2021  浜松学芸高等学校芸術科

美術コース・書道コース作品展

 ~満開なり~

書道コース

秋山 花林  ~ Karin Akiyama ~

袁桷詩


この詩は「秋の水面で絵のように美しい情景」を述べ たものです。左右のバランスを合わせるために全体構 成を意識しました。平面的な線にならないように、深 く押し込む線に加え、かすれも効果的に配置し、立体 的な書を目指しました。全体的に墨をたっぷり含ませ、若々しさを感じられる作品になったと思います。

臨 楊峴臨古四種巻


この書の特徴である独特の波磔表現に魅力を感じ約一年半臨書をしてきました。横の中心線、筆の毛先と紙との摩擦、余白の美を意識し、紙に刻み込むようにじっくりと時間をかけ仕上げました。線の微動によって生み出せれるこの作品、枯れた渋るような線に派手さはありませんが、人を引き寄せるような楊峴の魅力を引き出せたと思います。

継色紙


書式と紙面構成が絶妙なバランスで散らし書きされて いる作品です。じっくりとしていて力強い運筆、行の 間隔や傾き、墨継ぎの箇所を大切にしつつ、息の長い 仮名らしい線質を追求しました。線の太細と墨の潤渇、文字の配置から見て取れる細やかな工夫に注目しながら、優美に感じる洗練された仮名の美しさにこだわりました。

良寛の歌


これらは秋の歌で全てに月が入っています。月の表現(形や筆使い)が被らないよう工夫を凝らしました。私がこの作品で一番注目して欲しいところは作品全体のまとまりです。右から左に向かうにつれてふわっと広がっていくように余白をどのように残すかを考え、三枚が調和している魅力的な作品に仕上げました。

檐明

檐はひさし・のきのこと、簷明とは目の前が明るくな ったことを意味します。柔らかな羊毛筆とかたい兼毫 筆の二本を使って書くことで表現の工夫をし、運筆のスピードや筆の入り方で変化を求めました。立って体 全体を使って筆を動かし、感情や若さがみなぎるように書き上げました。

杜甫詩


今までは中国清朝末期の篆刻家である徐三庚の刻風を活かした作品を意識してきましたが、今回は思い切って今までとは違う作風に挑戦しました。これは金文という象形文字のような可愛らしいところが特徴です。見る人にも楽しんでもらうためデザイン性を大切にし、何度も草稿を練り直し、可愛らしい調和の取れた一つの作品となるよう細部までこだわりました。

脚下照顧


脚下照顧とは理屈を言う前に、まず自分の足元を見て自分のことをよく反省すべきであるという意味です。篆書の中でも金文で動きのある作品にしたかったので、かすれを大切にし、慎重に刻しました。

鶴亀


鶴亀は、鶴は千年、亀は万年と言われるように、祝儀などに用いられます。今まで臨書で学んできた中国清代の書家、楊峴の書を踏まえつつ、語句の意味と調和するように書き上げました。どのようにしたら筆の動きを再現できるか、工夫しながら刻しました。金箔を貼ることで華やかになり、縁起の良い語句の雰囲気に合った作品に仕上げることができました。

阿部 南萌  ~ Minamo Abe ~

臨 石台孝経


一貫して、文字を扁平な形にすることと、肉厚な波磔の用筆を意識しました。正方形のマスに文字を書いていくと、どうしても文字も縦長に伸びてしまいます。そのため、点画を緊密に配し、扁平に書くことを心がけました。また、縦の行と横の行、それぞれの中心を揃える事を意識し、銀泥墨で華やかな作品に仕上げました。

臨 小島切


私は小島切を約2年間、自分が追求する名筆として書き続けてきました。筆の開閉がとても魅力的で伸びやかさと明るさのある作品なので、1本の筆でふり幅のある表現が出来るように時間をかけてゆっくり書いています。書道コースに在籍している私の集大成の作品であり、思い入れ深い作品になりました。

残夢寒衿月孤灯夜枕風


この作品は二メートル以上もあります。紺の彩色は塗ってから布で擦り、デニム生地のような質感を持たせました。また、この言葉の時間軸に合わせて夜の雰囲気が出るように、紺と金箔で夜空に月が出ているようなイメージで制作しました。

杜甫詩


この詩は、友について書かれています。友との別れを惜しみ、また会いたい気持ちで一杯の杜甫と私の心情を重ね合わせ、この詩を選びました。不得意な行草体を選択し、苦手意識がなくなるように、流れるような柔らかい動きと線質を意識しました。墨にもこだわり、思い通りの滲みが出るように何度も試行錯誤を重ねました。

