【第1回】2020年5月15日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:関真一朗(東北大学)
講演方法:iPadでの画面共有(二画面分割),使用アプリ:GoodNotes5
タイトル:「そ」な設定における多次元星座について
アブストラクト:代数的整数論におけるラムゼー理論的現象についてお話しする。まず、Szemerédiの定理およびその多次元化であるFurstenberg-Katznelsonの定理を解説する。その後、「そ」な設定へ拡張する試みについての先行研究および我々が得た新しい結果を報告する。これは東北大学の甲斐亘、見村万佐人、宗政昭弘、吉野聖人との共同研究である。
【第2回】2020年5月22日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:戸次鵬人(慶應義塾大学)
講演方法:PDFスライドの画面共有
タイトル:一般の代数体の場合のHeckeの積分公式のコホモロジー論的解釈について
アブストラクト:Heckeの積分公式とは,実2次体のゼータ関数を,モジュラー曲線上の閉測地線に沿ったEisenstein級数の積分として表すような公式であり,Hecke自身によって一般の代数体でも与えられている.総実体やCM体などのL関数の臨界値に関しては,このような積分公式は,Eisensteinコサイクルや新谷コサイクルなどと呼ばれる特別な群コサイクルを用いてコホモロジー論的な解釈が与えられてきたが,一般の代数体を扱えるようなものは知られていなかった.最近の坂内,萩原,山田,山本4氏による総実体の新谷コサイクルの新たな構成法に着想を得て,一般の代数体を扱えるコホモロジー論的解釈の方針が得られたので,本セミナーではこれについて紹介したい.
【第3回】2020年5月29日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:武田渉(名古屋大学)
講演方法:PDFスライドの画面共有
タイトル:代数的数の無限反復べき乗の超越性
アブストラクト:1934年にGelfondとSchneiderによって独立に代数的数の代数的数乗が超越数かどうかは完全に判別されたが,代数的数の三つ以上のべき乗の超越性に関しては未だに未解決なものが多い.本講演では同じ代数的数Aを無限回べきに繰り返し乗せた数列 A, A^A, A^{A^A},…の収束先の超越性について考察する.この収束先の超越性については2010年にSondowとMarquesによって,Aが有理数と特別な代数的数のときに超越数かどうかは判別されている.今回,新しい関数を導入することにより,彼らの結果を大幅に拡張することに成功した.また,無限反復べき乗が代数的数に収束する代数的数の個数の漸近式やそのような代数的数の分布に関する結果も得たため,それらについてもお話しする.本講演は小林弘京氏(名古屋大学)と齋藤耕太氏(名古屋大学)との共同研究に基づく.
【第4回】2020年6月5日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:片岡武典(慶應義塾大学)
講演方法:PDFスライドの画面共有
タイトル:総実体上のp分岐岩澤加群のFittingイデアル
アブストラクト:総実体の円分Zp拡大に付随するp分岐岩澤加群は,古典的な岩澤理論での主要な研究対象の一つである.Greither氏と栗原氏により,総実体の有限次アーベル拡大であって,pの外で不分岐なものに対して,p分岐岩澤加群のFittingイデアルの記述が得られていた.本講演では,その結果を(pの外での分岐を許すような)総実体の任意の有限次アーベル拡大に拡張する.主結果の定式化には,講演者が導入した,Fittingイデアルのシフトの概念を用いる.本講演の内容は,Cornelius Greither氏と栗原将人氏との共同研究に基づく.
