孔や中空構造などの空間はネガティブスペースと呼ばれます.ナノ・マイクロスケールにおけるネガティブスペースでは,その幾何構造や変形挙動に起因して力学的・光学的に新奇な機能の発現をします.本研究では,このネガティブスペースを受動的な空隙ではなく機能発現の主体として捉え,構造設計,作製手法の開発,さらには応用技術の創出まで一貫して目指しています.
D. Natsuhara et al., “XXXXXXXX”, XXXXX, Under review.
細胞内の分子の分布を解析することは,細胞の機能発現を理解するうえで重要である.近年,ナノサイズの探針を細胞内に刺入し,探針増強ラマン分光(TERS)により分子同定を行う研究が進められているが,二つの課題が存在する.第一に,細胞膜を低侵襲に穿刺する探針形状の設計である.細胞膜に過度な負荷を与えると細胞死を誘発し,生細胞での計測が困難となる.従来は探針を数十nmまで尖鋭化することで刺入が試みられてきたが,作製プロセスが煩雑であるという問題があった.第二に,高強度のプラズモン共鳴を生じる探針材料の選定である.従来広く用いられてきた銀は高いプラズモン共鳴を示すが,細胞毒性を有し,さらに細胞内環境において酸化,硫化を受けやすく,計測安定性に課題があった.
そこで本研究では,約20nmの細孔を有するメソポーラス構造を設けた金被膜に着目した.メソポーラス構造では,細孔周辺において局在電場が増強され,高いプラズモン共鳴がきたされるとともに,金は化学的に安定性に優れる.作製したメソポーラス金被膜探針は,探針直径170nmほどであり,表面に約20nmの細孔を有する.本探針を用いて細胞への穿刺を試みたところ,非多孔質探針と比較して穿刺確率が向上し,かつ低荷重での穿刺が可能であることを確認した.これは,メソポーラス骨格構造により細胞膜を複数点で拘束することで膜の流動性が抑制され,穿刺が促進されたためと考えられる.さらに,メソポーラス構造に起因する安定かつ高強度なプラズモン共鳴を示し,細胞内における分子同定が可能であることを実証した.
Y. Tajiri, D, Natsuhara et al., in preparation.
光造形3Dプリンタ等の普及により,微細な構造物の造形は一般的な手法となった.しかし,中空構造は未硬化のレジンが滞留することから,造形が困難といった課題がある.本研究では,造形中の中空構造のレジンの排出過程に着目し,「ネガティブサポート」という新たな設計概念を提案した.所望の中空構造に対して,ネガティブサポートを設けることで,微細中空構造の高精度な造形が可能となった.
T. Watanabe, D. Natsuhara et al., in preparation.
従来,マイクロ流路内での流体操作には,電磁弁や空圧弁を用いたバルブ制御が広く用いられてきた.しかしこの手法では,複数の流路の制御のためには対応する数の弁が必要となり,制御が複雑化し,システム全体が大型化するという課題がある.
本研究では,人の把持などの入力によって流路の開閉を実現するマイクロ流路型インタフェースを開発した.開発したマイクロ流路は,圧縮方向に対して応答依存性を有することを明らかにした.さらに,本インタフェースを用いることで,デバイス内部の応力分布の可視化が可能であることを示した.これにより,知育玩具などの教育やリハビリテーションデバイスへの応用が期待される.