第23回
社会を映すセイの鏡
社会を映すセイの鏡
田中ひかる『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫、2019年)
概要
開催日:2023年2月
課題本:田中ひかる『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫、2019年)
参加者:Kimiko、midori、ノビツムリ、berner、azusachka、アントニン(聴講)
内容:日本における生理への考え方や生理用品の歴史を学ぶ
選書担当:ノビツムリ
議事録作成担当:Kimiko、azusachka
標題作成:ノビツムリ
選書の理由
高校を卒業する頃、学校の図書館でこの本を手に取ったが、卒業間際だったので読みきれずに卒業してしまった
高校時代から「#みんなの生理」という団体の活動に注目していたので、この本にも関心を持った
高校(女子校)の家庭科の授業で布ナプキンを作った。そのナプキンを生理用品があまり流通していない国に送ったこともある。生理の貧困は、自分のライフワークにも近いテーマ。
感想
【本の内容について】
【本の内容について】
生理用品の変遷や歴史について記載がされており面白かった
生理用品が昔は開発されなかった事実が書いてあったが、そんな状態で働いてたんだなと思うとともに、今は良い商品が出回っているんだなと思った。
衛生観念について、昔は日陰で干していたり、衛生観念の考え自体も戦後にならないと一般化しなかった
衛生観念について明治時代に雑誌で啓蒙・発信していても浸透しなかった事実から、衛生は教育とともに大事だなと感じた。
生理用品のCMについて、最近まで厚労省が子どもの見る時間などに規制をかけていたということに驚いた。まだタブーがあった時代。
今の生理用品についてのCMに関して、どんどん有名人が出てタブーがなくなりつつあるけど、そのぶん仕事が生理で辛くてもがんばらなくちゃいけない風潮がある。生理に関するつらさが共有できればいいなと思った
とても読みやすい本だった。話の流れが歴史的に整理されている。
生理についてはネガティブに捉えられていたという記載があった。
貴族社会によって汚いものとして構築されたのか?自然的なものとしてネガティブに捉えられていたのか?(本書71p参照)
最近はSNSにおいて生理に関するハッシュタグを付け、「今日生理なんだよね」と言えるようになった。
アンネナプキンがアンネの日記からなんだと驚いた
母親が57歳だが、(当時生理の事を)アンネの日と言っていたらしい
女性の社会進出とナプキンとの関係性について分かった。
『生理用品の社会史』ということでアンネ社が出していたナプキンの歴史など色々読み取れた。
生理と穢れについて記述された箇所では、土俵で医療活動した女性が降ろされた騒動(2018年に起こった「女性は土俵から降りてください騒動」)を思い出した。
穢れから発展した女人禁制のことも思い出した。高校が仏教の学校で週に1回ほど宗教の授業があったが、資料に石女や比叡山の女人禁制の話が出てきて、それを思い出した。(もちろん史料内の思想は当時の価値観として授業内で説明された)。
関連して本書84p「血盆経を信仰すれば救われる」という記載が印象に残った。
本書あとがきにも言及があった世界の生理事情についても知りたい
インドの映画パッドマンも見てみたいなと思った
当時使用されていた「アンネ」という言葉について。当時の話はわからないけど、1980年代のTV番組で、戸川純が玉姫様という歌を歌うときに司会者が「アンネちゃんの歌」と言っていて、この本を読んでなぜ「アンネ」という言葉を使用していたのか理由が分かって良かった。
期待通りの本だった。戦時中の話を祖父母に聞いたら生理の話が出てきたり、『戦争は女の顔をしていない』で触れられたりすることはあっても、生理の話は「個人の話」としてしか聞く機会がない。学校では現在の話。でも時系列で、こういうことがあったからこうなった、環境問題からみたらこう、という本だった。
あとがきでも述べられていたが、月経史を研究してる人があまりいない。大学の授業のレポートで生理の貧困について調べたが、現在も存命の研究者によるものが多かった。もっと昔から研究されていたら、もっと発展していたかも。
アンネ社の栄光と衰退。軌道に乗ってた時期が長かった。PR担当の渡紀彦(男性)が犯罪まがいの行為に及んでまで研究した。現代のフェムテックにはピントのずれた商品(例:赤いバスボム)が出てくることもあるけれど、生理のない人でも良い広告や製品づくりができていたと知ることができて良かった。
アンネの衰退時、ユニ・チャームが追い抜いていくところがすごいなと思った。企業努力で便利なものが市場に出回ったからこそ一般の人が入手できるようになり、会社勤めもしやすくなった。感慨深い。
アンネ・フランクの日記はショアー(ホロコースト)を広く世に伝えただけではなく、日本の生理への考え方も変えた。なんとなく感慨深いものがあった。
アンネナプキンの歴史は朝ドラみたいだなと思った。社長の坂井泰子を「女傑女史タイプではない」「若くて、美人で、悪ずれがしてない」と評する視線など、物語だからこそ伝えられる「あるある」への「もやもや」エピソードなども。ユニ・チャームの「ともに市場を開拓する」というのもさわやかで良い関係性だなと思った。