【第5回】2020年6月12日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:平野光(九州大学)
講演方法:PDFスライドの画面共有
タイトル:On a construction of an arithmetic analogue of Dijkgraaf-Witten TQFT
アブストラクト:Atiyahによる位相的場の理論(TQFT)は多様体の位相不変量を与える枠組みである。Dijkgraaf-Witten理論は有限ゲージ群をもつChern-Simonsゲージ理論とみなされ、(2+1)次元TQFTの一つの例であり、Dijkgraaf-Witten不変量は3次元多様体の位相不変量である。一方で近年、数論的位相幾何学における種々の類似に基き、Minhyong Kim氏は数論的Chern-Simons理論を創始し、数体に対してChern-Simons不変量の数論的類似を構成した。筆者もDijkgraaf-Witten不変量の数論的類似を定義し、実2次体に対して明示的公式を与えた。然しながら、この数論的Dijkgraaf-Witten不変量には、Atiyahの理論に対応する枠組みが知られていない。本講演では、Chern-Simonsゲージ理論における幾何学的量子化に似た視点に基き、ある特別な設定の下で(2+1)次元におけるDijkgraaf-Witten TQFTの数論的類似を構成した結果について述べる。これはJunhyeong Kim氏と森下昌紀氏らとの共同研究である。
【第6回】2020年6月19日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:軽尾浩晃(京都大学 数理解析研究所)
講演方法:手書きスライドPDFの画面共有
タイトル:有限体のBloch群に値をもつ,結び目のreduced Dijkgraaf--Witten不変量
アブストラクト:2004年に,Neumannは双曲閉3次元多様体の双曲体積とChern--Simons不変量が "Dijkgraaf--Witten不変量" のある種の像として得られることを示した.特に,Neumannの手法はカスプ付き3次元多様体に拡張できる.これは複素数体での議論であるが,複素数体を他の体,例えば有限体にかえたときにどういう不変量が得られるか,というのが本結果の目的である.有限体にかえて得られた不変量をreduced Dijkgraaf--Witten不変量と呼ぶ.本講演では,いくつかの有限体とtwist結び目の3次元球面における補空間(カスプ付き3次元多様体)に対するreduced Dijkgraaf--Witten不変量の計算結果を紹介する.
【第7回】2020年6月26日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:齋藤耕太(名古屋大学)
講演方法:iPadでの画面共有,使用アプリ:Notability
タイトル:Piatetski-Shapiro列からなる等差数列の分布について
アブストラクト:整数でない正の実数aに対して n^a (n=1,2,3...)の整数部分をPiatetski-Shapiro列という.本講演では,任意の自然数rと3以上の自然数k,実数1<a<2が与えられたとき,
n^a,(n+r)^a,...,(n+r(k-1))^a
の整数部分が等差数列をなすような自然数nの分布について議論する.結果として,そのような自然数nの集合の密度がrやaには依らず,1/(k-1)であることがわかった.さらに,小区間での分布や,誤差項の評価,n^aからより一般の関数への拡張を述べる.証明には,n^aとその微分an^{a-1}の小数部分を同時にコントロールする必要があるため,2次元の一様分布論を用いる.本研究は名古屋大学の吉田裕哉氏との共同研究である.
【第8回】2020年7月3日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:色川怜未(東京工業大学)
講演方法:板書(メモ帳)+スライドPDFの画面共有
タイトル:Stabilities for families of dynamics over non-archimedean fields
アブストラクト:Toward the understanding of bifurcation phenomena of dynamics on the Berkovich projective line over non-archimedean fields, we study the stability (or passivity) of critical points of families of polynomials parametrized by analytic curves. We construct the activity measure of a critical point of a family of rational functions, and study its properties. For a family of polynomials, we study more about the activity locus such as its relation to boundedness locus (or Mandelbrot set) and to the normality of the sequence of the forward orbit.
【第9回】2020年7月10日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:臺信直人(慶應義塾大学)
講演方法:iPadでの画面共有(二画面分割),使用アプリ:GoodNotes5
タイトル:局所類体論における明示的相互法則について
アブストラクト:局所類体論における明示的相互法則とは, 局所体上で相互写像を用いて定義されるHilbert記号というペアリングに明示的な公式を与えることである. これは大変古典的な話題で, 1858年のKummerの仕事にはじまり, Artin-Hasse, Iwasawa, Coleman, Vostokovらなど, 多くの人々によって研究されてきた. そのような長い歴史がある中で比較的最近に, Benoisは(φ, Γ)加群の理論を用いてGaloisコホモロジーのカップ積を計算することで, ColemanによるHilbert記号の明示的公式が部分的に得られる事を示した. 本講演では,このBenoisによる結果に焦点を当て, その手法を精査することで講演者によって得られたいくつかの結果を紹介する.
【第10回】2020年7月17日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:工藤桃成(東京大学)
講演方法:PowerPoint
タイトル:種数4の超特異曲線の任意標数に対する存在性
アブストラクト:超特異曲線(resp. 超特異アーベル多様体)とは,そのヤコビ多様体(resp. それ自身)が超特異楕円曲線の直積に閉体上で同種となる非特異代数曲線(resp. アーベル多様体)のことである.超特異曲線(および超特異アーベル多様体)は,それ(ら)自身興味深い研究対象であるだけでなく,代数曲線・アーベル多様体のモジュライ空間の構造を決定する上で重要な役割を果たす.また,近年,暗号分野でも超特異曲線への注目が非常に高まってきており,量子計算機による解読にも耐性を持つ同種写像暗号においては,(従来の楕円曲線暗号と異なり)超特異曲線は(通常曲線よりも安全な)パラメータとしての利用が期待されている.
