地球の動きを見る(その3)
2024年2月月5日開始、同2月23日修正、同4月7日、同7月23日改定
せのお たかのり
1.はじめに
地球の動きをレーザーのビーム位置の変化として観測する場合、観測装置を地上に固定して地球の自転を利用してビーム方向を変える方法では、地球の地軸方向の動きはスポット位置の変化に現れず観測出来ません。
下図の様に、同一時刻に観測装置の方向を180°変えながらスポット位置を観測すれば、ビームの向きによってスポット位置が反対方向に移動するので、これまで未観測だった地軸方向の動きを確認出来ます。スポットの移動量は、移動方向を南北で表すとビームの向きを変えてもスポットの移動方向は同じなので、ビームの到来方向に向かって左右どちらに動いたかでスポットの移動量を計測します。ビームの方向を変えるとスポット位置は逆方向に動くので、地球の速度はスポットの移動量の半分になります。この地軸方向の動きは、地球の自転の影響を受けず常に同じ移動量が観測されるはずです。
これまで述べた通り、地球の動く速度は光速(30万km/s)の1万分の1程度と遅く、ビーム位置の変化量はレーザーの光路長の1万分の1程度と非常に小さいので、観測装置を可搬型にすると共に、装置の変形を極力抑えた構造にする必要があります。
2.可搬型の観測装置
これまでの様に支持台に木材を使うと、高い剛性を持たせる為には厚みを増して柱にする必要がありますが、重くなり取り扱いが困難になります。更に、温度や湿度変化による変形を抑える為の重石も外せず 可搬型になりません。鉄製にすれば変形は少なくなりますが、重すぎて可搬型に出来ません。ビームの方向を容易に変えられる様に小型化と軽量化の両方が重要です。柱の中を中空にすれば剛性を保ったまま軽くできますが、その加工が大変です。プラスチックのパイプを使えば、素材として入手が容易な上に剛性が高く加工も容易です。
そこで下図の様に、厚さ2mm×直径75mm×長さ2mの塩化ビニルパイプを加工して、レーザーポインタを添わせる幅5mmの溝を掘り、ポインタの前後2か所を金具とネジでパイプに固定し、レーザーのSWは金具とテープで常にONにして置き、電池の裏蓋の回転でレーザーのON/OFを行える様にし、パイプの反対側を一部切り取り そりの出難い圧縮ボードを張り付けてその上にプラスチック製のスクリーンとカメラを糊付けし、パイプが回転しない様にその接地面を固定する太さ15mm×長さ110mmの木製ピンをパイプの4隅に張り付けた構造にしました。
この装置の予備実験で、ビームの向きによりスポット位置が大きく上下移動しました。地球の動きとしては説明出来ないので、パイプと床の接地面を確認した所、床に僅かなうねり(約1mm)が有り、パイプを置く位置によってレーザーの角度が僅かに変化し、スポットの高さに影響する事が分ったので、パイプの両端部分が床に密着する位置にパイプを置き、その場所でパイプの向きを反転させる様にしました。床のうねりによりパイプの中央部でも床とパイプが接触していたので、パイプは3点支持されている事になります。地球の地軸方向の動きは、スポット位置の南北方向の動きとして見られるので、観測装置は東西方向に置きました。
3.観測結果
下の図は、2024年2月2日18:13から3時間置きに2月3日18:09までに撮影したビームスポット位置の代表的な写真です。可変型の減光フィルタを使い、レーザー光をND=約300に減光してスポットサイズを約1mmに縮小させ、スポットの中心位置の割り出しを容易にしています。今回の測定では装置の向きを毎回反転させる為、同じビーム方向でもスポット位置のばらつきが約0.5mm程度発生しましたが、ビームの方向間(E2WとW2Eのグループ間)で、一定のスポット位置の差が南北方向に大きく発生している事が観測されました。この位置変化の傾向は観測時間に依存せず、床のうねりでも説明出来ないので、地球の地軸方向の動きで発生しているものと思われます。この南北方向の位置変化の平均値は水平方向ΔX=0.56mm、垂直方向ΔHeight=0.22mmでした。地球の地軸方向の動きでは、スポットの垂直位置は変わらないので、垂直方向成分(ΔHeight)は、床のうねりの不均等性で発生したものと思われます。残りの水平方向成分ΔXから、地球の地軸方向速度Eを求めると、日本の南北方向と地軸との間には35°の角度があるので、
E=光速C/光路長L×ΔX/2/cos35°=300000/1725×0.56/2/0.819=59.5km/s
となります。ビームを東から西に向けた時(E2W)、スポット位置のX座標が増加し(南寄り)、ビームを西から東に向けた時(W2E)、スポット位置のX座標が減少(南寄り)したので、地球の地軸方向の動きは北極星の方向と思われます。
3.観測結果が示す事
今回の観測結果が示すことは、これまでの観測結果から推定された銀河系の運動モデル(太陽系と同じ面上での回転運動)では説明できません。銀河系の回転面に対してほぼ垂直な面内の回転運動によるものと思われます。この様な回転面があると思われる根拠として、天の川の見える方向があります。天の川は恒星が沢山集まっている所で、夏と冬の夜空に南北に連なる長い星の帯として見えます。銀河系の形は他の銀河と同じ様な薄い円盤状と考えるのが自然です。土星の回転が土星の環を回転面上に形成したのと同様に、銀河系の円盤構造は銀河系の回転面に沿っていると考えるのが自然です。そうであれば、夜中には天の川は南北ではなく東西に長い帯として見えるはずです。しかし、夜中に天の川は南北に長く見えますから、この天の川は銀河系の回転とはほぼ直角方向の回転によって作られたと考えるのが自然です。その回転中心は、地球の地軸とほぼ直角の方向にあると思われますから、銀河系中心と言われているいて座の方向から北に23.4°上がった方向にあると思われます。他の銀河の例では、下右図に示すアンドロメダ銀河群の中のIC1559銀河(左上の小銀河)とNGC169銀河(その下の大銀河)の接近があります。これらの銀河は未だ交差するまでには至っていませんが、この様な大きさの近い2つの銀河が交差した状態が、現在の天の川銀河ではないでしょうか。太陽系や地球は、元は私たちの銀河の中で生まれその中で回転していましたが、その後、ほぼ垂直方向の回転面を持つ天の川銀河が接近して来て交差し、その回転の影響も受ける様になったので、地軸方向の動きが加わったのでは無いでしょうか。太陽系の中で天王星は、下左図の様に軸がほぼ90°傾いており、他の太陽系惑星とは異なります。その理由は、天王星は元々天の川銀河の中で生まれ、天の川銀河と同じ回転面を持っていたが、銀河同士の交差によって、近くにあった太陽の引力に捉えられ、回転面を垂直に保ったまま、太陽の周りを廻る様になったのではないでしょうか。