平成13年度成果

ペロブスカイト型鉄酸化物を中心とする高酸化状態にある遷移金属酸化物を合成し、物性を調べた。

(1)PrNiO3、金属-絶縁体転移を示すパイロクロアTl2Ru2O7、強磁性強誘電体であるBiMnO3の圧力下単結晶育成に成功した。PrNiO3については粉末X線回折のMEM解析で軌道秩序の存在が示唆された。

(2)Sr2/3La1/3FeO3薄膜を10μm幅の細線にし、電荷不均化温度以下でパルス状(~1ms)に1×103 Vcm-1以上の電 場を印加したときに、秩序化している酸素ホールが集団的に運動することに対応した非線形伝導性が観 測された。

(3)ペロブスカイト型鉄酸化物について高圧下メスバウアー分光を行い、La1/3Sr2/3FeO3の電荷分離、磁気秩序の圧力依存から圧力・温度・磁気状態図を完成させた。常圧で電荷分離と磁気秩序が同時に起こり圧力21GPaまで転移温度が降下し、25GPaで電荷分離は消失すると磁気秩序温度は室温以上に上昇する。高圧下で外部磁場を印加した測定から平均原子価を保持したまま、強磁性体へ転移したことが明らかになった。

(4)金属-絶縁体転移を示すNd1-xSmxNiO3の光電子分光を行ない、金属相の電子状態がx>0.4とx<0.4で大きく異なることが見出した。x>0.4で擬ギャップが見られ、局在モーメントが形成が示唆された。

(5)強磁性を示すSrFe1-x CoxO3の電子状態を軟X線吸収分光により調べた。全組成域にわたって酸素ホールが伝導を担っていること、Coは中間スピン状態にあることが示された。(6)混合原子価Fe304の放射光核共鳴非弾性散乱測定を行い、Verway転移前後のFeの部分フォノン状態密度の変化を観測した。

(7)ペロブスカイト鉄酸化物DyFeO3における、161Dy, 57Feの放射光核共鳴非弾性散乱測定を行い、それらの部分フォノン状態密度を観測した。