袋触魚(Saccurmis)
袋触魚(Saccurmis)
水中環境に適応した幻妄動物の一種。
一見魚のように見えるが鱗はなく、鰓もない。かといって水棲哺乳類のような尾鰭を持つわけでもない。眼球には瞼が被さっており、これもまた魚の特徴から逸脱している。さらに背部に生えた三本の棘がこの生体が尋常のソレとは異なっていることを示している。
口と見られる袋状の器官からは触手が七本伸びており、これで獲物を絡めとって捕食する。また袋状の口部はそのまま消化器官の役割を果たしているようで、捕獲した獲物を口内に入れた後閉じ、内部を消化液で満たして消化吸収する。
驚くべきことに、この生体は電磁推進によって移動する。背部に生えた三本の棘で磁界を歪めて、反発力で推進するのである。これを可能にしているのは、腹内部に格納されているゲル状の組織である。ゲル組織は蓄電池の役割を果たしており、ここに蓄えられた電気によって磁界を歪めるのだ。腹部が異常に膨らんでいるのはこのゲル組織を大量に抱えているからであり、その他内蔵の占める割合は少ない。
この生体に鰭が尾鰭しかないのはその推進力や姿勢バランスを磁場に頼り切っているためであり、尾びれは補助的な舵板程度の役割しか持っていないと考えられている。