【第39回】2021年10月8日(金)10:30--11:00(お茶会)11:00--12:00(セミナー)
講演者:小野雅隆(早稲田大学)
タイトル:調和代数における対称多重ゼータ値のシャッフル関係式
アブストラクト:シャッフル関係式は多重ゼータ値の基本的な関係式の1つである. 多重ゼータ値の変種である対称多重ゼータ値にも類似の関係式が成立し, 多くの証明が知られている. 中でも金子とZagierは, 調和代数において対称多重ゼータ値のシャッフル関係式に対応する等式を証明し, その像として対称多重ゼータ値のシャッフル関係式を与えた. この講演では, 関真一朗氏 (青山学院大学) と山本修司氏 (慶應義塾大学) との共同研究で得ていた2色根付き木に付随する対称多重ゼータ値の理論を用いることで, 調和代数における金子–Zagierの等式を含む多くの等式が得られることを紹介する.
【第40回】2021年10月22日(金)9:25–9:45(お茶会)9:45–10:45(セミナー)
講演者:湯地ともき(京都大学)
タイトル:被約なスキームの圏からのスキームの圏論的復元
アブストラクト:Sをスキーム、PをSスキームに課される条件として、Sch(S,P)で条件Pを満たすSスキームのなす圏を表します。Sch(S,P)の圏としての構造(すなわち、対象の集合と射の集合と合成に関するルール)からスキームSのスキームとしての構造(すなわち、下部集合とその上の位相と構造層)を復元する問題を考えます。たとえば、Sが局所ネーターでPが「S上有限型」である場合は望月先生によって2004年に証明されていて、Sが任意のスキームでPとしてなんの条件も考えない場合はvan Dobben de Bruyn氏によって2019年に証明されています。
今回の講演では、Sが局所ネーター正規スキームで、Pが「被約、S上準コンパクト、S上(準)分離的」などのうちのどれかである場合に、スキームSを復元します。(結論として、異なる二つの局所ネーター正規スキームS,Tと条件P,Qに対して、Sch(S,P)とSch(T,Q)が圏同値であれば、SとTが同型であり、P=Qであることが従います)
【第41回】2021年11月5日(金)9:25–9:45(お茶会)9:45–10:45(セミナー)
講演者:行田康晃(名古屋大学)
タイトル:(x+y)^2+(y+z)^2+(z+x)^2=12xyzの正整数解とクラスター代数の変異構造
アブストラクト:この講演では,方程式(x+y)^2+(y+z)^2+(z+x)^2=12xyzの全ての正整数解を列挙するアルゴリズムを紹介する.さらに,このアルゴリズムの背後にある,クラスター代数理論における「ミューテーション(変異)」と呼ばれる変換との関係性について,以前から知られていたMarkovのディオファントス方程式x^2+y^2+z^2=3xyzの正整数解が持つ同様の関係性と比較しながら紹介する予定である.
【第42回】2021年11月19日(金)9:25–9:45(お茶会)9:45–10:45(セミナー)
講演者:栗丸陸(九州大学),トウ ウキ(九州大学)
タイトル:実2次体のmod 2数論的Dijkgraaf-Witten不変量とまつわりグラフ:平野の公式とKen Onoの問いについて
アブストラクト:Minhyong Kim氏の数論的Chern-Simons理論に基づき、平野光氏は任意の数体に対し、数論的Dijkgraaf-Witten不変量を導入し、特に、実2次体のmod 2 数論的Dijkgraaf-Witten不変量を平方剰余記号を用いて表す公式を示した。2019年, Ken Ono氏は平野の公式には何か規則性があるのではないか? 多くの実例計算をしてみる問題を提起した。
我々は計算機を用いて多くの実例計算をし、非常に簡明な公式を発見し、証明することができた。それは、実2次体を定める分岐素数たちから得られるあるグラフの言葉(一筆学書き可能性)で簡明に与えられる。この我々の結果について紹介したい。
【第43回】2021年12月3日(金)9:25–9:45(お茶会)9:45–10:45(セミナー)
講演者:森祥仁(東北大学),村上友哉(東北大学)
タイトル:非Seifert多様体に対する量子不変量の関係式と量子モジュラー性
アブストラクト:3次元実多様体の重要な不変量としてWitten-Reshetikhin-Turaev (WRT)不変量がある。それを圏化する候補としてGukov-Pei-Putrov-Vafaはホモロジカルブロックというq級数不変量を構成し、qの1の冪根への極限がWRT不変量となることを物理学の立場から述べた。彼らの等式の数学的な証明はこれまでSeifert多様体の場合のみで知られていたが、本講演では非Seifert多様体に対して証明を与える。その帰結として、本講演で考察する多様体のWRT不変量が深さ2の量子モジュラー形式をなすことが示される。
【第44回】2022年1月7日(金)14:40–15:00(お茶会)15:00–16:00(セミナー)
講演者:Anthony Poëls (JSPS/Nihon University)
タイトル:From a false conjecture to Roy’s Extremal Numbers
アブストラクト:The uniform exponent of simultaneous rational approximation to a given transcendental real number and to its square quantifies how well those two numbers can be approximated by rational numbers with same denominator. According to Dirichlet's approximation theorem, this exponent is at least equal to 1/2. In 1969, Davenport and Schmidt gave a non-trivial upper bound > 1/2. For a long time, it was conjectured that the above uniform exponent was always equal to 1/2. However, in 2004 Roy proved that this conjecture was false by constructing real numbers - called extremal numbers - whose uniform exponent is precisely equal to Davenport and Schmidt's upper bound. In this talk, we will present the ideas behind Davenport and Schmidt's upper bound and the construction of Roy's extremal numbers.
