本ブログで,トランス脂肪酸および短鎖脂肪酸について解説した.「トランス脂肪酸 ヒトへの健康影響」についてふれた際に,下図のように,オメガ(ω)脂肪酸については,構造式,化合物名の最後に付記するにとどめていた.
.“必須脂肪酸”の「ω3脂肪酸」と「ω6脂肪酸」についても説明するために資料の準備をしていたら,1月8日のNHKあさイチで必須脂肪酸を話題にしていた.
注)必須脂肪酸はヒト体内で他の脂肪酸から合成できないため,それらを合成する他の生物を食物として摂取する必要がある.
放送は,一般の人向けのため構造式などが出てくることはないが,構造式と関連付けできる人のため構造式を示しておいた.
α-リノレン酸 ω3
エイコサペンタエン酸 EPA ω3
ドコサヘキサエン酸 DHA ω3
リノール酸 ω6
γ-リノレン酸 ω6
アラキドン酸 ω6
放送では,アブラの中には,人間にとって「生きる上で欠かせないアブラ」として.“必須脂肪酸”と呼ばれる「ω3脂肪酸」と「ω6脂肪酸」があり,どちらも体の細胞の材料となっているアブラであることを紹介していた.一般視聴者向けのわかりやすい構成であったので,ホームページの資料をもとに放送概要を纏めてみた.
最新の研究で,「ω3」と「ω6」をバランスよく摂取することが,重要だということがわかってきた.この比率が「1:2」を超えてω6が多くなると,動脈硬化を招き,「脳梗塞」や「心筋梗塞」などを引き起こすリスクが高まり,さらには,「花粉症」や「うつ病」などにも,このバランスが関係しているとのことである.
口に入るアブラを二重結合の有無で分類すると以下のように分類できる.ただし,飽和は二重結合のないもの.ωタイプはシス型二重結合を有するものである.
飽和脂肪酸 肉,牛乳,バター,卵黄,チョコレート,ココアバター,ココナッツ(飽和 84%,ω6 2%),パーム油
不飽和脂肪酸(トランス型を除く)
多価不飽和脂肪酸
ω3脂肪酸 魚の油(イワシ,サンマ,サバ等の青魚,サケ),くるみ,エゴマ油,アマニ油
ω3の代表的な脂肪酸は「α-リノレン酸」や「DHA」「EPA」がある
ω6脂肪酸 大豆油,コーン油,大豆油,ヒマワリ油,サラダ油
ω6の代表的な脂肪酸は「リノール酸」
一価不飽和脂肪酸
ω9脂肪酸 オリーブオイル(ω9 73%,ω6 7%)
代表的な脂肪酸は「オレイン酸」.食物から摂取するほか,体内で合成できる脂肪酸.
悪玉コレステロールだけを下げる効果
人間の体は,60兆もの細胞でできていて,その1つ1つの細胞の材料になっているのが,ω3脂肪酸である.ω3には細胞をしなやかにする働きがあり,ω3を十分にとっていると,全身の細胞の働きがよくなり,血液がサラサラになるというわけである.作用としては,ω3の代表的脂肪酸であるα-リノレン酸は血中中性脂肪を下げる作用があり,体内に入るとDHAやEPAに変換され,脳の正常な機能を支える働きをする .
ω6脂肪酸は,炒め物や揚げ物に使うサラダ油,鶏肉,豚肉,牛肉のアブラに多く含まれている.ω6脂肪酸も細胞の材料として使われているが,体内ではω3脂肪酸と反対の働きをしていることが知られている.ω6には,血液を固める作用があり,ケガをしたときに,血を止めるのに役立っている.しかし,ω6が体内で過剰になると,心筋梗塞や脳梗塞の原因となる動脈硬化を引き起こす可能性がある.
放送では,日本人の多くは1:10以上とのことであった.
九州大学 久山町研究室は,福岡県糟屋郡久山町の住民を対象に脳卒中,心血管疾患などの疫学調査を行っている.その久山町の調査で,血液中の「オメガ3脂肪酸」と「ω6脂肪酸」のバランスが「1:2」の割合を超えてオメガ6脂肪酸が多くなると,急激に死亡リスクが高くなることがわかったことを紹介していた.欧米型の食事が多くなった日本人は,「ω6」の過剰摂取により,「ω3」と「ω6」の比率が「1:6」や「1:10」になっているとのことである.
厚生労働省はω−3(EPA, DHA)を1日1000mg以上摂るように推奨している.そのためには2日に1食は魚を食べる,あるいは,少しずつでもよいので,ω3を多く含む食品を毎日食べる必要がある.
食品の含有量を知るための目安になる図版が,放送のホームページに掲載されているので引用させてもらったが,現在はリンク切れになっている.文部科学省 本食品標準成分表2015年版(七訂)をもとに作成されていることもあり,コピー阪を使用させてもらった.
オメガ3が多い食品(可食部100グラムあたり,ミリグラム)
サバ 2120,サンマ 3780,マグロ(トロ)5810,サーモン 1590,イワシ 2100,うなぎ 2420,カキ 290,
ムール貝 280,イクラ 4700,たらこ 1190,あん肝 7680,くるみ 8960,エゴマ油 58310,アマニ油 56830,しそ油 60000,サチャインチオイル 48600
オメガ6が多い食品
牛肉(カルビ) 1070,豚肉(はら)3320,鶏肉(もも)2660,ソーセージ 3380,卵 1490,バター 1860,アボガド 2030,マヨネーズ 23080,カレーパン 2190,ポテトチップス 12010,ドーナツ 5700,シュークリーム 930,大豆油 49670,コーン油 50820,ごま油 40880,米油 32110
コストを加味した結果は以下のとおりである.
参考資料
美と健康! アブラの新常識(NHK番組ホームページ).
NHKスペシャル 食の起源(3)▽『脂』~発見!人類を救う“命のアブラ”~ 番組HPへ 1月12日(日) 午後9時00分 ~ 9時50分 総合
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