「富岳」で実現するヒト脳循環デジタルツイン

2023年度~2025年度

文部科学省令和5年度スーパーコンピューター「富岳」成果創出加速プログラム

 

脳循環のin silicoモデルと大規模臨床データに基づく「ヒト脳循環デジタルツイン」をスーパーコンピューター「富岳」にて実現する.

課題概要

脳梗塞やくも膜下出血などの脳卒中をはじめとする脳血管障害は,老衰を除き,日本人の死因第3位と高い割合を占めているだけではなく,寝たきりの原因の第2位とQuality of lifeに大きく関係します.脳循環障害では,いずれも血液や脳脊髄液・間質液の流動およびそれに起因した細胞レベルの力学的負荷が病気移行へのトリガーとなることが多くの基礎研究から示されていますが,そのような局所の流動変化が大域的な循環場とどのように関係するか明らかではなく,臨床で取得されるデータがこうした病態の予測評価に十分に活用されていないのが現状です.

このような現状において,実空間で得られる情報を基にサイバー空間で対となる双子を作り出す「デジタルツイン」を脳循環に展開した「脳循環デジタルツイン」の実現は,個人毎の脳循環予測精度を大幅に向上させる可能性を秘めています.この実現には,in silico(コンピュータ)モデルの構築,多数の臨床データの取得,迅速なモデル解析(計算シミュレーション),試用を通じたモデルの評価が重要であり,大学等の研究機関と医療機関が密に連携し開発を進める必要があります.

本事業課題では,脳循環のin silicoモデルと大規模臨床データを用いた「ヒト脳循環デジタルツイン」を「富岳」が持つ豊富な計算環境を活用し実現することを目的とします.脳循環in silicoモデルの基盤となる計算力学解析技術の構築,患者個々の脳循環状態を再現することが可能なデータ同化モデルの構築を行うともに,数百例規模の臨床データをベースにしたパラメトリック解析を実施することで機械学習に基づく代理モデル化を行います.さらに,新たに得られる臨床データに対し構築したモデル予測を試行することで,脳循環デジタルツインの社会実装の実現可能性を検討していきます.

研究開発課題責任者:伊井 仁志(東京工業大学,工学院機械系,教授)

目指すもの

脳循環デジタルツインを用いた病気予測の一例
(Society5.0を見据えた次世代医療)