君は、虹の袂を見たことある?
そっか。あるんだ。
じゃあさ、そこに行ったことある?
……そうだよね。行けないよね。
私は、いつか行ってみたいんだ。虹の袂に。
なんでって?
あそこは、旅立っていった子が渡る架け橋になってるんだって。
だから、そこに行けば会えるんだよ。あの子に。
……あの子がいなくなって、私の世界はモノクロになってしまった。
虹に色を取られたみたいになっちゃったの。
毎日迎えてくれた声がない。あの温もりがない。柔らかさがない。
虹の袂に行けば、あの子に会えて、私の世界にも色が戻るんじゃないかって思ったの。
でも、そう簡単にいかないね。
絶対にあそこには行けない。
どれだけ走っても、辿り着かせてはくれない。
手を伸ばしても、離れていくだけ。
そして音もなく消えていく。
あの子を連れて行く。
……いつか、虹の袂に行きたいな。
きっとあの子は待っていてくれてると思うから。
だから最期に、最期にお礼を言いたい。
私の元に来てくれてありがとう。
一生を私の傍で生きてくれてありがとう。
孤独だった私の心を満たしてくれて、ありがとう。
苦しい思いをさせてごめんね。
向こうに行ったら、いっぱい走り回って遊ぶんだよって。
……ねぇ。
私、今笑えてるかな?
笑顔でさよなら言えるかな?
あの子の前では、絶対に泣きたくない。
……もっと、もっといっぱい、一緒にいたかったよ。
……元気でね。
また、命が巡って、私の元に来てくれたらいいな。
2023/05/10 ボイコネ終了に伴い移動