金槐和歌集より


この作品制作のために和歌を選んでいた時、気になった歌は源実朝の金槐和歌集のものばかりでした。そこで私の好きな春の歌を二首選び、臨書で学んだ重之集の書風で書き上げました。広い紙面の上に春が来たと感じることが出来るように、文字群を小さな塊に分けて花が咲いたような構成にしました。

王漁洋詩


縦と横を揃え、正方形の文字を狂うことなく置くように配置することを意識しました。隣同士の文字の画数の差が、気にならないように調整しながら作品を制作しました。一枚書き上げるのに時間がかかりますが、枚数をこなすようにし、納得できるまで何枚も書きました。私の中でとても気に入っている作品です。

陸游詩


十二文字を一文字ずつ、枠に収めました。画数が多い文字と少ない文字との調和が難しく、草稿の段階から苦労の連続でした。また、全体を通じての線の関係性や左右対称を意識して制作し、目指していた理想の作品に仕上げることができました。

王蒙詩


木の持つ暖かみを生かし、濃い色は使わずに柿渋と胡粉を用いた作品にしました。この言葉は、晴れた日の木々は遥かに青山を浮かび出し、春の川は明け方に白雲をうつして流れるという意味です。爽やかで綺麗なこの言葉に、漢字臨書で取り組んでいる石台孝経の書風を取り入れて制作しました。

大石 亜弥佳  ~ Amika Oishi ~

臨 擬山園拝竹亭子旧作


王鐸が明の時代に書いた作品です。初めてこの作品を目にした時の鮮やかさに惹かれ臨書しました。実際に臨書をしてみると、王鐸の特徴である連綿の躍動感・筆圧や渇筆など多彩な技法など、とても難しく苦労しましたが、時間をかけじっくりと臨書しました。王鐸の雰囲気に近づけたと思います。

臨 小島切


私が小島切を臨書し始めたのは二年の秋でした。仮名に興味があったのですが、私にかけるだろうかと悩んでいた時、先生に背中を押して頂き勧めて頂いた古典です。行間が少しでも違うと全く印象が変わってしまう点に気をつけ余白の美を再現しました。繊細なだけでなく、鋭い折り返しやおおらかな線など、一つ一つの行に盛り込まれた筆者の手法が私の臨書を通しても伝われば幸いです。

渋沢栄一論語講義


余白の美を損なわないように、筆を押さえつけず穂先を使い、軽快な線になるように滲みすぎに細心の注意を払いました。また、筆の入れ方を少しずつ変えて単調にならないようにし、掠れを入れることで呼吸に動きを出すことができました。息苦しい生活が続きますが、心から楽しいと思えるものを諦めないで追求したいという思いを込めて書き上げました。

春夏秋冬


松尾芭蕉の春夏秋冬の句をそれぞれ情景に合うように、更に四句の統一感がでるような構成を考え、春の桜から冬の花に例えた白波の様子までを流れるように表現しました。書く時は、隣同士の紙で流れが途切かれすないように墨の濃さを統一させると共に墨継ぎや掠れの場所を何度も調整しました。松尾芭蕉の見たそれぞれの季節の景色が浮かぶ作品に仕上がったと思います。

秋夜寄邱員外


「秋の夜は君を思うこと特に身にしみるが、君もまた眠りにつかないで私を思っているだろう」という意味から、離れて暮らす姉が思い浮かび選びました。刻風は収筆が尖り緩やかな線が特徴的な呉譲之の書風にすることにより、芯の強さを表現しました。また、封泥のような印にしたかったので、雅味の位置を考えて入れました。文字は鋭くキレ味があり、明るく優しい雰囲気に仕上げることが出来ました。

朴志晟の言葉


「私の人生の中で最も若い日がまさに今日だ」という意味です。過ぎ去った記憶を今になってもう一度思い返すと、この言葉が私の心にどれ程刺さるか分かりません。「もう昨日には戻れないのだから、今日を浪費しない」という強い決意を表現するため、書風は牛橛造像記にし、金箔を使用しました。これからも今日が自分の残りの人生の中で最も若い日だということを肝に命じていたいです。

