受け取った「ポジティブシャワー」を、今度は次の誰かへ
受け取った「ポジティブシャワー」を、今度は次の誰かへ
株式会社おせっかいや 代表取締役
製菓学校を卒業後、飲食業などを経て商工会で起業支援に携わる。ベンチャーキャピタルでの起業家支援やパン店の事業再生を経験し、2021年にSparkleを立ち上げる。2025年、株式会社おせっかいやを設立。現在は、女性の起業・キャリア支援や飲食事業者へのコンサルティングに取り組む。JBIA認定シニア・インキュベーション・マネジャーの資格を保有。
「正社員になりたい」しか見えていなかった
私は21歳で結婚・出産し、専業主婦になりました。その後、子どもが幼い時期に離婚。子ども2人と家のローンを抱え、働いて生計を立てる必要がありました。
職歴がほとんどなく、幼い子どももいたため、仕事探しには苦労しました。派遣社員や正社員として働いたものの、心身の調子を崩し、仕事から離れた時期もあります。
その後、職業訓練でパソコンや簿記を学びました。ただ、当時考えていたのは、「何の仕事がしたいか」ではなく、「どうすれば正社員になれるか」ということだけでした。
自分にはどのような強みがあるのか。何をしているときに喜びを感じるのか。これからどう生きたいのか。そうしたことを考える余裕も、機会もなかったのです。
転機は、職業訓練で一緒に学んでいた人から、商工会の求人票をもらったことでした。
「こんなの、絶対に受からない」と言いながら応募したところ、思いがけず採用されました。
甲賀市商工会では、中小企業や起業家の支援に携わり、研修にも参加。仕事を通じて起業支援について学び、資格も取得するなど、支援者としての専門性を高めていきました。
それまでの私は、自分が生きていくことで精いっぱいでした。周囲に助けてもらってきた私が、初めて人を支える仕事に就いたのです。
起業する人は、大人になっても「これがしたい」と前を向いています。その事業をどうすれば形にできるのかを一緒に考えるうち、私自身も変わっていきました。
「起業家の皆さんから、ポジティブシャワーを浴びたんです」
人を応援することが、自分の喜びになる。起業支援の仕事に出会い、初めてそう気づきました。
その後は、声をかけていただいたことをきっかけに、ベンチャーキャピタルでの起業家支援やパン店の事業再生を経験しました。ただ、仕事や所属が変わっても、人を支えるという私の幹は変わっていません。
「私で役に立てるなら」と事業づくりに関わり、2021年にSparkleを立ち上げました。大きな志を掲げたというより、求められたことに応えていたら起業という形になった。それが私のスタートです。
コロナ禍だったため、最初はオンライン相談から始めました。話を聞くうちに、相談だけでなく横のつながりや実践の場も必要だと感じ、「COMACHI会」を立ち上げました。
昨年度は、COMACHI会からアクセラレーションプログラムに参加した4人が「LED関西」に挑戦。約620件の応募のなかから30人が選ばれるセミファイナリストに、2人が入りました。挑戦した4人全員が、自分の事業をこれまでより広い視点で捉えるようになりました。
起業支援は、種をまけばすぐに花が咲くものではありません。まずは土を耕し、育ちやすい環境をつくる。活動を始めて6年目の今、少しずつ芽が出てきた手応えを感じています。
女性の起業支援を続けるなかで思い出したのが、「正社員になること」ばかりを考えていた頃の自分でした。
子育てや家事を担いながら働こうとすると、仕事内容より、時間や勤務地などの条件を優先せざるを得ないことがあります。でも、その人に力がないわけではありません。本人も周囲も、持っている力に気づいていない。あるいは、発揮できる場所にまだ出会えていないだけなのだと思います。
そこで、女性が自分の喜びや望む生き方を見つめ、「働きたい」と前を向いた状態で地域企業と出会える機会をつくりたいと考えました。
ただ、既存の求人に女性を当てはめるだけでなく、企業にも、「この人が力を発揮するには、どのような仕事や働き方が合うだろう」と一緒に考えてもらう。女性だけに変化を求めず、企業や行政とともに、人と環境を育てる仕組みをつくりたいのです。
企業は人材不足に悩む一方、働きたい女性のなかには、まだ生かされていない力があります。私は、この国にはまだまだ宝が眠っていると考えています。
私は自由でいることが好きです。会社員を辞め、フリーランスになったときは、「やっと自由になれた」と感じました。そのため、法人化には、自分から自由を手放すような迷いがありました。
けれど、私一人でできることには限界があります。女性のキャリア支援をより多くの地域へ広げるため、2025年に株式会社おせっかいやを設立しました。
自分がしてきたことを一言で表すなら、「おせっかい」がぴったり。自分がしたくて誰かを応援する。そんな思いを込めた社名です。
目指しているのは、上から指示を出して人を動かす組織ではありません。一人ひとりが、それぞれの「おせっかい」や得意なことを持ち寄る「集合体」です。
自分だけがよくなることを考えるのではなく、みんながよくなるために何ができるかを考える。その姿勢が、巡り巡って自分にも返ってくると思っています。
同じ志を持つ仲間とつながり、それぞれの地域で誰かを支える。そんな集合体として、女性が自分の力を生かして働ける仕組みを、滋賀から全国へ届けていきたいです。
起業相談のほか、女性起業家が学び、つながり、実践できる場を運営しています。参加者が講師となり、次の挑戦者を支えるなど、学びが循環しているのも特徴です。女性が自分の強みや望む働き方を見つけ、地域企業で力を発揮できるよう、企業や行政と連携したキャリア支援にも取り組んでいます。飲食業で働く女性のキャリアアップにつながる仕組みづくりも構想中です。
製菓や飲食の現場、パン店の事業再生で培った経験をもとに、飲食店や食品関連事業者をサポートしています。店舗コンセプトや商品、業務の流れを整理し、売上改善や黒字化につながる仕組みを構築。京都のカフェでは、店舗の方向性やオペレーションを見直し、経営改善を後押ししました。