2025.4.19 手話de読書会
2025.4.19 手話de読書会
去る4月の読書会では、趣向を変えて「マンガを深読み!」をテーマにしました。
まず、この作品をご覧ください。
・・・「なんだこりゃ?」と思った方が大半ではないでしょうか。
これは1984年の「のらくろ」50周年の記念誌の中に載っていた作品。
戦前、子どもたちに大人気だった「のらくろ」(作者・田河水泡)を読んで
育ったマンガ家たちがそれぞれ4ページの短編マンガを寄せています。
手塚治虫、石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄、ちばてつや、
松本零士といったビッグネームがずらり。
少年時代に読んだ思い出やお祝いメッセージといった内容が大半なのですが、
その中で1つだけ異質な作品がこれ。
私がこれを読んだのが中2のとき。「なんだこりゃ?」と最初は面食らいました。
しかし、ゆっくり丹念に読んでみると。
マッカーサー、吉田茂首相に額縁ショー、「君の名は」といった戦後風俗から
始まってテレビ勃興期、ダッコちゃん人形、新幹線、ビートルズなど高度成長期。
そしてパンダ来日、ON、インベーダーゲームと昭和史をたどります。
そして最後の大コマは「先生」こと田河水泡氏の「えっ」と驚く顔・・・。
このマンガのポイントはおそらく、田河水泡氏のバックを飛行するたくさん
の機影。軍用機のように見えます。
そもそも「のらくろ」とは?
野良犬のらくろが軍隊に入り、当時の中国軍を模したと思われる「豚軍」、
ソ連軍を模した「熊軍」などと戦い、二等兵から上等兵、曹長、中隊長・・・と
出世していくストーリーです。
知恵と勇気で次々と敵を撃破して昇進していく愛嬌たっぷりの「のらくろ」は、
戦前の少年たちのあこがれだったといいます。
そこであらためてこのマンガを見直してみると──
”先生、そろそろ「のらくろ」に出演していただきたいのですが・・・”
そのとき思い出したのは、中学校の教職員室の壁に貼られていた「この道は
いつか来た道」のポスター。
当時はまだ中2で政治や国際情勢の深いことなんてわかりませんでしたが、
レーガン・中曽根の右傾化とかトマホークミサイル配備とか「核の冬」とか
のようなコトバが新聞やテレビでよく流れていたご時勢。
そんなときにこのマンガを見て、「あ!そういうことか」と独り合点したのでした。
田河水泡氏の再登場、すなわち、かつての戦争前の状況に戻るぞという警鐘。
そう気づくと、最後のコマも不自然に暗く、不穏な空気感が漂っています。
これが風刺というものか。
「ドラえもん」のような素晴らしいマンガがある一方で、マンガでこういう
メッセージが描けるんだ。
そのように感じ入った作品として、いまも印象に残っています。
続いて「マッチ一本の話」(鈴木翁二・1972年)
こちらは35ページの中編なので、一部抜粋。
夜更けの道で出会った少年と薬売りの男。煙草を吸うためにマッチを擦る。
そこから始まる幻想的な世界。
1つ1つのコマの描写が詩的で美しいのですが、ストーリーは難解。
この本を買ったのは高1の夏休み。
初めて読んだときは「なんだこりゃ?」と頭を抱えて転げ回りました(笑)
その後も何回か読み直したけれどコマを眺めるのみ、ストーリーを理解
する努力は半ば放棄。
しかしこの読書会で、1ページずつ読み込みながら色々な意見や解釈を
交換しあうと、「そうだったのか!」「そういう読み方もできるんだ」と
長年謎だった
作者の意図が少しつかめたような気がしました。
その詳細は割愛しますが、まさしく「三人寄れば・・・」の力を実感した
読書会でした。
すごく楽しめたので、6月にもう一回、同じような「マンガの深読み」を
企画しています。
対象マンガのメインは石ノ森章太郎氏の短編作品を予定。
難解なもの、深く考えさせられるものなどが数多くあるので、それらを
ご紹介するとともにみなさんと一緒に解釈の楽しみを味わえたら、
と思っています。
またみなさんのオススメのマンガの持ち込みも大歓迎です!
イベント概要
「このマンガのラストはいったい何を言いたいのか?」
今でも引っかかっている・・・
そんなマンガはないでしょうか?
今回は、「オチがわからない」「作者の意図はいったい何?」
そんなマンガを集めて深読みしてみましょう!
もしそういうマンガがあればぜひご持参ください。
いくつかのマンガを題材に話し合います。
そしてマンガの奥深い世界をのぞいてみましょう。
時 間 :13:30~15:30
会 場 :大阪市立総合生涯学習センター
(大阪駅前第2ビル5階)
参加費 :500円