Step②「世界観を知る」各論
暦について
Step②「世界観を知る」各論
暦について
私たちの生活になくてはならない「日付」。
時の流れをつかみ、「今日この日」を表してくれる、大切な道しるべです。
あまりにも当たり前にあるために、そのありがたさをつい忘れてしまいます。
けれど「今日という日」に名前をつけるために、過去の人々は、知恵と工夫を重ねてきました。
たとえば、いま私たちが日常で使っている「西暦20◯◯年◯月◯日」という日付。
それは「グレゴリオ暦」と呼ばれる暦法によるものです。
グレゴリオ暦は、それ以前に使われていたユリウス暦の「春分の日が徐々に後ろにずれていく」という誤差を修正するために導入されました。
しかし、それでもまだ完全とは言えません。
月の満ち欠けが分からなかったり、1月1日に天文学的な意味がなかったり、曜日や自然の感覚とずれていたり。
数字の羅列のように見えるカレンダーの裏に、正確な時を求めて工夫を続けた人間の姿が見えてきます。
このように、暦はいまだに「不完全なもの」なのです。
地球の公転周期は、約365日5時間。月の満ち欠け(朔望月)は約29日12時間。
このわずかな時間が、少しずつ積み重なって、やがては大きなずれとなります。
だからこそ、人々はそれを調整し、正確に保とうとする中で、さまざまな暦を生み出してきました。
そこには、季節の移ろい、植物の種まき、さらには吉凶までも読み取ろうとする視点が埋め込まれています。
ここでは、「人はカレンダーを通してどんな情報を欲したのか」
そんな視点から、暦という知恵をまとめています。
時の流れを、自然の流れを知るために
太陽の動き、月の満ち欠け、四季のめぐり。
そうした自然のリズムをもとに、人びとは様々な暦を編み出しました。
太陽暦:季節は巡り、同じようで、新しい時がやってくる
地球が太陽を一周する周期(約365日)をもとに作られた暦。
それが太陽暦です。
太陽のリズムに沿って、地球上の域とし生けるもの、自然や動植物、人間は暮らしています。
太陽暦の最大の特徴は、季節感と一致していること。
毎年同じように、この月にはこの季節が巡る、と予測できるため、農耕や計画にとても便利です。
農耕文化の中で発展した暦とも言えるでしょう。
太陰暦:1ヶ月というリズム
昼も夜も空に浮かぶ月。
その満ち欠けのリズムに、私たちは今もなお、日々のうつろいを感じ取っています。
月の満ち欠けを基に作られた暦が「太陰暦」。
月の変化に合わせて1か月が決まります。潮の満ち引きと一致するのも特徴です。
ただし、朔望月(新月から次の新月まで)は約29.5日。これを12回繰り返すと354日になり、太陽暦の1年(約365日)とは11日ずれてしまいます。
年を重ねるごとに、季節とのずれが生じてしまうのです。
旧暦:太陰太陽暦について
旧暦とは、月の移ろいを基本としながら、季節感も考慮して調整された暦です。
太陰太陽暦とも呼ばれます。
日付が月の満ち欠けと一致しており、1日が新月、15日頃が満月になります。
この暦では、「中気(雨水・春分・穀雨・夏至など)」が含まれない月を「閏月」として追加し、暦を調整します。つまり、1年が13か月になる年もあるということです。
そのため月と季節が完全に一致するわけではなく、そのずれを補うために「二十四節気」が用いられました。
二十四節気と七十二候:季節と暮らす
「春分」「夏至」「秋分」「冬至」など、季節の節目を示すのが、「二十四節気」です。
もとは冬至から1年を等分して定められましたが、地球の公転軌道が楕円であることがわかり、現在は太陽の黄道上の位置(15度ずつ)を基準としています。ひとつの節気はおおよそ15日間です。
二十四節気は、季節の移り変わりを知らせ、農作業や行事の目安として今も活用されています。
二十四節気をさらに三等分し、約5日ごとの細やかな季節の変化を伝えるものが「七十二候」です。
「東風解凍(こちこおりをとく)」「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」など、自然の現象や動植物の様子が名前に表れています。
暮らしのなかに季節のリズムを感じるための知恵。
古い博物学の知識が色濃く残り、文化的な味わい深さがあります。
干支暦:四柱推命で使う「干支暦」について
十と十二。
異なるリズムが出会い、60という周期を生み出しました。
これが「干支暦」と呼ばれる、東洋の暦のかたちです。
十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)
十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)
これらを組み合わせた60種類の干支で、年・月・日・時刻を表します。
干支暦の特徴は、月の支が固定されており、季節感が安定していること。
月の切り替えが「節入り(二十四節気のうち節気)」によって決まる点も特徴です。
ここに太陽暦的な視点が見られます。
また、干支暦は、吉凶を占う文化的な側面を持ち、四柱推命などの東洋占術にも応用されています。
二十八宿:の隠れ家
月が天を一周する際、どこを通っているのかを知るために用いられたのが「二十八宿」。
とても古い時代からある知のひとつです。
これは月の通り道にそって並ぶ中国星座の名称で、天気、方位、その日の吉凶判断に使われました。
月の位置が基になっているのが特徴です。
さらに、二十八宿の運行が十二支の中に組み込まれているという研究もあり、干支における「蔵干」の理論などにも影響を与えている、という指摘もあります。
このあたりに、暦の中での月の影響が見られます。
自然を感じるための暦
暦は、天体の動きを観察する中で生まれました。
現代の私たちは、1年を1月から12月へとまっすぐに眺めます。
でも、暦とは、同じ時が戻ってくるというリズムを表したもの。
円環する時間の中で、陰と陽が交互に交代し、五行が巡り、変化し、変化しない日々がやってきます。
それは巡って整えるための暦。 自然の一部である自分に気づき、季節の中に身を置くしるしが暦です。