●ヒルベルト空間論を学ぶために必要な基礎知識について
数学専攻以外の人で量子力学の数学的基礎に興味がありヒルベルト空間論を学びたい人向けに、必要な最低限の事柄について解説する。まず項目をあげると
[1]集合と位相の基礎とε-δ論法
微分積分
線形代数
[2] 位相空間論
[3] ルベーグ積分
である。以下にこれらを学ぶための文献をあげる。特に「集合と位相の基礎とε-δ論法」および「位相空間論」が現代数学を学ぶ上で最も基礎になっている。
[1]集合と位相の基礎とε-δ論法, 微分積分, 線形代数
●集合と位相の基礎
[一樂] 新版 集合と位相 そのまま使える答えの書き方, 講談社
[藤岡1]手を動かしてまなぶ 集合と位相, 裳華房
●ε-δ論法
[原・松永] イプシロン・デルタ論法 完全攻略, 共立出版
[藤岡2] 手を動かしてまなぶ ε-δ論法, 裳華房
● 微分積分
[杉浦] 解析入門I,II, 杉浦光夫, 東京大学出版会
[小平] 軽装版 解析入門I,II, 小平邦彦, 岩波書店
● 線形代数
[齋藤] 線型代数入門, 齋藤正彦, 東京大学出版会
[佐武] 線型代数学(新装版), 佐武一郎, 裳華房
[2] 位相空間論
[森田] 集合と位相空間, 森田茂之, 朝倉書店.
[Lip] Schaum's Outline of General Topology, S.Lipschutz, McGraw-Hill.
[森田]は位相空間論に関するわかりやすい教科書である。[Lip] は基本的な例題と問題が非常に多く、とてもわかりやすい本である。
[3] ルベーグ積分(測度論)
[伊藤] ルベーグ積分入門 (新装版), 伊藤清三, 裳華房
[谷島] 新版 ルベーグ積分と関数解析, 谷島賢二, 朝倉書店
[伊藤], [谷島] ともに標準的なルベーグ積分の教科書である。特に[谷島]は量子物理とヒルベルト空間に興味のあるひとにおすすめで、証明もとても丁寧に書かれている。
●ヒルベルト空間論の本
[藤田・黒田・伊藤] 関数解析,岩波書店.
[廣島] 関数解析, 廣島文生,サイエンス社.
[新井] ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版, 共立出版.
関数解析の基本的事項がバランスよく書かれた本としては、[藤田・黒田・伊藤]と [廣島]を挙げる。[新井]はヒルベルト空間から量子力学の数学的基礎への解説が簡潔に書かれた入門書である。