「幼児期からのお稽古は本当に意味があるの?」
近年、テレビなどで某脳科学の先生が「幼児期のお稽古はピアノだけで充分!」と提唱されたこともあり、幼児期からのピアノ教育への関心が高まっています。では、なぜピアノだけで良いと断言できるのでしょうか?その理由は、「発育段階における総合的な学習として非常に適している」からだと考えられています。
「幼児期からのお稽古は本当に意味があるの?」近年、テレビなどで某脳科学の先生が「幼児期のお稽古はピアノだけで充分!」と提唱されたこともあり、幼児期からのピアノ教育への関心が高まっています。では、なぜピアノだけで良いと断言できるのでしょうか?その理由は、「発育段階における総合的な学習として非常に適している」からだと考えられています。
文部科学省のウェブサイトによると、学校における総合的な学習の時間は、「変化の激しい社会に対応し、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることなどをねらいとするものであり、思考力・判断力・表現力等が求められる『知識基盤社会』においてますます重要な役割を果たす」とされています。 さて、近年注目されている「非認知能力」をご存じでしょうか?これは、いわゆるIQである認知能力とは異なり、「意欲」「協調性」「粘り強さ」「忍耐力」「計画性」といった個人の特性を指します。認知能力と非認知能力、これらを総合的に育むのが総合学習と言えるでしょう。
さて、話をピアノ教育に戻しましょう。私が考えるピアノにおける総合的な学習の内訳を、順を追ってご説明したいと思います。 ピアノは単に「弾いて楽しい!」というだけでなく、演奏という行為を通して様々な能力を育みます。 基本的に一人で演奏するため、まず自主的に練習に取り組む「積極性」と、それを継続する「持続力」が養われます。楽譜を読み解く「理解力」や、楽曲の背景や情景を思い描く「想像力」も重要です。 そして、理解した内容を音として表現する「実行力」と「表現力」が求められます。楽曲によっては、「技術力」はもちろんのこと、ミスを防ぐための「注意力」、音を正確に聞き分ける「聴覚判断力」、そして楽譜や演奏の流れを記憶する「記憶力」も必要となります。 一曲を完成させるには、「忍耐力」「集中力」「精神力」が不可欠であり、演奏における課題を自ら見つけ、解決していく「問題解決力(判断力)」も身につきます。 新しい曲に取り組む際には、以前の経験を活かす「応用力」が重要になります。 二人で演奏する連弾では、お互いの気持ちや呼吸を合わせる「協調性」が育まれます。 さらに、コンサートやコンクールに向けて努力し、目標を達成することで「達成感」を味わい、それが自信へと繋がります。 また、コンサートやコンクールなど、その場に応じて楽器の状態を判断し、奏法や音色を即座に変える必要のある場面では、「判断力」と「決断力」が養われ、人前で自分を表現する度胸や感情を伝える「自己表現力」も育ちます。 そして、目標達成までの過程(計画・実行・解決)における「計画実行力」こそ、非認知能力を育む上で最も重要な要素と言えるでしょう。
これこそが、ピアノ教育が優れていると言われる所以でしょう。 他の習い事やスポーツでも同様の能力が養われる可能性はありますが、様々な分野に手を広げるよりも、一つのことを深く学ぶ方が、より効果的にこれらの力を育むことができるのではないでしょうか。 これからの国際社会において求められるのは、総合的な学習能力を備えた人材です。知識を単に記憶するだけの学習とは一線を画し、自ら考え、行動できる力がますます重要になってくるでしょう。
子育てサイト「Conobie」の記事によると、「近年の教育論では、IQよりもむしろ非認知能力が社会的成功と強く結びついており、幼児期の質の高い教育や関わりが非認知能力を高める上で重要であるとされています。また、2020年からの大学入試においても、この非認知能力が評価の対象となることが決定しています」。 このように、非認知能力はこれからの国際社会における人材育成に不可欠な要素です。認知能力と非認知能力の両方を育むという意味において、ピアノ教育は非常に有効であると言えるでしょう。
しかしながら、ピアノ教室に通うだけでこれらの能力が自然と身につくわけではありません。ピアノ教育においては、家庭と教室(先生)が一体となり、お子様の成長をサポートしていくことが不可欠です。冒頭でも触れたように、ピアノ教室に通わせても、先生の思いと保護者の意識がすれ違っていては、その効果は半減してしまいます。 先生がご家庭に毎日訪問して練習を見ることは現実的ではありません。だからこそ、先生とご家庭がお子様の学習環境や成長に対する意識を共有することが重要となるのです。 先生は、常日頃のお子様の良い点や改善点など、あらゆる情報を必要としています。「良くないことを伝えると先生ががっかりするのでは?」「十分に練習させていないから、また何か言われるのではないか?」と不安に感じられる保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが、お子様の能力が伸び悩む場合、それは先生にも責任があると考えられます。様々な情報を共有することで、共に問題解決に取り組んでいきたいと思っています。
これからの時代を担う子どもたちのさらなる人格形成のために、教室(先生)とご家族が心を一つにして、成長を見守り、育んでいきたいと願っています。