横浜国立大学は金属破断事故を防ぐため、AIによる革新的な破断面画像解析技術の獲得を目指したコンソーシアムを設立します

ご挨拶

横浜国立大学先端科学高等研究院リスク共生社会創造センターは、金属破断による多様な事故を防ぐためAIによる革新的な破断面画像解析技術の獲得を目指した、産学官が連携したコンソーシアムを設立します。破断面解析については、熟練解析者の不足および解析技術の伝承などの諸問題を抱えています。一方でAI、特にディープラーニングの研究分野も成熟しつつあり特に画像認識の分野などでは非常に高い分類制度を実現しています。このディープラーニングの技術を破断面解析に適用することで、解析初心者へのサポートが可能になり、これらの諸問題を解決するブレークスルーとなると考えられます。しかし、このようなシステム構築は多くのデータ量を必要とすることから、1研究員もしくは単独の研究所で行うことは困難です。そこで、この度、「フラクトグラフィとデイープラーニングの融合研究コンソーシアム(FraD)」を立ち上げ、これらの諸問題について解決を目指すこととしました。

コンソーシアムの概要

社会的背景

プラントの運転中に、配管や圧力容器などの破壊事故は深刻な人的、物的被害をもたらすとともに、事業継続上のリスクにも繋がります。事故原因が特定されれば再発防止策の検討が可能となるとともに、運転再開につながるので、早急な対応が求められます。事故原因の究明のためには、破断面の観察をおこなうことは重要なことであり、フラクトグラフィ※と呼ばれる学問分野で取り扱われます。特に、走査型電子顕微鏡による拡大観察は、強力なツールであり、得られた画像から破壊のモードの特定を行います。しかし、破壊モードの判断には高度の専門性が求められる一方、このような専門性を有する人材不足が産業界において深刻な問題となっています。そこで、本コンソーシアムでは、AI、特に近年技術の進展が著しいディープラーニングの適用によって、破断画面像から損傷モードを自動判別する仕組みを開発することとしました。

※フラクトグラフィ(英:Fractography)とは、破損した物体の破面を観察し、破壊原因や破壊の機構の情報を得る解析、あるいはそのような手法のこと。

本コンソーシアムで目指す成果

本コンソーシアムでは、以下の2点に有用なAIソフトウェアを開発し、従来の定性的評価のサポートや、効率的な破断面解析を可能とする環境を構築します。

1:破断面画像から破壊機構を推定(性状分類)

2:破断面から起点を推定する(起点推定)



成果から期待されるメリット

・解析初心者への破断面分類及び起点推定などの解析サポート

・解析の効率化

・コンソーシアム活動を通しての破断面に関連する技術者、研究者の知識や技能の向上

現在の技術レベル(分類率について)

脆性、延性、疲労、粒界割れの判別(性状分類)については96%以上の精度でAIは判別することが可能となっています。

性状分類別

疲労破面の中からランダムに10箇所を切り取り、「脆性・延性・疲労・粒界割れ」についてそれぞれの領域をAIで用いて判別した例。10箇所全てにおいて疲労(fatigue)と判別されています。

[0:`fatigue',1:`fatigue',2:`fatigue',3:`fatigue',4:`fatigue',5:`fatigue'6:`fatigue',7:`fatigue',8:`fatigue',9:`fatigue']


領域分割例

破断面に複数の性状が含まれている場合の領域分割の例。写真はシャルピー衝撃試験片の破断面で、脆性破面と延性破面が混在するSEM画像である。脆性破面(青)の領域と延性破面(赤)の領域をAIを用いて分割した例です。


運営体制

お問い合わせ先

横浜国立大学 先端科学高等研究院 リスク共生社会創造センター

客員教授 酒井信介(さかい しんすけ) TEL:045-339-3773

事務補佐員 新谷寛子(しんや ひろこ)TEL:045-339-3592

E-mail: frad-consortium@ynu.ac.jp