王漁洋詩


この詩は襟に紅い模様のある二羽の燕が大波を軽快に切って進んで行く情景を歌ったものです。今回は隷書の作品に挑戦したのですが、書き慣れていないため、最初は硬く重い線になってしまい、どのようにしたら柔らかい線になるのかが課題でした。しかし、枚数を重ねていくうちに、筆の穂先を効かせ、正しい運筆の方法を理解することが出来ました。爽やかさが感じられる作品に仕上げることが出来ました。

大石 くるみ  ~ Kurumi Oishi ~

臨 多宝塔碑


一点一画をおろそかにせずに書かれている多宝塔碑の魅力に惹き付けられ、これまで書き込んできました。一画の中の線の太細やはね方、起筆と収筆など、細かい所まで忠実に再現することを意識しました。全体的にまとまりのある作品に仕上げることができたと思います。

李嶠詩


自分の好きな行草で大きな作品を書きたいと前々から思っていたので、二尺八尺という大きさの紙三枚、三聯という作品に挑戦しました。好きな書体ではあるものの、線の変化や動きをつけることや文字同士、行ごとの関係など、考えることがたくさんあり、最初は中々思うように書けず苦労しました。三枚で一つの作品なので統一感がでるように意識しました。

臨 山家心中集


文字が大きくなりすぎないようにし、カスレを入れることで余白の美しさを際立たせることを意識しました。更に、キリッとした芯のある線を表現できるよう、墨量を調節し、書くスピードを変化させながら書くようにしました。仮名に対して苦手意識がありましたが、何度も練習を重ね、自分の納得のいく作品に仕上げることが出来たと思います。

紀貫之恋歌


線質は臨書を活かして、キリッとした芯のある線をベースにしました。様々な形の紙に書くことにより作品全に変化が出るようにしました。墨継ぎの位置にも注意して書くことを心がけました。臨書とは違って、自分で和歌を選び、検字し、構成を考えていくのはとても時間がかかりましたが、自分で作品を作る楽しさを覚えました。

舎近謀遠者労而無功


舎近謀遠者労而無功は遠くをのみ望んで足元を忘れてはならぬという意味の語句です。線を太くし、余白を広くすること、功の下を削り取り、朱の面積を極端に減らすように意識しました。押印する際は朱と白のコントラストがハッキリするよう、朱が薄くならないように心がけました。

エマーソンの言葉より


普段はやらないような、可愛らしい雰囲気の作品に仕上げようと思い、長鋒という毛の長い筆を使って書いたのですが、中々自分の思うように筆を動かすことが出来ず、長鋒に慣れるまで時間がかかりました。作品は、カスレを入れメリハリをつけること、リズムよく書いていくことに苦労しましたが、納得のいく作品が書けたと思います。

長楽万年

長楽万年は楽しいことの久しく限りないことという意味の語句です。大きな板に四文字で迫力のある作品にすることをめざしました。作品に勢いが表れるように大きなノミを使い、大胆に刻しながらも、細部にもこだわりました。ノミの跡を残してはつることが出来たと思います。周りをオイルステインで暗くし、金箔を貼り文字を目立たせました。

   中村春治郎先生の言葉

この言葉はこの学校の二代目校長の中村春治郎先生の言葉です。得意な行書で堂々と書くようにしました。文字数があまり多くないので、一文字一文字を大切にして書きました。行間をしっかり空けて、行を真っ直ぐにすることを意識しました。

櫻井 結羽  ~ Yu Sakurai ~

臨 賢愚経


一字一字の文字の密度を高め、堂々とした線質で、力強く見えるように書くことを目標に臨書してきました。私はこの古典に粘り強く、力強い、どっしりとしているという印象を受けているので、起筆や収筆、特にはらいを意識しました。

万世福


この言葉には「いつの世までもつきない幸福」という意味があります。この先の未来は何があるか分からないけれど、いつまで経っても幸せでいることが出来たらいいと思い、この言葉を刻しました。このような意味を踏まえて、年々色が変化し経年変化を楽しむことが出来る柿渋を使いました。

八木重吉の詩


この作品は竹の筆を使って書きました。竹の筆という使い慣れてい筆を使って書くことに苦労しましたが、竹の筆だからこそ表現出来るという魅力があり、普段使う筆とはまた違った雰囲気を出すことができたと思います。また、この八木重吉の詩のイメージを表現できるように紙や全体構成にも工夫しました。

