くまのみひろば栗東 代表
娘の待機児童を機に、自宅で託児付きネイルサロンを開設。サロンを訪れるママたちの悩みを聞く中で、保育士の経験を活かせるのではと思い立ち、2019年に一軒家を借りて「保育ルーム」を開設。現在、一時預かりのほか、月極保育や2歳児のプレ保育などを展開。2児の母。栗東市在住。
A.2019年6月に一軒家を借りて、保育ルーム「くまのみひろば栗東」を開設しました。最初は「一時預かり」が中心でしたが、今は「月極保育」にも取り組んでいます。年度途中から仕事を始めて預かり先が見つからない人や、第2子の産前産後の方が第1子を預けられるケースもあります。毎日のお弁当は大変なので週3回給食を提供しています。
そのほか、就園前の子どもを対象とした「2歳児プレ保育」があります。週1回1年間通い、トイレの練習や集団生活の経験、地域の方に畑を貸してもらって給食の材料となる野菜を育てたりしています。このほか、託児も利用できる「レンタルスペース」があります。地域の方から「空いているスペースがある」と声をかけていただき、栗東駅前で開設しました。起業を目指している女性がチャレンジに利用したり、ママ同士の交流に利用したりしています。
スタッフは、保育士のほか、看護師、調理師で合計10名です。看護師が季節ごとに発行している「保健だより」は、日々の子育てのちょっとした困りごとなどを解消できるようなアドバイスをしています。
A.はじまりは、都会の話だと思っていた待機児童問題に直面したことでした。3歳と1歳の子どもを育てながらやりたい仕事ができないか…と考え、保育士の友人に協力してもらって自宅で「託児付きネイルサロン」を始めました。施術をしながらママさんたちの話を聴き、「子育て」と「働く」を両立するための選択肢がなくて困っているのは私だけじゃない。みんなが困っていることと、私が困っていたことが同じだったことに気づきました。私も保育士資格があったので、「受け皿を広げることができないだろうか」とふっと思ったのがきっかけでした。
そこから1歳の娘を抱っこしながら不動産屋をまわり、とりあえず1年間頑張ってみようと一軒家を借りました。経営や雇用の勉強もせずに突っ走ってしまいましたが、今思うとその行動力があったからこそ現在に繋がっているのだと思います。
A.オープン当初は利用者がなく、チラシのポスティングをしましたが効果がありませんでした。そこで、まずは保育ルームを知ってもらおうと「無料開放日」を設け、親子で遊びに来てもらうことにしました。保育ルームの様子を見てもらったり、私たちの思いを伝えたりする中で少しずつ利用者が増え、市役所にも足を運ぶうちに、紹介してもらえるようになりました。
その他で苦労していることは、どうやってリーダーシップをとっていけばよいのか、自分の判断は正しいのかということにいつも迷っています。スタッフの働きやすい環境を整えていくことにも苦戦しています。誰かを雇用したことなどなかったので知らないことばかりで、何か起こるたびに悩んで乗り越えていくのは大変です。
今では10人のチームになりましたが、みんな子育て中のママです。男女平等といっても子どもが熱を出した時に対応するのは母親が多く、まだまだ子育てが女性に偏っています。子どもを預けるのは後ろめたいといった風潮、社会の期待、本人の偏った思い込みなどもあり、働く女性が抱える問題はまだまだ多いのが現実です。経営相談をしたり起業された先輩に相談したりしながら、少しずつ勉強してなんとか今日まできています。
A.普通に勤めていただけでは決して分からなかった「ひとのあたたかさ」「ひとのパワーの凄さ」「ひとや地域とのつながりの大切さ」を感じています。特に「プレ保育」の農業体験の畑や、栗東駅前のレンタルルームの提供など、地域のひとたちがこんなに助けてくださるのかと驚きの連続で、起業したからこそ感じることができた応援してくれる人への感謝の気持ちでいっぱいです。
また、保護者の方が、お礼のメッセージやお手紙を届けてくださったりすると、誰かの役に立てているという実感がわいてきます。中でも、保育ルームに通ってくれていた保護者の方が私の子どもに会ったとき、「あなたのお母さんにはすごく助けてもらったんだよ。「くまのみひろば」が無かったら、きっと私は二人目の子どもが生まれたときにやっていけてなかったから。お母さんはすごい人だね。」と話してくれたことが、今までで一番やりがいを感じた瞬間でした。新しい自分の力を発見できている気がします。
A.現在「くまのみひろば」は栗東駅の西口近くにありますが、手原駅方面にも同じように小さなお子さんを抱え、悩みを抱え、選択肢を持てないでいる人たちが多くいらっしゃいます。その人たちにも喜んでもらえるよう、第二の場所をつくりたいと考えています。
また、最近は「くまのみひろばのような場所をつくりたい」と考えている方から、どうやって開設したのか尋ねられることもあります。私の経験や知識を伝えていくことで、それぞれの地域のニーズに合った保育ルームづくりが進むお手伝いができるなら嬉しいです。
そして、「くまのみひろば」を支えてくれるチームメイトについて、子育てをしながら短時間勤務でもやりがいを感じられるような働き方、資格を持つ母親の選択肢をもっと広げられるようにしたいと考えています。
A.「開業届を出すかどうか」ということに迷っておられる方が多いですが、書類を提出するというハードルは実は意外と低いと思います。一方、「2年、3年と続けていくこと」は、想像しているより何倍も難しいと感じています。でも、これらハードルに直面するたびに新たな助っ人が出てきたり、仲間が増えたりします。実はこれが自分自身のパワーとなって、自分の価値が高められ、やりがいが大きくなります。大事なことは立ち止まらず続けていくこと、まずは目の前のできることに真摯に取り組んでいくことだと、私は考えています。
A.私は起業してから歴史(特に幕末から明治時代にかけて)に興味を持つようになったのですが、栗東市には歴史のある場所がたくさんあります。自然も豊かなので、休日は遠出をせず栗東市内で家族と一緒に過ごすことが増えてきました。
金勝寺や九品の滝など、静けさの中で昔のことを想像するとエネルギーがもらえるように感じるので、私のパワースポットになっています。
ありがとうございました。