DH教育国際シンポジウム
DH教育国際シンポジウム
2025年9月23日(火曜) 13:00-17:00
慶應義塾大学三田キャンパスG-Lab
同時通訳付き/ハイブリッド開催
参加申込みフォーム(無料、要事前申込み)
共催
科研費特別推進研究「デジタル研究基盤としての令和大蔵経の編纂―次世代人文学の研究基盤構築モデルの提示(JP25H00001)」
人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業・研究基盤ハブ
人文学におけるデジタル技術の応用としてのデジタル・ヒューマニティーズ(DH)は、二つの分野の方向性の相違ゆえに、研究のみならず教育に関しても様々なアプローチがあり得る。本シンポジウムでは、教育面に焦点をあて、オランダのアムステルダム大学とドイツのケルン大学の事例を報告していただくとともに、日本でのいくつかの事例についても共有し、DH教育が有する幅広い可能性について議論する。
Karina van Dalen-Oskam (ホイヘンス研究所/アムステルダム大学)
Karina van Dalen-Oskam教授は、Huygens研究所(KNAW)の計算機文学研究グループを率い、アムステルダム大学においても計算機文学研究の教授を務めている。彼女の研究では、文学作品における創作作家の文体分析において、定量的手法と定性的手法を組み合わせている。また、固有名研究の専門家であり、文学作品中の固有名詞の用法と機能を分析する文学人名学(Literary Onomastics)を専門としている。
Øyvind Eide (ケルン大学)
Øyvind Eide氏は、ケルン大学においてDHの教授を務めている。2013年にロンドン大学キングス・カレッジでDHの博士号を取得した。1995年から2013年までオスロ大学でさまざまな職務に就き、DHおよび文化遺産情報学に携わってきた。2013年から2015年まではパッサウ大学の講師兼研究員を務めた。2016年から2019年まで欧州DH学会(EADH)の会長を務め、2025年にも再び会長に就任している。また、ICOM(国際博物館会議)の国際文書委員会(CIDOC)を含む、複数の国際組織にも積極的に関わっている。
彼の研究関心は、メディア間の差異に批判的に向き合うための手段としての変容的なデジタル・インターメディア研究にあり、特にテキストと地図というコミュニケーション媒体の関係に注目している。また、人文学およびそれを超える分野におけるモデリングの理論的研究にも取り組んでいる。
大向一輝(東京大学)
東京大学大学院人文社会系研究科准教授。博士(情報学)。2005年国立情報学研究所助手、2007年同助教、2009年同准教授を経て、2019年より現職。デジタル人文学、ウェブ情報学、学術コミュニケーションの研究教育に従事。デジタルアーカイブ学会理事、人工知能学会理事。
安形麻理(慶應義塾大学)
慶應義塾大学文学部教授。博士(図書館・情報学)。専門は書誌学、書物史。グーテンベルク聖書を中心とする西洋の活版印刷術黎明期の書物を対象に、デジタルデータを用いて研究している。教育面では、DH関連の授業のコーディネータや分担を務めている。
本間友(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)
慶應義塾大学大学院(美学美術史学)修了後、同大アート・センターにて展覧会の企画、アーカイヴの運営、地域連携プロジェクトの立案を行う。2018年よりミュージアム・コモンズの運営に関わる。専門は、アート・ドキュメンテーション、博物館学、人文情報学。
永崎研宣(慶應義塾大学)
慶應義塾大学教授/一般財団法人人文情報学研究所主席研究員(兼任)。専門は仏教学・人文情報学。日本印度学仏教学会常務委員、日本デジタル・ヒューマニティーズ学会議長、デジタルアーカイブ学会理事。主な著書・論文に、京都大学人文科学研究所共同研究班編・永崎研宣著『日本の文化をデジタル世界に伝える』(樹村房、2019年)、「仏典研究とテキスト構造化」(『印度学仏教学研究』72(2)、2024年、725-730頁)、"Contexts of Digital Humanities in Japan",Digital Humanities and Scholarly Research Trends in the Asia-Pacific, 2019, pp.71-90. など。
プログラム
13:00–13:10
開会挨拶
永崎研宣(慶應義塾大学文学部/一般財団法人人文情報学研究所)
13:10-14:10
オランダの大学・研究機関におけるデジタル・ヒューマニティーズ
Digital Humanities at universities and research institutes in The Netherlands
Karina van Dalen-Oskam
オランダは西ヨーロッパの小国で、人文学部を有する大学が8校ある。本講演では、これらの大学のカリキュラムの中でデジタル・ヒューマニティーズ(DH)がどのように位置付けられているか、そして教員がどのようにスキルを向上させることができるのか、その概要を紹介する。大学の外でも、オランダ王立芸術科学アカデミー(KNAW)傘下の複数の研究所がデジタル・ヒューマニティーズの発展の最前線に立っており、そのためDH教育にも役割を果たしている。このことは、デジタル・ヒューマニティーズの一分野である計算文学研究(Computational Literary Studies)の現状を通じて紹介する。 .
