樹木によるCO2削減量の推定



樹木は光合成によりCO2を吸収するが同時に呼吸によりCO2を排出する
そのためCO2の削減効果は吸収量だけから推測するのは意味がない
樹木の大気浄化機能を推定する場合、汚染ガスの吸収量を光合成によるCO2の吸収量から求めることはあるが
一部のレポートでこの値をそのまま吸収量=削減量のように表現しているものをみかける。
実際のCO2削減量を推定する場合、葉面からのCO2の吸収量と排出量を測定する方法より吸収され固定された炭素量からCO2の吸収量を推定する方法が有効だと思われる。
固定された炭素量は樹木の幹、枝、根の乾燥重量の約半分である。そしてこの炭素量に3.67を乗じることでCO2の重さを算出できる。
乾燥重量の求める一つの方法はまず幹直径と樹高から円筒形の体積を算出しそこに係数(胸高計数)を乗じて幹の体積(材積)を推定し[*林分形数法]
次に枝葉の体積を拡大係数を乗じて求め、さらに根の体積を地下・地上部比率から算出する。この体積に容積密度(乾燥比)を乗じることで樹木の乾燥重量を算出する。

例) ケヤキ 目通30cm(幹直径9.5cm) 高さ5mの場合

表より

胸高係数=0.652

拡大係数=1.58

地下部・地上部比=0.25

容積密度=611kg/m3


材積(幹の体積):(0.095/2)×(0.095/2)×3.14×5.0×0.652=0.023m3 

幹と枝の体積:0.023×1.58=0.036m3 (A)

根の体積:0.036×0.25=0.009m3  (B)

樹木の体積(A)+(B)=0.045m3

となる。これに容積密度を乗じて乾燥重量を求める

0.045×611=27.5kg (C)

乾燥重量の50%が固定炭素量となるので

固定炭素量: 27.5×0.5=13.77kg (D)

これをCO2に換算するために3.67を乗じる

固定されたCO2量 :50.54kg


上記規格のケヤキは芽生えからこれまでに約50kgのCO2を固定(削減)したと推定できる


次に目通り15cm高さ3mのケヤキを植裁し10年後に目通り60cm高さ7mに成長した場合(幹直径が毎年1.4cm増加)

この植裁によるCO2の削減効果を試算してみると

目通り15cm 高さ3mのケヤキのCO2固定量:9.27kg

目通り60cm 高さ7mのケヤキのCO2固定量:293.12kg

10年間で固定したCO2量 293.12-9.27=283.85kg

年平均で28.4kgとなる

上記ケヤキの各年ごとのCO2固定量 

また都市緑化樹木の幹、枝、根の乾燥重量を実際に多数測定したデータから幹直径と乾燥重量の関係式を導き出し

さらに胸高直径と樹齢の関係も考察し樹種による年間のCO2固定量を導きだしている研究も報告されている


参考ホームページ: 国土交通省 国土技術政策総合研究所 緑化生態研究室

日本における都市樹木のCO2固定量算定式(日本緑化工学会誌,35(2) : 318-324).

上記ホームページより算出した主な樹木の年間CO2固定量(kg)