選盤等について

※GiRLPOPとは何か? どのようなムーブメントだったのか? という点について、本サイトは説明を省略します。ここを見る人の大半はすでにご存知でしょうし、知らない場合もググればすぐに出てきます。筆者もこの分野については「後追い」であり、インターネットで手に入る情報以上のものを有していません。

選盤について(本サイトにおける「GiRLPOP」は、一般的に使用されている定義と若干異なります)

  • まず森高千里、谷村有美、永井真理子などGiRLPOP誌の中心アーティストが揃ってデビューし、森川美穂や小泉今日子などが揃って従来の路線から転向した87年を「GiRLPOP元年」と定める。
  • 次に宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、MISIA、椎名林檎などが一斉にデビューした98年を「ディーバ元年」とする。
  • GiRLPOP元年(87年)からディーバ元年の前年、97年までの10年間を「GiRLPOP期」と定め、この期間中にリリースされたアルバムを選盤対象とする。
  • 雑誌『GiRLPOP』では女性ソロ歌手以外にも、ガールズグループや男女混合バンド・ユニットの女性メンバー等が紙面に多数登場している。しかし本ページではあくまでも「ソロ」であることにこだわる(例:リンドバーグは取り上げないが、渡瀬マキのソロは選盤対象とする)。
  • これは《複数人の1人としてのデビューと、たったひとりの個人としてのデビューでは意味合いが違う》という筆者の主観、および《バンドものは「バンドもの」として、グループ・ユニットものは「グループ・ユニットもの」としてまとめた方が整理が良い》という筆者の主観による判断である。
  • ただし「メインの女性 + 他のメンバー」という構成が明白であるケース(例:上原さくら+東京ミュージック・サロン)については選盤対象とする。
  • GiRLPOP期にはアルバムをリリースせず、8cmシングルのみをリリースした女性歌手も多数存在する。しかし本サイトではシングルリリースについて、その一切を無視する。これはシングル盤にまで手を出すと際限がない、既に8cmCDについてディープなDIGを行っているサイトが存在する等の理由による。またベストアルバムについても基本的に評価の対象外とする。
  • 雑誌『GiRLPOP』の紙面に一度も登場したことがない歌手や、ガールと言うには(失礼ながら)疑問がある歌手についても、上記「GiRLPOP期」に1枚でもアルバムを出していれば選盤の対象とする。これはいちいちそのアーティストが「GiRLPOPであるか否か」を考えるのが面倒くさいからである。
※筆者としてはこうした選盤の正当性を主張するつもりはありません。あくまで「ディスクガイドを作る上で、何からの選盤限定がないと際限が無くてやってられない」というのが大きな理由です。広義のGiRLPOPとは別に、狭義の「後追いGiRLPOP」という概念を本サイトが捏造していると思っていただいて差し支えありません。

