2023年6月21日開始、同8月15日改定、2024年1月2日、同4月19日改定
せのお たかのり
1.はじめに
光には重さが無いので慣性の法則に従わず、動いている地球上でもその速度(30万km/s)は変わりません。しかし地球が動くと光の光路長が変化するので、地上に固定された距離Lを進む光の到達時間は変化します。光の速度Cは非常に速いので、例えばL=1m向こうの鏡までの到達間は非常に短く(3.3ns程度)、地球の動きが遅ければそれによる光の到達時間の変化はほとんど計測出来ません。例えば地球の公転速度(V=約30km/s)は光速の約1万分の1なので、光の到達時間の差は0.33ps程度です。
1-1.失敗したMichelsonの実験
1881年米国のMichelsonは、光の波長は非常に短いので(0.5μm程度)光が作る干渉縞を使えば、地球の動き方向と直角方向の光の反射時間の差を、1つの光をハーフミラーで2つに分けた光が作る干渉縞の位置の変化として観測出来ると考え、有名なMichelson-Morleyの実験を行いました。干渉縞は、この様にして作った2つの光が波長毎に位相が合う所で互いに強め合い、180°位相が異なる所で弱めあうので縞になり、この2つの光が交わる角度が小さい程縞間隔は大きくなるので、波長レベルの微小な差を肉眼で見る事が出来るものです。この実験では、地球の公転方向に対して直角方向の光が反射して戻って来るまでの時間T(sec)は、鏡までの距離L(m)x2を光速C(m/s)で割った時間T=2L/C (sec)になると予想したのに対し、地球の公転方向に進む光は、鏡に到達するまでに鏡が少し遠ざかるのでT1=L/(C-V)(sec)かかり、そこから反射して戻って来るまでにハーフミラーが少し近づくのでT2=L/(C+V)(sec)掛かり、合計T1+T2=(2L/C)/(1-(V/C)2) (sec)掛かるはずででした。この値はT=2L/C(sec)より少し大きく、その差ΔTは約Tx(V/C)2=7x10-17(sec)です。この間に光はCxΔT=21(nm)=緑の光の波長500(nm)の約1/25進みます。最初に片方の光を地球の公転方向に向けて干渉縞の位置を測り(例えば夏至の日の午前12時に東西方向に向ける)、次に装置を90°回転すると2つの光が入れ替わると共に成す角度が逆になるので縞の位置は上記の2倍変化しますから、両者の位置の差が光の到達時間の差の2倍になる筈でしたが、観測された光の到達時間の差は縞間隔の約1/50でした。その後彼はこの予測値1/25が間違いで、正しくは地球の動きと直角方向の光の方向を地球が動いた分だけ斜めにする必要があり、その到達時間はT=(2L/C)/√(1-(V/C)2)であり、(T1+T2)との時間比は(T1+T2)/T=1/√(1-(V/C)2)となり、時間差の予測値はΔT=Tx(V/C)2/2=1/50で観測結果は正しかった事に気付きましたが、誤差と見分けの付かない量だったので、1887年に光を何度も折り返す事で光路長を10倍長くして再度実験を行い干渉縞間隔の1/2.5の縞移動を期待しましたが観測結果は1/100以下でした。更に何人かの科学者が同様の実験を行いましたが、いずれも測定誤差程度の結果しか得られませんでした。
Michelsonの実験結果: ΔT = 0 すなわち, (T1+T2) = (T3+T4)
1-2.相対性理論の大前提
これらの観測結果から「光の到達時間は運動方向とその直角方向で同じである」と信じられ、これを説明する為に1895年「すべての物体は運動方向に縮む」と言うLorentzの収縮仮説や、1905年「絶対時間は存在せず運動する観測系の相対時間の進み方は遅くなる」と言うEinsteinの特殊相対性理論が出現しました。彼はその後この理論を「重力も時間を遅らせ空間も縮ませるので光も曲がる」と言う一般相対性理論に拡張しました。これらの理論値は微小過ぎて 実験では確認出来ませんが、数学的には誤りが無いので現在まで真実として信じられています。
Lorentzの短縮仮説: すべての物体は運動方向に縮む
Einsteinの相対性理論: 絶対時間は存在せず、運動する観測系の相対時間は遅くなる
1-3.Michelsonの実験の真実
しかしここで注意したいのは、Michelsonの2回目の実験にも問題があった事です。干渉縞が出来る為には2つの光の波面は交差している必要がありますが、2つの光を元来た光路に重ねて何度も反射させた為、光路長が長くなって平面波に近くなると共に波面が互いに平行になった為干渉縞が出来ませんでした。更にこの光を直接望遠鏡で観察した為、望遠鏡の中の接眼レンズとマイクロメータで縞位置を計測する為に接眼レンズ近くに置いた十字の付いたガラス板との間で生じた反射光と入射光が干渉して作ったNewtonリングを地球の動きで出来た干渉縞と勘違いして観測したものと思われます。この短い光路長差で出来た干渉縞であればほとんど動かないので、方向や時間を変えても又より大きな太陽系の運動にも影響されず測定値がほぼ誤差範囲になった事も説明出来ます。
従って、Michelsonとその後の一連の実験結果は単に「実験が正しく行われなかった」事を示しているだけで、「光の到達時間に差は無い」と言う証拠にはなっていません。この間違った大前提に基づいた相対性理論は、同様に証明されずに「神が地球を中心に宇宙を作った」と信じて作られた天動説と同じではないでしょうか。
Michelsonの実験の真実: 実験が正しく行われなかった
1-4.今なら出来る確認方法
今ではシングルモードのレーザーで安定な干渉縞を作れますから、正しく実験を行えば非常に小さな値ですが「光の到達時間に差は有る」事が確認出来ると思います。元々この実験は地球の公転速度V(m/s)が光の伝達時間T(sec)に与える影響(V/C=10-4)を調べれば良かったものを、光の往復時間の差T*(V/C)2=7*10-17(sec)を計測する事にした為に104倍困難な実験になり、間違った実験結果を説明する為に数学的には誤りのない理論が作られてしまいました。この光速と地球の公転速度の比(V/C=10-4)は、パルス光と高分解能なオシロスコープを使って反射鏡の位置に置いた光センサに光が届く時間を、地球の運動方向に測った場合の値 L/(C-V)(sec)と、直角方向に測った場合の値 L/C(sec)を比較すれば容易に求められると思います。現在入手可能なオシロスコープの分解能は約10GHz(100ps)ですから、L=300mのタンカー上で船の向きを90°変えながら計測すれば、光の到達時間の差(100ps)を10倍に拡大した画面上で確認出来ると思います。又船の向きを180°変えれば時間差は2倍になり観測し易くなります。(ここで注意したい事は、地球の動きには自転と公転だけではなく、より大きな太陽系や銀河系の動きも含まれる為、これらを合成した正しい方向に船を向ける必要があります。)しかし、当時はこれらの装置が未だ無く、光の干渉縞に関する理解も進んでいなかった為に、誰もその誤りに気付かなかったのは仕方がなかったのかも知れません。
正しい実験: 高速オシロで光の到達時間の差を測る