Step②「世界観を知る」概論
「天の法則を知る」ことは「人間の運命を知る」ことになる
Step②「世界観を知る」概論
「天の法則を知る」ことは「人間の運命を知る」ことになる
「天」とは周の時代から続く概念のひとつで、人間を超えた存在です。
だけど「天」とは、空のかなたにある神様ではありません。
それは、万物を貫く法則のこと。
宇宙が自然に回っているように、季節が循環して命が芽吹くように、
自然界のすべてが従っている、ゆるぎない“リズム”のようなものです。
この天の観念は、古代ユーラシアの遊牧民たちが天空を敬った信仰にさかのぼります。
彼らにとって天は、厳しくも恵みをもたらす、絶対的な存在でした。
やがて中国文明が農耕を基盤として発展するなかで、
「天は万物に宿る」という汎神論的な思想へと次第に変化していき、
世界を貫く法則そのものとして捉えられるようになります。
こうして、「天はすべてのものに宿っている」という世界観が生まれました。
人間も、動物も、植物も、石ころでさえ、天を内に秘めています。
私たちはすでに、自分の内に天を備えているのです。
この考えは、「天命(てんめい)」という思想につながります。
天が私たちにも宿る、ということは、
天は遠いところにいて見守っているわけではなくて、自分の内側に存在し自分を貫いているもの。
つまり、私たちは私たち自身に守られているのです。
天の視点から見れば、「自分にとって自然なかたちで生きること」が、もっとも天にかなった生き方となります。
言い換えれば、天命とは、遠くにある夢ではなくて、
現実のすぐそばにあって、自分がもともと持っている、そんな手が届くものでもあるのです。
これが「天の法則を知る」ことは「人間の運命を知ること」につながる、という理屈の基です。
四柱推命とは、まさにそうした天の思想の実践的な応用です。
自然の変化を観察し、その人の“自然なかたち”を読み解くことで、
天命に沿ったあり方を探る方法が作られてきました。
四柱推命は、
年・月・日・時――人が生まれた瞬間の時空間の情報をもとに、
「その人にとっての自然な生き方」とは何かを読み解く、そのような占いなのです。
この講座は、単に「運勢を当てる」技法だけを目標にはしていません。
四柱推命の技法を通して、この世界をどう見るか、人をどう理解するか、
つまり「占う」とは、世界のすべてものの関係を考えることだと思っています。
季節と木々がつながっているように、
言葉と気持ちがつながっているように、
あなたと世界のあいだにも、見えない関係があります。
この見えない関係はやがて、「天人感応説」という独特の思想を作りました。
これは、「天(=自然界の秩序)」と「人(=人間社会)」のあいだには目に見えないつながりがあり、
おたがいに影響を与え合っている、という考え方です。
たとえば、古代の人々は、地震や洪水といった天変地異を「天の怒り」ととらえました。
それは、為政者の徳が失われたサインであり、天が人間の過ちに“感応”して異常を起こしたのだ、
と信じられていたのです。
こうした思想はやがて、「災異説」として体系化され、
王朝交代の正統性や、政治への批判の根拠としても使われていきました。
天人感応の背景にあるのは、中国的な「類推の思考法」です。
これは、自然界の出来事や兆候と人間社会のあいだに
“似たもの同士のつながり”を見出そうとする、知のスタイルです。
「同類は相感し、同じ気は相動く」
同じ気は、同じく動くのです。
たとえば、中国的な「星読み」は、空に現れる星の配置と、地上の出来事が響き合うというもので、
「かんむり座(貫索星)の囲いの中に星が多く見えれば、囚人が増える前兆」
などといった解釈につながります。
あるいは突拍子もなく「鯨が死ぬと彗星が現れる」といったふうに、
人間界と自然界、あるいは、自然界と大宇宙は、つながっているものと、考えられていました。
自然の兆しを読み解くことは、人間の運命を読むことにつながる。
四柱推命などの占いが成立した背景には、こうした自然と人間を“同じ原理”で見るまなざしがあります。
やがて、天人感応の思想は「迷信」として批判されるようになります。
「天が災害を起こして人間を罰する」という考え方は、現実と相容れないからです。
しかし。それでもこの思想は、私たちの深層に根づいています。
たとえば今でも、「悪いことをすると罰があたる」と信じる気持ちは、
どこかで「天は、悪いことは許さず、報いのため災異を起こす」という感覚の名残かもしれません。
それが事実であるかどうかに関係なく、「そうであってほしい」と願ってしまう。
それほどまでに、この思想は人々の倫理観や世界観に影響を与えてきました。
四柱推命は、この「自然と人間が感応しあう」という世界観の延長にあります。
「気」の流れを読みとき、「天」と「私」の関係を見つめる技法とも言えます。
占いとは、予言や神秘の道具ではなく、
自然と人とのあいだにある、見えないつながりに目を向けるための思考の道具です。
四柱推命は、「世界と人とはつながっている」というまなざしの占いです。