https://weather-to-climate.blogspot.com/2025/09/blog-post.html の内容をベースに加筆修正したものです.
本記事は,科研費の審査に用いられる,研究計画調書のPDFのフォントを制御できないか?というモチベーションで筆者が試行錯誤して得られた知見に関して,忘れずに残しておくためのメモ書きである.
(筆者は基盤or若手研究(及び旧システムのスタート支援・DC)に応募した経験しかないため,他の種目ではシステムに異なる部分があるかもしれません.少なくとも,挑戦的研究や国際共同研究加速基金ではシステム上で複数のPDFが作成されるとあるので,何かしらの違いがあるのでしょう.)
※ メモ書きなので勘違いなどあるかもしれません.もし間違いなどがあれば,指摘して頂けると有難いです.
現行のJSPSの科研費電子申請システムでは,応募者向けメニューで研究計画調書の様式(Word)をアップロードし,webシステム上で入力した他の情報とマージして,システム上でPDFの研究計画調書が作成される.
筆者は研究計画調書のWordを「太字+游ゴシック」と「標準+游明朝」で作成していた.
これで作成されるPDFをWindowsで見る場合には想定通りの見た目なのだが,iPadで開いた場合に游ゴシック部分がゴシック体に見えず,游明朝とのフォントの違いが分かりにくい(太字であることだけが分かる),という問題があることに気付いた.そして,この解決を図れないか?と思い,今回の調査を行った.
(素直に考えれば,游ゴシックはヒラギノ,游明朝はヒラギノ明朝で代替されると思われるのだが…)
研究計画調書PDFのフォントに関して,やりたかったことは以下の2点である.
① 研究計画調書内で,太字とそれ以外の違いを際立たせるため,「太字+ゴシック体」と「標準+明朝体」を使い分けたい.
② 加えて,審査員がPDFを閲覧する環境として,WindowsとMac OSの双方を想定する必要があるが,研究計画調書のフォントが双方の環境で想定通りの見え方になる事を担保したい.
(参考:https://www-shinsei.jsps.go.jp/kaken/usage/usage1.html)
これをどうすれば達成できるのかに関する知見を得ることが本記事の目的である.
この疑問に答えてくれるような情報を見つけることができなかったので,自分で簡単に試行錯誤してみた.それを来年以降のために残しておく.
筆者はWindowsを使っていて,もともと研究計画調書のWordを「太字+游ゴシック」と「標準+游明朝」で作成していた.これで作成されるPDFをWindowsで見る場合には想定通りの見た目なのだが,iPadで開いた場合に游ゴシック部分がゴシック体に見えず,游明朝とのフォントの違いが分かりにくい(太字であることだけが分かる),という問題があることに気付いた.
游明朝はiPadでもPDF上で明朝のように表示されていたので,今回は游ゴシックの代わりのゴシック体をいくつか試してみた.
試したのは以下.*はGoogle Fonts,†はAdobe Fontsから利用可能.
ヒラギノ角ゴ ProN W6†
ヒラギノ角ゴ ProN W3(太字)†
Noto Sans CJK JP Bold/Black*
BIZ UDゴシック(太字)†
A-OTF UD新ゴ Pr6N L†
メイリオ
同じポイントでもそのままでは行間が游ゴシックと異なる場合があるので,Wordの機能で行間を固定値=18ptとして対応した.
(言うまでもないが,MS ゴシックにはボールドフォントが無いので論外である)
結論から言うと,上のようなフォントの多くは,Wordファイルで指定しても科研費電子申請システムで作成されるPDFで反映されない(PDF自体の文書のプロパティのフォント一覧に表示されない).おそらく全て游ゴシックになってしまっていると推察される.
W6だろうが太字にしないと,PDFで太字として認識できる文字にはならない.逆に言えば,ヒラギノ角ゴ ProN W6だろうがNoto Sans CJK JP BoldだろうがA-OTF UD新ゴ Pr6N Lだろうが,Word上で太字にさえしておけば,変換後のPDFで游ゴシックのBoldになる.Word上ではみっともない見た目になるが.
上の中でPDF変換後にWindowsで開いて生き残っていたのは,BIZ UDゴシックとメイリオのみだった(文書のプロパティのフォントで確認した).
そして,Mac環境でPDFを開いた際は,上記のようなフォントがMacに標準搭載されているかどうか,という別の問題が生じる.游明朝と游ゴシックは標準搭載だが,BIZ UDゴシックとメイリオはMacに標準搭載されていないので,何らかの代替フォントに置き換わってしまう.
つまり,Windows環境でWordファイルを作成し,それをシステム上でPDFに変換し,Macなど他の環境で閲覧して意図通り表示されるか?には以下の2つの階層がある.
① 科研費申請システムが使用されているフォントを認識しPDFに変換できるか.
② 閲覧者の環境でそのPDFに含まれるフォントを正しく表示できるか.
これら全てが満たされないと,閲覧PDFで文字が意図した通りに表示されない.多段階の反応のようである.
科研費の電子申請システムでは,Wordで指定したフォントの多くはPDF変換時に反映されず,別の標準的なフォント(游ゴシックor游明朝?)仕様になっている可能性が高い.
そのため,研究計画調書では「標準=游明朝」「太字=游ゴシックBold」を基本とする以外に現実的な選択肢は乏しく,それ以外のフォントを指定しても意味がある可能性は低い.
最初のモチベーションに戻ると,「游ゴシックの太字」をMacで開けば問題ないのだが,iPadではなぜか意図したように表示されなかったということだった.iOS 18以降では游ゴシックが標準搭載されているはずなのだが… iOS版のAcrobatの問題だろうか.すぐに使えるMacが手元にないので,Macでどうか?という点は次の申請の際に.
iOSは科研費申請システムの推奨環境ではないので,審査員がiPadを使った場合を考える必要はないのだろう,ということにしておく.
* Wordファイル自体にフォントを埋め込めば良いのでは?と思うかもしれないが,科研費電子申請システムでは研究計画調書のWordファイルをアップロードする際のファイルサイズの制限が5MBと非常に厳しく,ある程度解像度の良い図を数枚入れる事を考えると,フォント埋め込みはあまり現実的でない(実際に試したが5MBには収まらず).なので今回はフォント埋め込みによる解決が可能かは検証できていない.ファイルサイズの上限を10MBにしてくれるだけでこの問題はおそらく解決するのだが…もしくは,システムが対応しているフォントのリストをどこかに載せてくれれば・・・