平成12年度成果

ペロブスカイト型鉄酸化物の単結晶試料合成と各種の物性測定を行い、以下の成果を得た。

<単結晶育成> 3 GPaの高圧下でCaFeO3の単結晶(1mmx1mmx0.1mm程度)を育成することに成功した。また、高圧合成と比較して100万分の一程度の低圧下で、SrFeO3、CaFeO3、 Sr2/3La1/3FeO3、Sr2FeCoO6及びSrCoO3の単結晶薄膜を作製することに世界で初めて成功した。単結晶薄膜の生成過程を、エックス線回折とメスバウア効果の測定及び断面電子顕微鏡観察により検討し、基板結晶との格子のマッチングが非常に重要であることを見出した。

<輸送現象> SrFeO3薄膜のホール効果の測定を行い、電荷キャリアがホールであることを明らかにした。

<メスバウアー分光>電荷とスピンが温度によって整列する、ペロブスカイト型鉄酸化物CaFeO3および La1/3Sr2/3FeO3の温度・圧力・磁気状態図をダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧下57Feメスバウアー分光測定から明らかにした。さらにSr3Fe2O7についてもその 電荷分離および磁気秩序の詳細を明らかにした。

<光電子分光> CaFeO3の光電子スペクトルで電荷分離に伴うギャップが開くことを観測したが、金属相ではLa1/3Sr2/3FeO3と異なり擬ギャップ的振る舞いが見られなかった。

<バンド計算>非制限Hartree-Fock近似バンド計算により、CaFeO3の電荷分離に格子変形が必要であることを見出し、格子変形を必要としないLa1/3Sr2/3FeO3の電荷分離とは機構が異なることが示唆された。

<核共鳴非弾性散乱> CaFeO3、La1/3Sr2/3FeO3の放射光核共鳴非弾性散乱を電荷分離温度近傍で行い、それら物質中におけるFe原子の局所フォノン状態密度の変化を観測した。また、磁気転移に伴い弾性散乱強度が変化するという新しい現象を発見した。