Macの64ビットOSに対応した量子化学計算プログラムGAMESSはフリーウェアとして入手可能であり，GUI (GAMESSQ)で実行可能である（関連記事）．しかし，計算結果をフリーウェアで可視化するためにはそれなりの約束事を知る必要がある．以下はその備忘録である．

Avogadroの場合

AvogadroでGAMESSの入力データを作成し，構造最適化した結果を表示させるには，出力ファイル（file_name.log）をそのまま呼び込めばよいが，軌道を表示させにはいろいろ設定する必要がある．私のPC環境（Mac mini，Catalina）では，表示される分子の背景色は黒色である．AvogadroのViewメニューからSet Background Colorを選択し，まず背景を無色に変更した．

そのままサーフェスを選択し軌道を表示させると，これもまた黒色表示され正負が判別できないので， 軌道を表示させる前に軌道の正負の色を指定する必要がある．そのためにはサーフェスの右端に表示されているスパナ？型のマークをクリックして設定画面を出す必要がある．

軌道を表示させようとしても軌道メニューが存在しない場合は，WindowのToolbarsの中の軌道を選択する．

以下はライン表示によるエチレンのフロンティア軌道である．

軌道のライン表示を塗りつぶしや点に変更すると以下のようになる．

各項目の設定値は保存されないので，その都度設定を実行する必要がある．なお，最新版のAvogadroは各種量子化学計算用Inputデータの作成および計算結果の可視化を主目的にしていて，以前のようにジョブの投入は実行できなくなっている．

wxMacMolPltの場合

また，64bit環境のOSにおいて，wxMacMolPlt（フリーソフト）を利用しても同様の軌道表示が可能である．

静電ポテンシアルを表示（ホルムアルデヒド）

振動計算結果の表示（ホルムアルデヒド）

最適化構造についてRUNTYP=HESSIANを指定してGAMESS計算を実行し，その出力ファイルを読み込み，SubwindowのFrequenciesを選択する

MacMolPltでは初期画面の大きさは設定可能であり，設定値は記憶される．

高価なWinmostarのような統合ソフトなみの機能と同等なことは実現できないが，フリーウェアだけでそれに近い結果を得ることは可能と考えられる．

追記（参考資料）

１）MacMolPltを使ってみよう - PC CHEM BASICS.COM

２）「計算機を用いた薬科学総合実習」（明治薬科大学，杉原 稔著）

PDFファイル中， ３頁４行目の「ホーム画面で、FileOpen で出力ファイ ル(GAMESS の出力ファイル h2o.log)を読み込み、 SubwindowSurfaces で画面が開いたら、Surface Type として Generate 3D from File を選択する」の 赤字の部分は3D Orbitalと考えられる．プログラムではGeneral 3D from Fileと記述されている（wxMacMolPlt のv7.7およびv7.7.2で確認）．

［関連ブログ］

GAMESS計算（2020年版， 64bitMac OS, アイオワ大学）（2022,年）

64ビットMacOSのMOPAC計算 （Stewart, オープンアクセス， GUI）（2022年）

Marvin Sketchの3D化機能（回転異性体， 置換基回転， 連携）（2021年）

NMRの化学シフトを非経験的MOで予測 （分子計算, PC版）（2012年）

Windows7 (64-Bit)でGAMESS並列処理（IT, 分子計算）（2012年）

Avogadroを使ってPM6計算を実行 (Intel Mac) （分子計算，IT）｛2011年）

フリーウエアで非経験的分子軌道計算を実行（分子計算，IT）｛2011年）

パソコンの環境

• Mac mini (macOS Catalina, v 10.15.7 Intel Core i5, RAM 16GB)

• Avogadro v 1.2.0

• MacMolPlt v7.7.2

(2022.12.20)