陶淵明詩


この作品はあえて極端に文字の大小を入れず、余白の美が生きるような構成にしました。上と下で行の位置が合うように書くこと、行頭と行脚が全て揃うようにすることを意識したり、かすれの部分を大切にして取り組みました。全体的に統一感のある作品にすることにとても苦労しました。

臨 元永本古今和歌集


色々な模様の美しい料紙に繊細な線で書かれていて、仮名の美しさがとても感じられるこの古典を、しっかり表現出来るように心がけました。行頭や行脚、行間のバランスをしっかり学び、仮名と漢字の部分が調和するように工夫したり、リズミカルに書くようにしました。初めは難しく感じていましたが、枚数を重ねていくうちに、成長していくのを感じ、とても楽しんで書くことができました。

楽静多高致


この言葉は、幽静を楽しむことを知れば、高尚な趣を得るという意味があります。「楽」という文字を使い、五文字でこの構成にしたいとイメージが膨らんでいたため、この言葉を刻しました。インパクトがあり奇抜でありながら、上品な作品にすることが出来たと思います。特に雅味にこだわって刻しました。

種田山頭火の句


種田山頭火の俳句、十五句書いたものです。伸び伸びとした線で表現できるようにしました。十五枚それぞれ異なった構成にしたので、全体感にまとまりが出るように、十五枚の配置をよく考え、自分のイメージした作品にすることが出来ました。漢字と平仮名の部分が響き合うように意識して取り組みました。

篠﨑 加奈  ~Kana Shinozaki ~

李白詩


篆書をあまり書いたことがなく、慣れるまで大変でした。線が弱々しくなってしまったり、縦横の文字を揃えたりするのが難しく、なかなか作品になりませんでした。漢字の創作は難しく自分のイメージになかなか近づかなかったり、本当にできるのか不安でしたが、書いていくうちに少しずつまとまってきて、自分のイメージ通りになったので良かったです。

臨 曼殊院本古今和歌集


私は曼殊院本古今和歌集を約二年間臨書してきました。伸びやかな線と潤筆の部分が魅力的な作品です。伸びやかな線になるようリズム良く書けるように工夫しました。潤筆の部分は墨が多く書きずらく、苦戦しました。また、行間や行頭を揃えたりして臨書作品らしくなるようにしました。

随処楽


「随処楽」はいつでもどこにいても今を楽しむという言葉です。私はやりたくない事があっても楽しみながらやれば、やりたくないという気持ちがなくなると思っています。その気持ちを表しているのが「随処楽」という言葉なので刻しました。この言葉に合うよう、「楽」という字を少し舞っているイメージで刻しました。少しでも楽しい雰囲気を感じてもらえれば嬉しいです。

竹取物語


三尺八尺という大きな作品に挑戦しました。仮名の創作は思っていた以上に難しく、授業などで学んだことを活かしながら草稿を作ったので、時間がかかりました。なかなか終わらず先生にサイズ小さくした方がいいと提案されましたが、挑戦したいという気持ちが強く頑張って書きました。三色の色紙を使い明るい作品に仕上げました。

臨 出師表


私は今まで篆書をやってみたいと思っていたので、この古典に挑戦することにしました。篆書は自分が思っているよりも難しく、特にこの古典は正方形に近い篆書で、筆使いも難しかったです。私は特に画数の多い字が苦手で、バランスが上手く取れなく苦労しましたが、漢字創作と並行して書き進めて行くうちに、満足のいく作品になりました。

石鼎の句


私は主に仮名を中心として書いてきたので、その経験を活かし、仮名風の漢字仮名交じりにしようと思いました。作品を制作する時、特に潤渇を意識して書きました。文字数が少ない分まとまりのある作品になるよう意識しました。

寿山福海


寿山福海は長寿と多福を祝う言葉です。特徴のある作品に仕上げました。寿・山・福の雰囲気と海の雰囲気が最初あまり合わなくて苦戦しましたが、海という字を偏と旁を横並びではなく、上下にずらすことにょり、雰囲気を合わせることが出来ました。鋭い線になるように工夫しながら刻しました。

須藤 愛帆  ~ Manaho Suto ~

谷郁雄の詩祝福より


この詩の意味と合うように、文字を爽やかな印象にすることを意識しました。また、かすれの部分が潰れてしまわないように細かいところに注意を払い制作しました。一つの作品の中で、陰刻部分と陽刻部分を分けることによって、メリハリのある作品になるようにしました。落ち着いた色で、暖かみのある作品を目指して制作しました。

