文部科学省は2020年4月6日,大学や専門学校などにおける遠隔授業の実施にあたり,学生の通信環境などへ配慮を求める通知を学校設置者などに発出した.通信回線の利用に関しては,同時双方向型,オンライン教材などを用いたオンデマンド型など,遠隔授業の実施形態によって必要な通信量は多様であることから,「オンライン教材の低容量化」「教材のダウンロードを回線の比較的空いている時間帯に指定する」などの具体例をあげて,各校の状況に応じた取組みの工夫を求めている.注)ICTによる遠隔授業については文科省の資料をみてほしい.
一か月後の5月8日のNHKニューストップ › 社会ニュース一覧には以下の記事が掲載されていた.
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全国の大学でインターネットを使った遠隔授業が進められていますが、授業の動画などが回線を圧迫し市民生活に影響を及ぼすおそれがあるとして、情報通信の専門家が全国の大学に通信量を減らす「データダイエット」の工夫を呼びかけました。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、全国の大学ではインターネットを使った遠隔授業が行われていて、8日は各大学の情報システムの担当者や情報通信の専門家が問題点や対策などを話し合う会議をオンラインで開きました。
会議では、国立情報学研究所の喜連川優所長が、授業の動画などによってインターネットの回線が圧迫され市民生活に影響が出かねないとして、通信量を極力減らす「データダイエット」に協力を呼びかけました。
具体的な対策としては、教員が黒板などに書き込む様子を中継すると通信量が増えるため、資料をファイルとして共有することや、双方向の通信は質疑応答や議論の時間だけにして講義の動画は事前に送信しておくことなどを挙げています。
国立情報学研究所の喜連川所長は、対策によって回線がすいた分は顔が見えるやり取りが必要な子どもや、障害者の教育にも活用してもらいたいとしています。
最初から分かっていたことと思いながら,上記の記事を読んだ.
知り合いが東京で二つの大学(A, B)で,講師をしているが,片方のA大学は動画方式の遠隔授業を実施するよう求めてきているという.旦那は在宅勤務でパソコン会議,その横で子供がはしゃいでいる中で授業動画を制作,送出等不可能に近いと云っている.もう一つのB大学は静止画方式で大丈夫らしい.A大学の教務担当者は上記の記事で述べているようなことを理解した上で要求しているのだろうか.
オンライン授業における動画データの大きさとホームページ等に掲載し,提供される講義資料(静止画)の大きさを比較したら一目瞭然である.子供のころノートや教科書の隅に描いたパラパラ漫画を思い出せばよい.1秒間に何十枚もの静止画を転送する動画と比較したら,静止画は比べものにならないほど小さい.その上,黒板に書く等の動画を作るのには,ICTスキル(情報通信技術)の外に撮影機材等の操作法の習得も必要である.
ホームページに講義資料を掲載することは,きわめて簡単で,年をとった先生にも可能な時代になっている.なるべく講義資料の掲載を主とした遠隔授業を実施してほしい.その際,質疑応答はメールや電話にすればよい.多台数同時接続による遠隔授業は,動画が飛び交っても回線を圧迫しないような高度情報化社会が完全な形で実現するまで待つべきである.
ホームページの利用
私は,国立大,次いでお世話になった私立大学でも研究室のホームページを使って情報を発信することを勧めた.定年後10年の時間が経つが,独自のホームページを持っている研究室はわずかになった.
研究室ホームページがあれば,今回の遠隔授業(資料の提示を中心にした)は簡単に実施できるはずである.ホームページは元々HTML言語をマスターする必要があったが,最近は完成したイメージにそって文章を配置していけば,簡単につくることができる.私の一連のブログも同じ手法を用いている.作成法もブログに書いているので,見てほしい(参考資料 プログラミング言語を使わないHP作成)).
ホームページが講義を履修している学生以外の人に見られるのが嫌なら,全面公開ではなく,公開する相手を絞ることも可能である.
新型コロナ問題は,皮肉にも人間社会のいろいろな場面で改革を推し進める切っ掛けを作っている.ホームページ作成法の習得は,9月入学問題とは異なり,一個人がその気になればやれるマイナーな改革の一つといえる.
メールの利用
ホームページを利用する方式に焦点を絞り記述してきたが,ワープロが使えない教員はいないはずであることを前提にしたら,PDF(パスワード許可方式)のダウンロードが最も簡単かもしれない.ダウンロードできるようにホームページ上に配置することも面倒と思う教員はメールを使えばよい.電子メールによる教材の配信,次いで問題の配信,学生は決められた時間内に解答を返信する等を実施すればよい.採点,模範解答等もすべてメール添付すればよい.電子メールを利用すれば,画像処理などのノウハウを新規に勉強する必要はない.
2020年5月11日 17時54分新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの感染防止対策として、全国の大学では通常の講義に代わり、インターネットを使ったオンライン講義が増えていますが、初日にシステムのトラブルなどで影響が出る大学が相次いでいます。
全国に7つのキャンパスがあり、およそ3万人の学生が通う東海大学は、11日からオンラインによる講義を開始しましたが、10日の夕方から専用のサイトへの接続ができない状態となり、11日の午前中の講義に影響が出たということです。
午後1時までに障害は復旧しましたが、詳しい原因は調査中ということで、システムに何らかの障害が出た可能性あるとしています。
また、早稲田大学も11日からオンラインの講義を始めましたが、サーバーにアクセスが集中したことなどから、一部の動画の再生に不具合が出たり、エラー画面が表示されたりするトラブルが一時発生したということです。
このほか、先週からオンライン講義を開始した明治大学でも初日の今月7日に学生のアクセスが集中し動作が遅くなるなどの影響があったということです。
(2020.5.15)