【第45回】2022年1月21日(金)14:40–15:00(お茶会)15:00–16:00(セミナー)
講演者:任鑫(関西大学)
タイトル:On q-deformation of rationals and metallic numbers
アブストラクト:The q-rational numbers and the q-irrational numbers are introduced by S. Morier-Genoud and V. Ovsienko. In this talk, we focus on q-metallic numbers and q-rational sequences which converge to q-metallic numbers, and consider the radiuses of convergence of them when we assume that q is a complex number. We give an estimation of radiuses of convergence of them, and we solve on conjecture of the lower bound expected which is introduced by L. Leclere, S. Morier-Genoud, V. Ovsienko, and A. Veselov for the metallic numbers and its convergence rational sequence.
【第46回】2022年2月4日(金)10:00–10:20(お茶会)10:20–11:20(セミナー)
講演者:古江弘樹(東京大学)
タイトル:多項式環上のMacaulay行列を利用したXLアルゴリズムの改良
アブストラクト:数学とその応用分野において,多変数代数方程式系の求解は基本的な問題の一つである.特に,有限体上の多変数二次多項式系の求解問題(Multivariate Quadratic equations問題)は様々な暗号方式の安全性を支えているため,その求解アルゴリズムの開発と計算量の解析は実用面においても重要な課題となっている.MQ問題の求解においては,グレブナー基底の計算に基づくもの(消去法),そして,XLアルゴリズムが主要な方法として知られている.このうちXLアルゴリズムは,与えられた多項式系を線形化することで得られる有限体上の行列(Macaulay行列と呼ばれる)に対するガウス消去によって解を求めることができる.また,XLアルゴリズムのvariantとしては,解の全数探索との組み合わせによる方法(hybrid-XL法)が最も効率的なものの一つとして知られている.
本講演ではまず,XLアルゴリズムおよびhybrid-XL法の概要および計算量について,適用事例を交えながら説明する.その後,hybrid-XL法の改良手法として,多項式環上のMacaulay行列を利用したアルゴリズムを開発したので,これを紹介する.本研究は東京大学の工藤桃成氏との共同研究である.
【第47回】2022年2月25日(金)15:00–15:30(お茶会)15:30–16:30(セミナー)
講演者:長坂篤英(東京大学)
タイトル:重み付きグラフのホロノミー保存変形と結び目理論への応用について
アブストラクト:有向グラフの表現である重み付きグラフの分類において,そのゼータ関数は不変量として活躍する.本講演ではゼータ関数の値を保存する重み付きグラフの変形操作として“ホロノミー保存変形“を定義し,さらにある条件をみたす有限表示群から重みつきグラフを構成できる事を紹介する.これらの応用として,和田氏により定義されたtwisted Alexander多項式という結び目の不変量と重み付きグラフのゼータ関数が関係するという合田氏の結果を捉えるとともに,Wirtinger表示の変形をグラフの変形操作から記述できることを示し,twisted Alexander多項式が結び目の不変量であることのグラフを用いた証明を与える.特に,結び目群の表示をWirtinger表示に限定した場合には適切な仮定の下では石井氏,大城氏により定義された Alexander pair により重みが統制できる事を述べる.