生体信号処理の研究をしています
研究テーマ:非侵襲脳計測データのための解析手法の開発
非侵襲脳計測手法は、測定対象を傷つけないため人での測定が可能です。脳機能の解明や、神経疾患を持つ人と健常被験者との脳活動の違いを明らかにすることなどを目標に研究が行われています。
人の脳では、神経細胞の活動によって情報の伝達や処理が行われています。非侵襲脳計測の代表的な手法として、この電気的な活動を頭皮の外側から測定する脳電位や脳磁図と、神経細胞の活動に伴う酸素の代謝に関係する量を測定するfMRI(機能的磁気共鳴画像法)やNIRSがあります。
なかでもfMRIは、水素の原子核の共鳴現象を利用し、高い空間分解能で三次元的に脳の活動部位を特定できることが知られています。
神経細胞
BruceBlaus - 投稿者自身による著作物, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=28761830による
オランダ・フィリップス製MRI装置(3T)
(台北・三軍総医院)
KasugaHuang, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=680466による
非侵襲脳計測では、頭蓋と頭皮の外側から測定を行うため、適切な信号処理手法によってデータから知りたい情報を推定することが必要です。
fMRIにおいては、研究がはじまった当初から、興味がある実験条件と、それに対する対照条件を設定し、その二条件を数秒から十数秒ずつ交互にくり返しながら測定を行う実験デザインが用いられてきました。例えば、「測定対象が人の顔を見ているとき」が実験条件、「人の顔ではないもの(建物など)を見ているとき」が対照条件、などです。測定されたデータからこの二条件下の数値を比較し、実験条件において数値が高くなる脳の部位を特定します。
一方で、近年、安静時fMRIとよばれる、被験者が、何かを見たり聞いたり、タスクを行ったりしておらず、ただ安静にしているときに測定したfMRIデータの研究がすすんでいます。
私の研究室では、fMRIのための信号処理手法の開発を主として行っています。下記のような研究を行っています。
安静時のfMRIデータなどのような、自然な連続的な状況で測定したデータのための解析手法の開発。
従来よりも高い空間解像度で測定されたfMRIデータのための解析手法の開発。
fMRIデータの生成モデルへの適合度を指標とする解析