公立はこだて未来大学
複雑系知能セミナー
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運営委員が増えました.
2024年後期は基本的に月曜(4限:14:50~)または火曜(5限:16:30~)の夕方に実施します.
運営委員
加藤 譲(FUN* 複雑系コース)
香取 勇一(FUN 複雑系コース)
加納剛史(FUN 知能コース)
栗川知己(FUN 複雑系コース)
佐藤 直行 (FUN 複雑系コース)
高木 清二 (FUN 知能コース)
竹之 内 高志(政策研究大学院大学)
田中 吉太郎(FUN 複雑系コース)
山田恭史(FUN 複雑系コース)
由良 文孝(武蔵野大学 工学部 数理工学科)
義永那津人(FUN 複雑系コース)
*FUN:公立はこだて未来大学 システム情報科学部 複雑系知能学科の略称
第17回複雑系知能セミナー
開催日時:2024年 11/25(月) 14:50 - 16:20
対面及びオンライン形式(ハイブリッド形式)で開催します.登録はこちら
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟 R791教室
講演者: Antoine Nicolas Diez氏(京都大学)
講演題目: Multiscale models for large systems of point particles, rigid bodies and soft bodies.
概要:Complex self-organized patterns and structures can emerge from active particle systems when the number of particles becomes very large. Typical examples include flock of birds, crowd motion, swarming of active cells and bacteria but also opinion dynamics or wealth distribution. More recently, these concepts have also been applied in optimization and data sciences to design efficient particle-based algorithms. In this talk I will present various multiscale analytical and numerical concepts for three types of particles: point particles, rigid bodies and soft bodies. The study of point particle systems originates from statistical physics. The field is by now well-understood and combines stochastic methods at the microscopic scale, PDE models at the mesoscopic and macroscopic scales and powerful numerical solvers. Rigid bodies are typically used to model flocking in 3D. Here geometry adds another layer of difficulty but gives rise to new self-organized phenomena. Finally soft bodies are used to describe e.g. foams and multicellular systems in biology. They are much more complex since they require to find a mathematical and numerical way to model shapes, volume constraints and non-overlapping interactions. For this latter part I will introduce a new optimal transport approach.
第16回複雑系知能セミナー
開催日時:2024年 11/11(月) 14:50 - 18:00
対面及びオンライン形式(ハイブリッド形式)で開催します.登録はこちら
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟 R791教室
講演者: 津田 一郎氏(札幌市立大学)
講演題目:脳の機能分化を可能にするための変分原理と脳型AIのための基礎理論
概要:従来の自己組織化理論は、系が非平衡状態においていかにしてミクロな要素の相互作用がマクロな秩序形成を可能にするかに関する理論であった。そこでの大きな仮定は系が何らかの不変集合が存在するという意味で定常状態にあるということであり、それを保証するために境界条件は固定された。しかしながら、脳の発達過程や脳神経系の進化過程に見られるように、境界条件自体が変化することで系は非定常状態になる。このような非定常状態における自己組織化をいかに定式化したらよいだろうか。我々は系全体に拘束条件が作用する拘束条件付き自己組織化を考えてきた。拘束条件を系全体にかけることで、むしろ系を構成する要素に自己組織化が起こり、機能素子が生まれることが分かった。我々はこれを脳の機能分化の原理と捉え、これを可能にする変分問題を考えた。いくつかの成功例を紹介する。この研究をベースにして、現在の生成系AIの物理的基礎を復習し、その欠点を指摘する。脳に学ぶ次世代のAIの姿を探る一助としたい。
講演者: 吉田 正俊氏(北海道大学)
講演題目:身体性認知と自由エネルギー原理
概要:身体性認知、とくenactive approachでは、われわれの認知は「外界からの入力によって脳が活動する」といった片方向のものというよりは、知覚と行為の循環によって創発されるものと捉える。本講演では、このような認知観を形式化するために、近年提唱されている自由エネルギー原理(FEP)が活用できるか批判的に検討する。FEPでは「いかなる自己組織化されたシステムでも、環境内で(非平衡)定常状態でありつづけるためには、そのシステムの変分自由エネルギーを最小化しなくてはならない」と提唱する。つまりFEPは生物にとっての変分原理となることを標榜している。この点についても検討を加えたい。
講演者: 飯塚 博幸氏(北海道大学)
講演題目:構成的・現象論的アプローチによる意図性の創発モデリング
概要:本発表では、意図性の創発に関する二つのアプローチを紹介する。一つは意図や目的が自己保存を通した知覚と行為の循環の中に創発するという構成的アプローチであり、もう一つは自己と他者の不可分性を前提とした現象論的アプローチである。両アプローチともにニューラルネットワークを用いたシミュレーションモデルによって、意図性の生成モデルを構築する。構成的アプローチでは、Enactive approachに基づき、ニューラルネットワークにホメオスタシスを導入することでトップダウン的な制御を実現する。これにより、知覚と行為の循環から意図性が創発するプロセスをモデル化する。現象論的アプローチでは、自他を区別することなく処理する重ね合わせメカニズムを導入する。このモデルは、単に自身の将来の感覚を予測するだけで、自他の処理が自然と内部に共有され、他者の視点取得が可能になることを示す。さらに、この自他処理の共有と視点取得の能力が、意図性の創発と伝播にどのように寄与するかを明らかにする。これら二つの異なる視点からのモデリングを通じて、意図性の認知プロセスについて包括的な理解を目指す。
