放射線防護の民主化フォーラム2023-203X

 放射線防護に関しては、原子放射線影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)が科学的知見をとりまとめ、国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告を作成、それが国内に取り入れられるという手順になっています。しかし、UNSCEAR2020/21報告書には様々な問題点がありますが、社会的には、それらが知られておらず、「放射線関連のがん発生率上昇は みられないと予測される 」という印象が国内外に浸透しています。

一方、ICRPは2020年にチェルノブイリや福島での原発事故の経験をふまえて改訂したとする勧告「大規模原子力事故における人と環境の放射線防護」(ICRP Publication146)を発行しました。その草案へのパブリックコメントでは、日本政府の非体系的な政策について記述していないこと、論文撤回が生じたことを無視して科学者と市民の共同専門知を推奨していることなど、日本からも含め300通もの批判的な意見が寄せられましたが、大きく変更されることなく刊行されてしまいました。


さらに、福島での20mSv基準やICRP Publication146などのもとになったICRPの基本勧告が2030年頃に改訂される予定です。ICRPは、2023年11月6日-9日の間、東京でICRP2023総会を開催します。このためICRPに対して、“被災した市民の経験を放射線防護に活かすために: ICRP 146改訂のふりかえり”‟ICRP新基本勧告に向けて:市民の観点から導入すべき点”“福島における甲状腺がん”という3つのセッションの設置を提案しました。あわせて市民の参加を容易にするために、上記セッションの福島での開催、通訳の設置、参加料金の免除などを要望しましたが、すべて拒否されました(一連の経緯はこちらから)。


 福島核災害時の放射線防護の最大の問題は、市民の人権や意向を無視した方策がとられてきたことだと考えます。基本勧告などでは利害関係者の参加を謳いながら、ICRP東京での総会に市民の参加を認めようとしないICRPのありかたには大きな問題があります。

 UNSCEAR、ICRPに対抗するだけでなく、2030年頃のICRP基本勧告改訂への対応を可能とする、長期的な取り組み体制をつくる必要があります。

質問などありましたら 濱岡@慶応大学商学部まで。 hamaoka*fbc.keio.ac.jp   *を@に変更してください。