新聞のデジタル化

令和2(2020)年7月豪雨の時,熊本日日新聞はデジタル版の無料閲覧を実施していた.配達できない状況の中,大いに役に立ったと思われる.その後,同社は,同年12月から朝刊の購読料を3093円(税込み)から307円引き上げて3400円に改定し,別料金が必要だった紙面ビューアーサービスを無料で提供する形になった.紙面ビューアーは当日の午前5時から閲覧可能で,スマホやパソコンの画面で新聞紙面を見ることができる.また,495円プラスすれば米国最大の日刊経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」の日本版サイトが読める.今回のアナウンスでは,新聞を購読せずに「紙面ビューアー」のみの電子版サービスは見当たらない.

26年ぶりの値上げということで,一足前に値上げした北海道新聞が以下のように報じている.

熊本日日新聞、12月1日値上げ 朝刊のみ月ぎめ3400円に 北海道新聞 2020/11/10 10:58)

 熊本日日新聞社は10日付朝刊の社告で、12月1日から朝刊のみの月ぎめ購読料を3093円から3400円に値上げすると明らかにした。朝夕刊セットの月ぎめ購読料は3838円のまま据え置く。コンビニなどで販売する朝刊1部売りは10円上げて150円とする。2度の消費税増税時を除き、値上げは1994年2月以来。社告では「ここ数年、新聞製作と輸送の費用が上昇し、経営面でこれまでになく厳しい状況が続いている」として値上げを決めたと説明している。12月からは購読者が追加料金なしで新聞紙面や地域のニュースをスマートフォンやパソコンで見られる「熊日電子版」を始める。

北海道新聞の場合

北海道新聞社は2020年9月24日10月1日から朝夕刊セットの月ぎめ購読料(税込)を現在の4037円から363円引き上げ4400円に改定することを発表した朝刊のみ 3,800円 (税込)/月の購読で電子版も利用可能である.なお,電子版単独プランは4,037円(月額、税込)で,北海道以外に住んでいる方限定のプランがある.

北海道新聞の値上げを報じた朝日新聞の記事

北海道新聞、26年ぶり値上げ朝日新聞デジタル 2020年9月25日 5時00分)

 北海道新聞社は24日、北海道新聞の購読料について10月1日から朝夕刊セットの月決めを363円引き上げ、4400円(税込み)に値上げすると発表した。本体価格の値上げは1994年6月以来、26年ぶり。1部売りの定価は据え置く。

朝日新聞の場合

平成5年以来27年据え置いてきた朝刊のみの購読料が,令和2年10月1日から,3400円に値上げになった(2020年09月25日.宅配購読の場合,ダブルコースを選択すると,新聞購読料金3400円に加えて月額1,000円(税込み)でデジタル版も利用可能である.下図は朝日新聞デジタルのメールに頻繁に添付されてくる広告である.スマホ依存の若者を対象にした「ポイント進呈」が目玉になっている.

メールに添付されてくる画像

日本新聞協会が発表している統計によると,新聞の凋落が止まらないという.2017年10月時点の新聞発行部数の合計(朝夕刊セットは1部と数える)は4212万8189部と1年前に比べて115万部減少した.10年前の2007年は5202万8671部だったので10年間で約1000万部減ったことになる.全国紙が目標にしていた1紙1000万部がまるまる消えた計算になる.ちなみに最大の発行部数読売新聞であるが,現在800万部を切っている)

2018年(10月時点)は3990万1576部と2017年に比べて222万6613部も減少した14年連続の減少で遂に4000万部の大台を割り込んだ新聞発行部数のピークは1997年の5376万5000部21年で1386万部減り,率にして25.8%減4分の3になった

2019年10月時点の総発行部数は前年比5.3%減の3780万1249部であった.2020年は35,091,944部であり,引き続き減少傾向が続いている

新聞購読数の推移

最高部数を記録した1997年と2017年の間は5年間隔で示した.

デジタル化すれば,改善するという意見もあるが,果たしてそれだけで解決することができるだろうか,自分自身だけを考えた場合,ニュースの入手先は以前に比べると大幅に変化している.パソコン,タブレット,スマホ等を使用していると,こちらが望むわけではないのにニュースが飛び込んでくる時代である.毎朝,新聞紙を開いて見出しを見ても内容は既知のものがほとんどで,中身を読むことが少なくなってしまった.2016年にはスマートフォンの保有率がパソコンを抜いた.2019年の統計によると,世帯におけるスマートフォンの保有割合が8割を超えた.

主な情報通信機器の保有状況(世帯)

世帯におけるスマートフォンの保有割合が8割を超えた

2019年における世帯の情報通信機器の保有状況をみると、「モバイル端末全体」(96.1%)の内数である「スマートフォン」は83.4%となり初めて8割を超えた。「パソコン」は69.1%、「固定電話」は69.0%となっている(図表5-2-1-1)。

最近,新聞の一面あるいは両面を使った大型広告を見ることが多くなった.このようなインパクトは紙媒体でしか実現できない.一方,デジタル化すれば動く画像や動画が使用できる.広告料収入面は部外者には予想できないが,デジタル版では新聞のどの面が読まれているかどんな広告が注目されているかなど追跡が可能である.

従来,高齢者はテレビと新聞が情報源であったが,徐々にSNS利用者が増え80歳以上でも40%を超えている.スマホ世代の高齢化に伴い,その傾向が増すのは必至である.新聞のデジタル化に成功したニューヨーク・タイムズ紙を手本にした動きは加速するものと思われる.ニューヨーク・タイムズの紙媒体の発行は20年後には終了する見通しとのことである.

本題から離れるが,新聞で包む文化は健在のようである.野菜や果物を新聞紙で包んで保存する方法や生ゴミを包むメリットを活用している人もまだいるとのことである.これらのことが昔話になるのはそんなに遠いことではないかもしれない.