立原道造の詩「夢見たものは…」


ひらがなの多いところと少ないところ、一字一字の大きさとで雰囲気に差が出ないよう、全体的なバランスを意識しました。文字にリズムがなく、平面的になってしまう所が課題でした。文字の動きを表現するために、運筆に遅速緩急をつけることを意識し、枚数をこなし手に覚えさせるように考えながら、作品を仕上げました。

古今和歌集より


これは、月の出るのを待つ人々と、月が山に入ってしまって恋しい人々との気持ちを表した二首の歌です。異なった構成なので、それぞれの空間を意識し書きまた。この歌を見て、月を大切に思う人の存在と、毎日違う月の雰囲気を楽しめたらいいなと感じました。

澄心静慮


大字で、淡墨にチャレンジしました。作品を書く前の墨作りではなかなか良い墨色、滲みがでず苦戦しました。また、手首を思うように使えずに、筆の使い方を何回も指導して頂き、手首の返しを意識し思い切って書くことで、抑揚のある作品を目指しました。穂先を意識し、全体が流れるようにすることを考え作品を仕上げました。五言律詩を七行で構成するにあたり、いかに自然な余白を生み出せるかを考えました。画数の多寡で一行に入れる字数を変える必要があり、何度も草稿を練り直し納得のいく作品へと帰着しました。

順風満帆


順風満帆とは、物事がきわめて快調に進んでいることを意味します。縦二00㎝の大きな板に四文字という少ない文字を刻しました。そのため、一字一字が迫力のある文字になるよう、太くうねりのある線を目指し、板の大きさに負けない堂々とした作品になるようにしました。また、金箔を使いより華やかな作品を仕上げました。

王士禛「送胡耑孩赴長江」


この印は七言絶句で、二八文字を刻しました。文字は直線で空間が少ないので、残された空間を潰してしまわないように気をつけながら制作しました。画数の少ない字は小さくしつつ、全体にまとまりのあるのになるように、行の中心がしっかりと通るように心がけながら作品を仕上げました。

臨 元顕儁墓誌銘


古典の特徴である右肩上がりな字形と、はらいが長いという点を意識し、より古典に近ずけるようにしました。画数の少ない字は大きくなってしまうことが多いので、全体のバランスを考えながら制作しました。線質が同じにならないよう、また、文字をはっきり書くことが課題でした。線の浮き沈みを意識し、立体感のある作品を目指してを仕上げました。

臨 高野切第一種


原本を見ていくうちに文字が大きくなり、余白がうまく取れないことが多かったので、上下の文字のバランスに気をつけながら制作しました。文字の中心が左に流れてしまう癖があったので、隣との行間などを意識し、綺麗に収められるようにしました。墨継ぎの位置を特に意識して、より古典の雰囲気に近づけるようにしました。

布目 華穂  ~ Kaho Nunome ~

臨 曹全碑


線がなめらかで、伸びやかな作品になるよう、八分隷特有の右はらい波磔を特に意識して書きました。横画では、アーチ状の線と水平な線を区別し、拓本をよく観察し、一文字一文字丁寧に時間をかけて作品を仕上げました。

万夢丹句


私は、力強い楷書の作品を書こうと思い、北魏時代の造像記を基盤とした作品作りに挑戦しました。作品に立体感を出すために文字に大小をつけたり、二枚で一つの作品になるように、字間、横に並ぶ文字が綺麗に揃うよう心がけた部分にも注目していただけると嬉しいです。

臨 一条摂政集


この作品は線が繊細で一文字が小さく行が左に傾斜しています。高校二年生から一条摂政集の臨書を始め、仮名は形ばかりにとらわれるのではなく、今まで意識してなかった墨の潤渇や墨の濃さが大切なことを学びました。約一年間の集大成であるこの作品を通して、自分の成長を感じることができました。

万葉集


皆さんもご存知の令和の出典である万葉集の花の歌を書きました。扇型のカーブに沿って文字を書くことがとても難しかったですが、書く位置や行の角度にも意識して書きました。襖が華やかに、実際の花が想像しやすいよう歌と花の絵を重ねたので、書と絵の両方を楽しんでいただけると嬉しいです。

岑参「磧中作」


方形の印とは異なり円の印にはカーブがあり、どうすればカーブに沿って自然に文字が入るのか考えました。線の一本一本がとても細く均一にするためにゆっくり丁寧に時間をかけて刻し、自分が納得のいく作品にができとてもよかったです。