第15回複雑系知能セミナー
開催日時:2024年 10/15(火) 16:30 - 18:00
対面及びオンライン形式(ハイブリッド形式)で開催します.登録はこちら
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟R791教室
講演者: 半田 高史氏(広島大学)
Dr. Takashi Handa (Hiroshima University)
講演題目: 大脳皮質と基底核のマルチセルラー活動から読みとく行動選択情報
(Behavioral Selection Information Decoded from Multicellular Activity of the Cerebral Cortex and Basal Ganglia)
概要:状況の変化に応じて適切な行動を柔軟に選ぶことは重要な機能である。大脳皮質と皮質下の基底核をつなぐ神経ネットワークは、適切な行動を選択する機能の神経基盤である。しかし、大脳皮質と基底核の神経細胞がどのように情報を処理しその神経ネットワーク上を伝達するのか、その神経機構は不明な点が多い。ラットが行動の結果をもとに次の行動を選択する課題を実行中、大脳皮質と基底核の多数の神経細胞の活動(マルチセルラー活動)を同時に記録した。異なる領域のマルチセルラー活動に対して、どんな情報をどのように処理するかを単一細胞レベルおよび細胞集団レベルで分析することでこの問題にアプローチした。大規模神経活動記録から得られた高次元データに次元圧縮法を適用し、抽出された神経活動の特徴から見えてきた大脳皮質と基底核が協調的に符号化する情報とその処理機構について議論する。
Flexibly selecting appropriate actions in response to changes in the environment is a critical function. The neural network connecting the cerebral cortex and the subcortical basal ganglia forms the neural basis for selecting appropriate actions. However, much remains unknown about how neurons in the cerebral cortex and basal ganglia process and transmit information across this neural network. We recorded the activity of numerous neurons (multicellular activity) in the cerebral cortex and basal ganglia simultaneously while rats performed tasks requiring them to choose their next action based on the outcome of previous behavior. By analyzing how information is processed in these different regions at both the single-cell and population levels, we approached the problem. We applied dimensionality reduction techniques to the high-dimensional data obtained from large-scale neural activity recordings and discussed the information encoded cooperatively by the cerebral cortex and basal ganglia, as revealed through the extracted neural activity patterns, and their processing mechanisms.
第14回複雑系知能セミナー
開催日時:2024年 7/22(月) 16:30 - 18:00
対面形式で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟R791教室
講演者: 斎藤稔氏(広島大学)
講演題目: 変形細胞モデルを用いた大規模シミュレーション
概要:細胞の変形能力は組織の剛性・流動性を決定しうる重要な要素である。細胞変形が組織全体に与える効果を紐解くためには、自由な変形を記述でき大規模な細胞集団を扱えるような柔軟な数理モデルが必要となる。我々は細胞形状とその変形を記述する数理モデルを開発し、多様に変形する細胞集団の大規模シミュレーションを可能とした。この手法を用い、密集した細胞集団のシミュレーションを行ったところ、ゆるく結合した上皮や間葉系様の形状を持つ細胞の集団では、強く密着した上皮細胞集団とは質的に異なる流動状態が出現しうることを明らかにした。
第13回複雑系知能セミナー
開催日時:2024年 5/23(木) 15:30 - 16:30
対面形式で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟R791教室
講演者: 脇田 大輝 氏(東京大学)
講演題目:腕の数が変わっても臨機応変に動ける「棘皮動物」の怪
概要:なぜ動物は身体がいろいろな形に進化しても、一つの個体としてうまく動けるのだろうか? クモヒトデやウミシダは棘皮動物のなかまであり、身体の中央から四方八方に「腕」を広げる。腕の数は、5本の種もいれば、50本以上の種もいる。たとえ同じ種でも、個体によって腕の数がばらつく。しかし、腕の数にかかわらず、彼らは腕どうしをうまく協調させて、這ったり泳いだりする。その臨機応変さを創り出すしくみを、生物実験と数理モデリングのサイクルから解明していく。
第12回複雑系知能セミナー
開催日時:2023年 7/18(火) 16:30 - 18:00
対面形式で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 本棟595教室
講演者: 野津 裕史氏(金沢大学)
講演題目:流れを用いたバーチャル物理リザバー計算
概要: リザバー計算は、リカレント・ニューラル・ネットワークのフレームワークの一つである。リザバーと呼ばれる高次元動的システムの入力駆動の変化を利用する比較的新しい情報処理技術で、リザバーからの出力に対する重みを調整して実装する。リザバーが十分な非線形性とメモリをもつ場合、任意の時系列を高精度に再現できる。近年、リザバーとして物理系のダイナミクスを使用する物理リザバー計算の可能性が議論されている。本講演では物理系として、自然界のいたるところで存在し興味深い豊潤な挙動を示す「流れ」を考え、計算資源としての可能性を数値シミュレーションを用いてバーチャルに検討した結果を紹介する。