14:30-15:30
ケルンにおけるDH教育課程:実践と理論の出会い
DH study programmes in Cologne: practice meets theory
Øyvind Eide
ケルン大学における最初のデジタル・ヒューマニティーズ(DH)の教育課程は1997年に設立された。現在では2つの学士・修士一貫課程を有しており、さらに、計算機科学、デジタル考古学、言語学、中世研究など、複数の修士課程に対してもモジュールを提供している。本講演では、まず教育課程の構造を紹介し、その後、教育方法論について詳しく議論する。この中では、学生の実践的な作業がいかに現在の研究テーマと相互作用しているかを示すいくつかの具体例を提示する。例としては、演劇史、メディア考古学、デジタル・マッピング、学術的編集/書物史などが含まれる。特に、3Dモデリングや仮想現実の活用に焦点を当てる。たとえば、「Playing the Past, Predicting the Future: Sortes Texts in Virtual Reality」というプロジェクトを通して、その応用事例を紹介する。
15:30-15:45
東京大学におけるDH教育と研究:方法論と研究インフラを中心に
DH education and research at the University of Tokyo: Focusing on methodology and research infrastructure
大向一輝 / Ikki Ohmukai
東京大学では10年以上前からDH教育に取り組み、大学院生向けのプログラムを提供してきた。今年度よりこのプログラムを大幅に拡充し、DHの研究方法論と研究インフラの両面を体系的に学べるカリキュラムに発展させている。本講演では、教育プログラムの概要と受講者による研究成果を紹介し、DH教育の課題と展望について議論する。
15:45-16:00
慶應義塾大学におけるDH教育と研究の展開
安形麻理 / Mari Agata and 本間友 / Yu Homma
慶應義塾大学では1996年に貴重書のデジタル化と研究を行うプロジェクトを立ち上げ、学部生・大学院生に実践的な教育の場を提供し、あわせて学部生向けの授業を開講してきた。それ以来、個々の研究者がDHに関わる研究や授業を展開しており、特に図書館・情報学専攻の一部の教員は段階的にDH教育を充実させてきた。2022年度からは文学部の諸専攻の教員が協力し、大学院生向けにDHの方法論や実践的スキルを扱う科目などを開いている。一方、慶應義塾ミュージアム・コモンズでは、学生協働を含む様々な教育実践を進めるなかで、人文学的デジタルコンテンツの活用にも力を入れており、昨年は3D Scholarly Editingのワークショップも実施した。このような流れのなかでシンポジウムやワークショップを積極的に開催し、大学院生や若手研究者の発表も活発になっている。本発表では、こうした取り組みの現状を紹介する。
16:20-16:55
全体討論
司会:永崎研宣 / Kiyonori Nagasaki
16:55-17:00
閉会
共催
人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業・研究基盤ハブ
科研費特別推進研究「デジタル研究基盤としての令和大蔵経の編纂―次世代人文学の研究基盤構築モデルの提示(JP25H00001)」
後援
慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻
一般財団法人人文情報学研究所
科研費基盤研究(B)「人文学の研究方法論に基づく日本の歴史的テキストのためのデータ構造化手法の開発(JP23K28385)」