種数を固定したとき,各標数に対し超特異曲線が存在するか否かは基本的な問題であり,種数3以下の場合についてはDeuring氏(種数1)や伊吹山氏ら(種数2,3)によって肯定的に解決されている.今回,種数4 の場合に,任意標数の体上での超特異曲線の存在性を示すことができたので,これを紹介する.また,時間があれば,超特異曲線の中でも強いクラスである超特別曲線について,講演者らによる研究の進展状況と残された課題等も紹介したい.本講演内容は,横浜国立大学の原下秀士氏、千田駿人氏との共同研究成果を含む.
【第11回】2020年7月24日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:金井和貴(新潟大学)
講演方法:Beamer(PDFスライドの画面共有)
タイトル:Norm one tori and Hasse norm principle
アブストラクト:Hasse norm principle(HNP)は, 代数体の拡大に対して局所的なノルムの束ね合わせと大域的なノルムの"ずれ"が存在しないことを表す原理であり, Hasseにより巡回拡大に対して成立することが示された(1931). しかしながら, 一般には不成立であり, 成立するための必要十分条件を与えることが重要な問題となる. 代数体の拡大K/kに対してHNPのずれをはかる不変量Obs(K/k)は, 小野孝氏により, K/kのノルム1トーラスのShafarevich-Tate群と同型であることが示されている(1963). ガロア拡大K/kに対しては, Cassels-Froehlich『Algebraic number theory』においてガロアコホモロジーを用いた公式がTateにより与えられている(1969). 日本でも, 森下昌紀氏, 堀江充子氏, 竹内照雄氏, 加川貴章氏などによる研究がある. Kunyavskii(1984)とDrakohrust-Platonov(1986)はそれぞれ, 4次拡大と6次拡大に対して, HNPが成立するための必要十分条件を分解群による条件で与えた. 今回, Drakokhrust-Platonov(1986)による理論をもとに, Voskresenskii(1969), 遠藤静男氏と宮田武彦氏(1975), Colliot-Thelene--Sansuc(1977)らによる代数的トーラスの理論と, 計算機によるコホモロジー論的不変量の計算を併せて用いることで, 15次以下の拡大に対して, HNPが成立するための必要十分条件を分解群による条件で与えることに成功した. 本講演ではこの結果について, 具体例を中心とした解説を試みる. 星明考氏(新潟大学), 山崎愛一氏(京都大学)との共同研究.
【第12回】2020年7月31日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:吉崎彪雅(東京理科大学)
講演方法:iPadでの画面共有,使用アプリ:Notability
タイトル:Weberの類数問題とPell方程式
アブストラクト:Weberの類数問題とは,有理数体Q上の円分Z_2拡大の中間体の類数を問う問題である.様々な先行研究により,その類数はすべて1であると予想されているが,現状6-th layerまでしか確認されていない.本講演では,類数計算を,Pell方程式の自然な拡張の求解に帰着させ,Pell方程式の解法の類似を試みた結果,非常に興味深い現象を発見したので,報告したい.まず,連分数展開の自然な拡張を行い,Pell方程式の解法の類似を考えたところ,ある明示的な解が得られ,この明示的解が解全体を「生成する」と予想した.実はこの予想はWeber予想と同値になることが示せる.他にも,部分的な結果をいくつか紹介したい.
【第13回】2020年8月7日(金)15:00--15:30(お茶会)15:30--16:30(セミナー)
講演者:関川隆太郎(東京理科大学)
講演方法:Beamer(PDFスライドの画面共有)
タイトル:Q上3次巡回拡大の冪整基底とその一般化について
アブストラクト:与えられた代数拡大の整数環が1元で生成されるとき、その拡大はべき整基底を持つという。べき整基底の問題は古くから研究されており、Q上の拡大、特に素数次巡回拡大についてはGrasの結果などがある。講演者は、Q上の3次巡回拡大がべき整基底をもつための同値条件を、Shanks cubic polynomialを用いて、一般化が期待できる形に整理した。得られた応用と合わせて紹介したい。本講演の内容は東京理科大学の加塩氏との共同研究を含む。