陳文述「消夏雑詠」


私は、この作品で初めて篆書に挑戦しました。一文字一文字のバランスや文字の組み合わせ、全体構成など数種類の原案を作り、少しでも良い作品になるように時間をかけて制作しました。「銀河花外転」の大きな五文字と小さな文字をバランスよく組み合わせ、刻しました。

オードリー・ヘップバーンの言葉


オードリー・ヘップバーンは、とても美しく自分の意志をしっかりと持った強い女性です。私は強い女性に憧れていあので、この言葉に共感し選びました。三つの言葉をサイズが全て違う紙に書き、その下にはカラフルな和紙を使い、色の組み合わせ、どのような構成にするのか悩みました。かすれが特徴なので汚いかすれにならないよう意識しながら書きました。

延寿万福


延寿とは「長生きする。」こと。万福とは「数えきれないほどさまざまな幸福。」という意味です。私の家族が長生きをし、沢山の幸せが訪れるよう願いを込めて刻しました。瓦当風の作品にしたのは、瓦当に刻されている文字がおめでたい言葉であり、私の願いと同じであると思ったからです。板に瓦当の半円がどうしたらバランス良く組み合わせることができるか構成の部分で一番悩みましたが、納得のいく作品になりました。

橋本 ふね  ~ Fune Hashimoto ~

漆書童蒙八章


行書や隷書、仮名とあらゆる古典を経験するも中途半端に終えてしまった私が、高校二年生の後期に出会い、私が一番長く臨書した古典です。刷毛で書いた字に細いひげをつけたような金農独特の華麗な漆書体に惹かれました。周りの人より出遅れたスタートになってしまったため、焦る中で独特な運筆やかすれをたくさん研究し、人一倍書きました。

臨 関戸本古今集


料紙の色合いと線との兼ね合い、粘りづよい線質に惹かれる作品です。また、細密かつ太細の変化の特徴的な古典で、加えてねじったり、緩急がある線を習得するのにとても苦戦しました。少しずつリズミカルに書けるようになるに連れ、その楽しさを実感することができました。

臨 淵羨魚不如退結網


印篆という篆書を用いて、直線美を感じられるような作品に仕上げました。九文字をいかに綺麗に整列させられるかというのに苦戦し、草稿作りにとても時間がかかりました。

猪突猛進


猪突猛進とは、一つのことに向かって向こう見ずに猛烈な勢いで突き進むと言う意味です。勢いのあるイメージをそのまま書体に反映させ、かすれにもこだわって丁寧に刻しました。文字の色は「白群」という名前で、高品質な顔料を使い、その鮮やかさを実現しました。青とも紫とも言えない絶妙な色合いと、木の渋みとの相性にもこだわりました。

臨 光明皇后楽毅論

細い線の中でもメリハリがあり、抑揚のある線に惹かれて高2から楽毅論の臨書を始めました。一つの字の中に力強い線と繊細な線を表現し、作品に立体感が出るよう仕上げました。約1年間の集大成であるこの作品を通して、自分の成長を感じることができました。

古今和歌集より


創作作品を考える時、仮名の表現の幅広さに驚きいろいろ悩むことの多かった作品です。臨書作品とは少し違った雰囲気に仕上げたかったため、細く繊細な線質を参考に創作しました。より仮名らしく美しい線を書くのに苦労しました。

平田 真凜  ~ Marin Hirata ~

臨 真草千字文


私は、この作品を一目見た瞬間から、楷書と草書の調和に圧倒され書き込んできました。真草千字文特有のゆったりとした運筆を意識し、筆の弾力を活かし、整った字形になるように書きました。何度もリズムを意識し流れるような伸びやかな線になるように練習し、作品を仕上げることができました。

臨 本阿弥切


私は、一年生の後半からこの作品に取り組んできました。リズミカルな運筆を習得するのに、先生の書き方をよく見て真似をして、何回も何回も練習してきました。また、字の抑揚をつけ作品に立体感がでるようにしました。約三年間書き続けることで自分が納得のいく作品に仕上がりました。私の高校三年間の集大成となる作品になったと思います。

亀竜寿


この作品は、亀と竜は共に長生きするというもの、よって人の長寿を祝うという意味があります。陽刻という刻し方で、文字が浮き上がるようにし、金箔を貼ることでおめでたい雰囲気に仕上がるようにしました。また、カスレを正確に刻すことで、より立体的な作品に仕上げることが出来ました。さらに、オイルステインを使うことで、金箔が映えた作品になったと思います。