留意点について

  • 本サイトは「WEBディスクガイド」であり、レビューブログではない。 正直なところ筆者のレビューは「何曲目が良かった」ぐらいのポワワンとしたものであり、巷のレビューブログの方が分析・考察において何倍も優れている。 逆に本サイトが重視しているのは、ディスクガイドならではの「並べ方」……投稿日順に並んでしまうレビューブログでは表現しづらい、各盤同士がもつ磁場・磁力のような何かの表現である。
  • またディスクガイドらしくレビュー文字数・ジャケットサイズ等により、パッと見でアルバムの相対関係が分かるようにしている。 ただし1つ断っておくと、本ディスクガイドの大小関係は筆者から生み出された「レビュー文字数の多い少ない」に起因しており、必ずしも盤の良悪とイコールではない。 もちろん良い盤であればあるほど筆者も興奮し、より多くの語りたい言葉が引き出されるので、相関関係が無いわけではない。ただし盤によっては「良すぎてレビューが書きづらい」ということもあるのだ。
  • なお本サイトは「GiRLPOP文化史」のディスクガイドではない。あくまで「後追い」の立場から、今の耳でGiRLPOPを聴いてまとめたディスクガイドである。 そのため当時のネームバリューや文化的重要性、コマーシャル等も含めたインパクトの有無などは、評価する上で考慮していない(というより、その時代を生きていないので筆者には評価できない。レビューの中で「当時〜だった〜」とある部分は、全てネットからの受け売り情報である。GiRLPOP史のディスクガイドは、当時をリアルタイムで生きた人々が作成すべきだろう)。
  • また本サイトは「レア盤・無名盤」のディスクガイドでもない。定番モノからネット上に言及のない盤まで、できる限りフラットに評価するつもりである。GiRLPOPにも中古市場で高騰している盤は存在するが、そうしたものを実際に聴いてみると良し悪しは(当然ながら)玉石混交である。 同様にブックオフ280円コーナーで必ず見かける有名?盤にも、今の自分に響くもの・響かないものがある。
  • 選盤においては「アルバムとしての完成度」を評価の軸とする。GiRLPOPではしばしば「アルバムで1曲だけ良い曲がある」というケースに遭遇するが、よほどその楽曲に強度がない限り本サイトでは取り上げない。
  • また評価は人物単位ではなくアルバム単位に行う。GiRLPOPではアルバムごとに作風・クオリティが異なる歌手が多く、奇跡的に1枚だけ凄く良い(あとの数枚は微妙)というケースにしばしば遭遇する。逆に毎回平均点は超えるのだが、飛び抜けて良いアルバムがない歌手もいる。本サイトはあくまでアルバムを評価しており、その歌手のキャリア全てを評価しているわけではない。
  • 本サイトは評価基準として「リスナーである筆者の心がどれくらい動いたか」を重視する。これは「客観的なクオリティの高さ」と「主観的な心の動き」が、時として異なることを意味する。本サイトはあくまで「私が好きな盤」のディスクガイドであるに過ぎない(だからこそ自信を持ってオススメできるのだが)。
  • 自己分析によると筆者は「詞と曲にインパクトがあるか」を重視する傾向にある。もちろん編曲や演奏(歌唱)も重要だが、それは詞曲が良くて初めて耳に残るものであり、それ単体での評価は得意ではない。
  • また短期間に2000枚のアルバムを聴く必要があったため、正直なところ1枚1枚のアルバムをじっくり聴いているわけではない。故に耳に残るか否かは「個性的か」が重要であり、職業作家の職人的な(噛めば噛むほど味が出るタイプの)楽曲を正確に評価している自信はない。
  • 本サイトを見て「GiRLPOPは名盤の宝庫」と勘違いされても困るので、念のため確認すると「GiRLPOPは駄盤の宝庫」である。もちろん、どんなジャンルにおいても駄盤と名盤は存在する。しかし、例えばプログレであれば「その音楽がプログレである」という理由だけで、レゲエであれば「レゲエである」という理由だけで、ある程度の肯定的な解釈が可能である。
  • 音楽が「ジャンル」としてまとまるということは、少なからず共有されている「マナー」が存在するということである。 そのマナーを守っている限り、そのジャンル内では相対的に低めの評価だったとしても、結果として肯定的に捉えられる……というケースは少なくない。TR-808が鳴っている、ギターがヘヴィに歪んでいる、リズム隊がファンクである、シンセがピコピコしている、ブルーノートである……それだけで他のジャンルの音楽よりも「特別」に扱えるという体験を、多くのリスナーがしているはずだ。
  • しかしGiRLPOPは「同じ雑誌に載っていた」「同じ時期にCDを出していた」というだけのマナーでまとめられたジャンルである。たしかに時代性や理想とされた女性像など、GiRLPOPマナーと呼べるものも多少は存在するが……そのマナーを守っているというだけで、その音楽を特別に高く評価できるようなものではない(と筆者は考えている)。
  • 例えばロック・シティポップ・トレンディ・ブラコン・ヴェイパーウェーブ・ビーイング・90年代っぽさ等……GiRLPOP期に存在した他のマナーに着目したならば、本サイトとは全く異なったディスクガイドができることだろう。しかし本サイトの切り口は「GiRLPOPであるか否か」のみであり、それ以外のモノサシ・度数を当てはめて楽曲を評価することは意図的にしていない。
  • 言うまでもないことだが、集合「GiRLPOP」は、集合「J-POP」の部分集合である。「GiRLPOP」とは星の数ほどあるJPOPの中から、特定の消費を生み出すためにソニー・マガジンズによって作り出された概念にすぎない。そういう意味で、筆者は別に「GiRLPOP」というジャンルが好きなのではない。 「GiRLPOPに分類される」という理由だけで、その音楽を特別に扱えるわけではない。だからこそ「GiRLPOPは駄盤の宝庫」と、ハッキリと宣言することができる。だからこそ、その何十枚の中に1枚だけ潜んでいる奇跡のようなキラメキを愛している。