きこえない人のための音楽講座(第2回目)
きこえない人のための音楽講座(第2回目)
音楽スタジオに華やかな赤いドレスで登場して、場を沸かせた声楽家の平井さやかさん。3回連続企画音楽講座2回目となる声楽講座。ピアノの生演奏、手話通訳つき!
14名参加。
ソプラノ(女声の高い音域)の歌を間近に鑑賞して、どのようにして声を出すのか、オペラとはどういうものなのか、見どころは何なのか、きいてみようというもの。
昨年の秋、音楽講座に音楽活動をしている方をお招きできないかと考えて、学生時代に大道具作りで関わっていた芸術大学ミュージカルグループ同窓生のSNSに書き込んでみた。
真っ先に手を挙げてくださった平井さんは、普段は声楽教室や学校公演などで活動をしている。
何度もやり取りをして互いのイメージをすり合わせ、視覚的な伝達の工夫や情報量の加減を相談しながら計画してきた。
平井さんからいただいた資料をもとにスライドを作ることにして、オペラの登場人物の図解を描くために、物語や時代背景を調べたりした。
そうして迎えたこの日。
音楽の中田先生に手話通訳をしていただき、講座の前半は発声方法の説明。
それからオペラの成り立ちや有名な演目「ジャンニ・スキッキ」の解説、この演目で歌われるアリア(オペラの中で、一人で歌われる曲)「私のお父さん」の実演。
後半は、作曲家マスカーニによる歌曲「アヴェ・マリア」の実演。
感想・質疑応答タイムを長めに取り、 石川啄木が作詞をした歌「初恋」の実演で終了。
参加者からの質問に答える平井さん
自然で美しい立ち姿勢を保つこと、体操で全身を動かして胸郭を広げること、横隔膜を活発に動かして呼吸することを実演しながら説明していただいた。
呼吸する平井さんの背中に触れさせていただき、肺がふくらんで強度が増すのを直に感じ取った。
また、平井さんの唇に風船をあてて発声していただき、一人ずつ風船に触れて低音と高音の違いを感じ取る体験をした。
「声楽は身体が楽器」という説明に納得。
次に、大掛かりな舞台美術の写真や図解スライドを示しながらオペラの発祥や有名な演目「ジャンニ・スキッキ」の解説。
そして「ジャンニ・スキッキ」の中で歌われる「私のお父さん」や、キリスト教の讃美歌でもある「アヴェ・マリア」をイタリア語で歌っていただいた。
ピアノの生演奏の前で歌われる音声は、日常生活の中で補聴器できいている音をはるかに超えた強い刺激として伝わってきた。
表情の変化や全身の動きからも情熱的な雰囲気が伝わってくる。
イタリア語の歌詞字幕(その下には日本語訳の字幕)を指し示す中田先生の身体も、リズムに合わせて揺れていた。
参加者の皆さんのきこえ方は様々で床に座ったり、金属や風船に触れてみたり、仰向けになって目をつぶってみたりするなど、それぞれの感じ方を試みていた。
風船に触れて音声の低音と高音の違いを感じ取る体験
ジャンニ・スキッキの相関図
感想・質疑応答タイムでは声種の違いは何か、有名な声楽家の何がすごいのか、声種は鍛錬によって身につくものなのか、字幕付きのオペラはあるのか、オペラとオペレッタの違い、オペラで歌われる言語、呼吸や発声、トレーニングについて、体調管理のために心がけていること等、多くの質問が出てきた。
生のオペラを間近で聞いたのは初めてで、鳥肌が立った。
オペラが身近に感じられた。
声楽家や音楽家、ピアニストや小さな楽団でも交流できたら嬉しい、聴く事を諦めず、耳と心、身体から音楽を感じて感動したい。
生活で心がけていることや発声方法をきけて、ためになった。
顔や身体の表情が豊かで、楽しかった。
等の感想を寄せていただいた。
終わった後、平井さんより「普段当たり前のように演奏していたことを、不思議に思ったり根本はどうなっているのかと思ったりしながら感じてくださっていることがわかり、表現の方法や舞台そのものの価値を考えさせられた。」とおききした。
人生が豊かになるのを感じられた、素敵なひとときだった。
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