取人所長略人所短


一、二年の時は篆刻がとても苦手でした。どうしたら上手に刻すことができるのかを先生に教えて頂いたり、友達にアドバイスを貰ったりしました。家でも刻し方についの動画を見て実際に刻したりして練習をしてきました。中々上達することが出来ませんでしたが、粘り強く練習し、いい作品に仕上げることが出来たと思っています。

言葉を惜しんで


この作品は、ナ・テジュさんの「花を見るように君を見る」という詩集から選びました。言葉の意味や雰囲気にあうように、字のバランスをあえてくずし、可愛らしい温かみのある字形になるように意識しました。筆も羊毛を使い、穂先に神経を集中させて一画一画丁寧に書くことが出来ました。

体道窮神


この作品は、人物がすぐれているという意味です。最初は、字のイメージにあう字体を見つけることができず、長い間試行錯誤を繰り返し、一文字一文字じっくりと時間をかけ、力強い作品に仕上げました。自分にとって一番苦戦した作品でしたが、最後まで諦めずに書くことで、納得のいく作品になりました。

万葉集


万葉集の中から数首選びました。この作品では、全体の統一感に注目してほしいと思っています。特に中央の扇子型の短歌は流れを意識し、字が細くてもキリッとした印象になるようにしました。一つ一つの短歌が主張しすぎないように、調和のとれた魅力的な作品に仕上がったと思います。

藤城 涼太郎  ~ Ryotaro Fujishiro ~

臨 隷書張載東銘篇


一年生からずっとこの古典を臨書してきました。その成果を発揮することのできた作品だと思います。この古典は他の隷書と比べて力強く、太い線が特徴です。波磔と文字に生まれる余白の美を、徹底的に意識して書きました。文字の配置にとても苦戦をしました。

臨 香紙切


私は、仮名が苦手なので、臨書では何度も先生にご指導をしていただき、改善できるように努力しました。私の選んだ香紙切は、波を打つような激しい線が特徴的な古典です。その線を表現するために、筆の弾力を使い、緩急をつけて、リズムを大切にして練習しました。

正岡子規の歌


短歌を上下に書く構成にし、藤の花を連想するような作品にしました。大字の仮名は書く時のスピードが大切で、ゆっくり書いてしまうと流れが滞ってしまうので、書く速さを重視し、また、筆の穂先と弾力を使い書くことを意識しました。変体仮名をどこに入れたらより良い作品になるのかを考えて制作をしました。

瑞色鮮


金文の象形的な書体を活かした大字に挑戦をしました。羊毛でかすれを出し、立体的な作品にしました。三文字の構成でどの文字にも墨の潤渇をつけ、変化のある作品になるように工夫をしました。羊毛に中々慣れませんでしたが、先生のアドバイスを基に練習をし、納得のいく作品に仕上げることができました。

普羅の句


この作品は、俳句の内容を噛み締めて書くことを大切にして書きました。また、全体の余白を考え、ひらがなと漢字がしっかりと調和するように書きました。「雨」や「海」などの点は、一つずつ細かな変化をつけたり、紙面にバランスよく入るように心がけ、制作をしました。

画竜点睛


四文字をどのような構成にするのか、どのような刻風にするのか、何度も繰り返し草稿を練りました。白と朱のバランスを考えながら、白文で力強く刻しました。「画」は線が無くなるぎりぎりの所まで細かく刻しました。

孟浩然詩句


長い間臨書してきた鄧石如の作風を基にして、作品を作りました。漢字臨書と同様に、文字の余白と波磔を大切にして刻しました。作品を陰刻にしたので、色を塗るのが大変でした。日本画の胡粉という画材を使って奥行きのある作品にしました。木目が綺麗になるように刻しました。

宮地 開実  ~ Akebi Miyachi ~

臨書譜


書譜は王羲之の書法を基本にした正統的な草書で、変化に富んでおり、格調が高いと言われています。この特徴が表現出来るよう、線質や二過折を意識して書きました。書譜は、二年生の頃から臨書し続けている大切な作品です。長期間に渡り真剣にこの古典と向き合ったことで、草書をより深く学ぶことが出来ました。

寒山詩


初めて木簡作品に挑戦しました。制作を始めた段階では、なかなか木簡の特徴を掴むことが出来ず、悪戦苦闘しましたが、日々練習を重ねていくうちに、徐々に形になっていき、徐々に作品らしくなってきたと感じることができ、とても嬉しく思いました。納得のいく作品書けました。

