠里
「あー、もう」
咲
「(悠里に抱きしめられる)悠ちゃ、苦しっ」
悠里
「可愛くておかしくなりそうよ」
咲
「悠ちゃん。大好きだよ」
悠里
「ええ。アタシも好きよ」
咲
「えへへ。嬉しい」
悠里
「ねぇ、知ってるかしら?」
咲
「?」
悠里
「ネックレスを、彼女に送る意味」
咲
「……分かんない」
悠里
「(男口調)俺のものって意味」
咲
「(照れる)悠ちゃんの……え、じゃあ、洋服も意味があるの?」
悠里
「勿論あるわよ」
咲
「なに?」
悠里
「脱がせたい、って意味」
咲
「(驚きすぎて言葉が出ない)」
悠里
「手、出していいのよね?」
咲
「(真っ赤になりながら何度も頷く)ん、うん」
悠里
「(ここから最後まで男口調)今日、咲の家泊まっていい?」
咲
「うん」
悠里
「もう一回、キスしていい?」
咲
「だ、だめ」
悠里
「なんで?」
咲
「み、見せれない顔してると思うから、見ないで」
悠里
「(軽く笑う)それは無理な相談だなぁ」
咲
「え」
悠里
「(顎を持ち上げてキスをする)見ないでは、もう聞かない。聞いてやらない。全部、俺に見せろ」
咲
「ッ……」
悠里
「俺も、全部見せてあげる。
……今日は離してやれそうにないから、覚悟しろよ」
咲
「うん。離さないで。悠里」
-リップ音-
-鍵を取り出す音とドアが開いて閉まる音-
幕
2023/11/19 「オネエの彼氏が手を出してくれません!」 公開