【生理全般について】
【生理全般について】
本書や選書の理由で出てきた布ナプキンだが、参加者の中で今までに使ったことある人がどのくらいいるか聞いてみたい
自分はないが気になってはいる。しかし、使い捨てのナプキンに慣れてしまっている
使ってる人がいたら感想を聞いてみたい
「クレヨンハウス(オーガニック商品などを販売するお店)」に行った際、中高年の更年期障害の方に布ナプキンをすすめている場面に遭遇したのでどんなものか知りたい。
布ナプキン派
洗うのが大変で、周囲にもおすすめしたいけどできない
使い捨てナプキンだとかぶれるようになったが、布ナプキンは使い心地は良い。
短所は接着剤がついてない海外の生理用品だとズレる、高価。
でも生理用品を買いに薬局へ行くのが半年に一回くらい
環境面では、布ナプキンが汚れた際、強力な洗剤を使うことを考えると、(布か使い捨て、どちらが環境に良いかは)どっちもどっち。
布ナプキン制作経験あり
自分たちで実際に作ったが、使う側ではなく布ナプキンを送る側であった
作ってみても自分たち自身は使えないかなという感じ
シンプルなやつを作ったが、サイズが小さく、学校や仕事でこれを使ってたらもれちゃうかもしれない
送った先が衛生環境が整っておらず、使い捨てナプキンがあまりなかったので、洗えば使えるもののほうがいいかもねということで送った
使い捨てナプキン派
後片付けがめんどくさそう…(洗って使うの?との問いに布ナプキン経験者…YES)
布ナプキンのデザイン性に魅かれるが汚れてしまうと考えるとためらう
一般の会社で生理休暇ってどれくらい使えるもの?
自分の会社では勤怠管理システムを使っている。まず普通の有給休暇として申請して、その後で人事に直接「これは生理休暇です」と伝える。取得したのが有給休暇ではなく生理休暇だと、直属の上司(男性が多い)には分からないよう配慮されるシステムはある。ただ、一社員の自分には、どれくらい使われてるのかはわからない。
就業規則にはあるけど、原則的には使えない。自分の会社は女性社員が2人しかいないので。有給休暇よりはるかに取得のハードルは高い。
自分の勤め先の女性は、高齢のパートタイマーが多い。社員は男性が多いので、あまり取得されていないと思う。でも、生理だからと言わなくても体調が悪ければ休める。
人によって重いときと重くないときがあり、定期的に取ってる人は取りやすいけど、普段重くない(痛くない)人がイレギュラーに取得すると「なんで?」と聞かれる。
生理本番より生理前が辛い。
生理の痛みは病院で証明も出せないものだから難しい。
インフラは本当に大事だなと痛感した。アンネナプキンのは当初「水に流せる」ものを作っていたが、それは下水道が整備されているからこそ出てくる発想。発展途上国に生理用品を送る活動については、学校の授業で「送ったあとのごみ問題」があると習った。ゴミを処理するのに埋めるしかない。でも地域によっては、宗教的な理由で生理用品は燃やせないこともある。生理用品をそのまま捨てればプラスチックが土に残り続ける。この場合、使い捨てナプキンを送るのは「善意の押し付け」になってしまう。それなら布のほうがいい。とはいえ、水が環境的に豊かではない(=布ナプキンをあらえない)場所もあるから難しい。
高校時代に生理用品を海外の途上国へ送った際は、(ミッション系の学校だったため)教会を通じて送った。その後、現地では実際にどのように使ってくれているのかまではわからない。
インフラが整っている(下水道が整備されている)からこそシンクロフィットも誕生した。
生理用品を購入すると紙袋に入れられるのは日本だけ。あの文化はいつから始まったのか気になった。
そういえば、エコバックが始まってからは使われなくなった。
読書会中に紹介された本やサイト
https://www.made-in-earth.co.jp/cloth-napkins/made-in-earth-cloth-napkins/
メイド・イン・アースの布ナプキン公式サイトhttps://youtu.be/d4MBD2vx8G8
玉姫様 戸川純 1984年https://news.yahoo.co.jp/articles/1ef0daf04fde4e3097cb49883455f4ee0ef25e78
湯が赤くなる入浴剤「赤いバスボム」の売り出し方が炎上した理由。女性が求めているのはそこじゃない(webマガジン mi-mollet)
オリジナルサブタイトル
※『生理用品の社会史』に続くサブタイトルを考えました。読書会のまとめとして、自分なりのサブタイトルを各自で考えて発表しています。詳しくはこちらをご覧ください。
「”月経小屋”から”アンネナプキン”へ」(azusachka)
「社会を映すセイの鏡」(ノビツムリ)
「タブーを超え、新たな生活を産み出した「アンネ」誕生の物語」(midori)
「女性の身体を取り巻く社会・経済発展」(berner)
「「恥ずかしい存在」から「女性活躍の一助へ」―アンネ社による、生理に対するイメージ払拭の歴史」(kimiko)