【第48回】2022年4月15日(金)9:00--9:20(コーヒータイム)9:20--10:20(セミナー)
講演者:篠原健(名古屋大学)
タイトル:多重ゼータ関数の帰納的関係式の拡張とその応用について
アブストラクト:秋山-江上-谷川らは2001年多重ゼータ関数の解析接続を示した後、r重ゼータ関数の最後の変数を非正整数で特殊化するとr-1重ゼータ関数の和で表せる、という"多重ゼータ関数の帰納的関係式"を用いて多重ゼータ関数の非正整数点でのある種の特殊値を計算している。今回多重ゼータ関数の帰納的関係式をすべての変数に対して拡張できたので、本講演ではその証明の概略を述べる。応用として多重ゼータ関数のすべての正則整数点での特殊値が明示的に計算できることを紹介する。
【第49回】2022年5月13日(金)9:00--9:20(コーヒータイム)9:20--10:20(セミナー)
講演者:後藤新裕(九州大学)
タイトル:Eisenstein整数の場合におけるBernoulli-Hurwitz数とTate-Shafarevich群を楕円Gauss和により関係づける合同式
アブストラクト:古典的な定理として虚2次体の類数と, Bernoulli数との間の合同式がある. 大西はこの合同式のGauss数体上の楕円曲線アナロジーとして, BSD予想の仮定の下で, Tate-Shafarevich群の位数と, Hurwitz数とよばれるBernoulli数の楕円曲線アナロジーなる有理数との間の合同式を示した. 証明には, Gauss和の楕円曲線アナロジーである楕円Gauss和が用いられる. 今回講演者は, Eisenstein数体上にこの結果を置き換えることに成功した. 古典的な対象と比較をしながら, この結果について述べたいと思う. Gauss数体上の場合では現れなかった現象についても述べる予定である.
【第50回】2022年5月27日(金)9:00--9:20(コーヒータイム)9:20--10:20(セミナー)
講演者:Cindy (Sin Yi) Tsang(お茶の水女子大学)
タイトル:ガロア加群とホップ・ガロア構造と正則部分群
アブストラクト:整数環のガロア加群の構造を調べるのは,古典的な代数的整数論における重要な研究課題である.30~40年前にホップ·ガロア構造を用いるアプローチが提起され,研究の可能性を拡げた.そのため,ガロア拡大上のホップ·ガロア構造を列挙する研究が増えてきている.ホップ·ガロア構造は実は正則部分群と関係しており,群論を通して調べることができる.本講演の目的は,タイトルにある3つのものの関連性を説明することである.群論の方法によって証明されたホップ·ガロア構造に関する定理になるが,講演者の研究成果も少し紹介したいと思う.
【第51回】2022年6月17日(金)9:00--9:20(コーヒータイム)9:20--10:20(セミナー)
講演者:篠田万穂(お茶の水女子大学)
タイトル:ベータ展開の一般化に対するグラフ表現と周期測度の稠密性について
アブストラクト:Renyi により導入された実数のベータ展開は2進,10進展開の自然な拡張であり,ベータ変換による力学系の軌道を表す記号列と対応し、整数論や力学系の観点から様々な研究がなされている.力学系が明記性を持つ場合には最大エントロピーを与える不変測度の一意性や大偏差原理が知られているが,明記性を弱めた場合の研究も近年進展し、ベータ変換は明記性を持たない典型例であるという点で注目を集めている.本講演では,ベータ変換の一般化である,generalized (α, β)-変換を導入し,その軌道をグラフに表す方法を紹介する.そして大偏差原理が成り立つための条件である周期測度の稠密性について述べる.
【第52回】2022年7月8日(金)9:00--9:20(コーヒータイム)9:20--10:20(セミナー)
講演者:川添浩太郎(明治大学)
タイトル:交代プレッツェル結び目に対する一行sl3色付きJones多項式のtail
アブストラクト:色付きJones多項式は, 結び目及び絡み目の不変量である. また, 交代結び目に対する色付きJones多項式ではtailと呼ばれるq-級数の極限が存在する. よく知られている色付きJones多項式はリー代数sl2を用いて構成されるが, リー代数sl3から構成される色付きJones多項式でもいくつかの結び目, 絡み目に対して極限であるtailが存在することが知られている. しかし, sl3色付きJones多項式は計算が複雑でありsl2の場合と比べると未知であることも多い. 本講演では, プレッツェル絡み目に対してsl3色付きJones多項式に制限を加えた一行sl3色付きJones多項式の計算とそのtailの結果について紹介する.
【第53回】2022年7月22日(金)9:00--9:20(コーヒータイム)9:20--10:20(セミナー)
講演者:小川将輝(埼玉大学)
タイトル:3次元多様体のハンドル体による分解について
アブストラクト:3次元多様体のヒーガード分解は, 3次元多様体のハンドル体2つによる分解である. ヒーガード分解は安定同値性をはじめ, 良い性質を持つことから, 3次元多様体を研究する上で重要な概念とされてきた. ヒーガード分解を拡張した概念として, ハンドル体分解という3次元多様体の分解を考えることができる. これは3次元多様体のハンドル体3つ以上による分解である. 今回の講演では, ハンドル体分解の分類問題や安定同値性などについて得られている結果を述べる.