臨高野切第三種


一年生の頃から仮名が苦手で、授業以外で書いてこなかったので、最初は線の太細が上手く書けず時間をかけて臨書しました。また、先生に何度もご指導やアドバイスをして頂き、苦手意識のあった仮名も少しずつ自信が持てるようになり、何度も何度も練習をしてきたので、とても思い入れのある作品になりました。

P.T.バーナムの言葉


この言葉にあるように、たくさんの人を笑顔にできるそんな作品になればいいなという気持ちで、書きました。一見、シンプルな書風ですが、シンプルな中に込めた気持ちが、見てくださる方に伝われば嬉しいです。

陸游詩


一番苦手であった篆刻で、初めての多字数に挑戦しました。満足することを知っていれば、たとえ貧しくとも精神的には豊かで、幸福であるということという意味が込められています。明るくキリッとした作品になるよう刻しました。

竜翔鳳舞


龍のごとく力強く駆け上がり、鳳凰のように華麗に舞うという意味を持つこの言葉を制作していくとき、この四文字をどのような書風で書くかとても悩みました。言葉の意味に合うように力強い筆の動きの中にも鳳凰のような優しく華麗な様子を入れられるよう工夫しました。

春夏秋冬


四季折々の風景や様子が書かれた四首を古今和歌集から選びました。全体のバランスや配置、どこで変体仮名を使い、どのようなレイアウトにするか、とても悩みました。春・夏・秋・冬それぞれの季節のイメージを考えつつ、優しく落ち着きのある作品に仕上げるため、試行錯誤を繰り返しながら書きました。四季が楽しめるそんな作品になっていたら嬉しいです。

村松 怜  ~ Rei Muramatsu ~

臨楷書氾勝之書


この古典には、堂々としていて圧倒される迫力があります。力強い線や深度が表現できるよう、線を刻んで書きました。線や形ばかりを見て書くのではなく、余白も綺麗に見えるよう意識しながら書くことに苦戦しました。作者である趙之謙の、信念に従って筆を進める自信と、堂々とした雰囲気が伝わるよう、私も自信を持って書きました。

 臨石山切貫之集下

この石山切の作者である藤原定信は運筆が速く、リズミカルな筆致が特徴なのですが、私は手本を見過ぎてしまうあまり、運筆が慎重になってしまい、速度感に欠ける悪い癖がありました。そこで、リズム良く、勢いや流れを大切に書くことを意識し、仮名臨書に取り組んできました。料紙を切り継いである部分、華やかな色合いにも注目して見てもらえたら嬉しいです。

張瑞図詩


この詩は、谷間の岩肌は色美しく、林間に鳴く水鳥の声は透き通って聞こえるという意味です。鄧石如の古典を参考にして、丸みのある線で、枠いっぱいに文字を刻しました。直線と曲線のバランスが難しく、細い線と余白の調和を考え、何度も草稿を作りました。綺麗な情景を思い浮かべながら、繊細な部分も丁寧に刻せたと思います。

花開蝶自来

花開蝶自来花開けば蝶自ずから来たり。この言葉には、徳のある人には自然と人が集まる、という意味があります。私もそのような人になりたいという願いを込めて刻しました。刻す際に、筆で書いた時の力加減や筆使いが無くなり、平坦になってしまわないよう、ノミで筆の質感を表現する

韋応物詩


幽居は、俗世間を避けて、ひっそりと静かに暮らすことをいいます。この詩では、作者が世渡り下手だからと自分の世を捨て、幽居での生活の楽しみを存分に味わっていることを歌っています。そんな自由気ままで伸び伸びとしているこの詩に合うよう、文字の間隔を広く取り、上段には大字で遂此幽居情の一節を強調し、勢いに乗って書きました。

  草野心平の詩

「蛙の詩人」として知られている、草野心平さんの詩です。主人公の蛙と蛇が出てきて、その後どうなったかは詳しく語られていませんが、想像力が掻き立てられ、思わず泣けてきます。この詩は片仮名で書かれていて、句点が多く使用されています。草野心平さんがあえてそうしたことの意味を考え、言葉の響き、リズムを大切に書きました

書道コース共同制作(共通課題)

和凧 

墨流しの技法で紙を染め、それぞれが想いを込めて文字を書きました。

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