キリスト教と建築の関係(補稿)
西欧の建築はキリスト教と関係して発展して来たと言える。キリスト教のあり方、儀式、価値観などは建築の様式に大きな影響を与えて来たのは既に本ホームページの「キリスト教教会堂建築」や「社会・宗教と西欧建築」でもまとめている。
ここではダブリもあるが、もう少し深いレベルからキリスト教と建築の関係を見ていく。
キリスト教と建築の関係(補稿)
西欧の建築はキリスト教と関係して発展して来たと言える。キリスト教のあり方、儀式、価値観などは建築の様式に大きな影響を与えて来たのは既に本ホームページの「キリスト教教会堂建築」や「社会・宗教と西欧建築」でもまとめている。
ここではダブリもあるが、もう少し深いレベルからキリスト教と建築の関係を見ていく。
1 三位一体説
三位一体説とは「父なる神」「子なるイエス・キリスト」「聖霊(天使ではない)」が一体てあるという説で、多くのキリスト教宗派の中で唱えられている教義である。(注1)
結論から言えば、三位一体は人間の知能を越えるものであり、人間の理論や言葉で理解できるものではない、となっている。下図は三位一体説の図象としてよく出てくるものであるが(これ自体、認められた図なのかどうかは不明)。我々の知恵ではこの図は理論矛盾となっていると言わざるを得ない。
神は「父なる神:全宇宙の創造主」「子なるイエス・キリスト:全世界の救世主」「聖霊:神の活動する力」という三つの現れ方(ペルソナと言う)をするが、それらは
様態説:一つの神が父やキリストや聖霊に姿を変える という説ではない
三神説:三つの独立した神がいる という説ではない
誕生説:父なる神から子なるイエス・キリストが生まれ、キリストから聖霊が生まれる という説ではない
よって以下のような例えも全て誤った例えとされる。
・一つの枝から3枚の葉がでる三つ葉のクローバーのようなものである→そのような分割した姿(三神説)ではなく一体化したものである
・一人の男は「父」であり「祖父の子」であり「夫婦の夫」でもあるようなことである→このような役割分担(様態説)ではない
・水が氷、液体、水蒸気と姿をとるようなことである→そのような変容の姿(様態説)ではない。
・卵のように殻、白身、黄身と融合しているようなものである→その様な分割されたもの(三神論)ではない。
・ボディシャンプー、シャンプー、リンスと一体になった洗剤のようなものである→そのような一体ではなく、独立したヘルソナの形を現すものである
すなわち三位一体は例えることが出来ない教義とされる。
注1:エホバの証人、モルモン教、統一協会など三位一体説を唱えていないキリスト宗派もある。
三位一体説を教義とする宗派でも、その意味合いは異なっている。たとえばカトリックは3ペルソナはあるが、むしろ神としての一体化の方に重点を置くが、正教会では3つのペルソナの個性に価値を置く。
では三位一体は建築にどう反映されるのだろうか?
実は三位一体(説)を建築に直接表現した例は知らない。しかし、そのペルソナは建築要素ではないが、デザイン要素として、特にイエス・キリストの姿は絵画・イコン・彫像・十字架などで多く見受けることができる。また、聖霊は(白い)鳩として天井などに描画されることが多い。
ただし、これらの表現方法はカトリック以外の宗派では異なる。
2 マリア
婚約者ヨセフがいたがイエス・キリストを処女懐妊し生み育てたマリア。実はキリスト教の各宗派の中でその扱いはかなり異なる。
我々が一番イメージするのはカトリックでのマリアの扱いであり、彼女は聖母として崇められ、死後は天使に抱えられ天国に召し抱えられる(被昇天)。そして、神と同等な扱いを受けている。その名前は教会堂の名前として、「東京カテドラル・聖マリア大聖堂」とか世界各地の「ノートル・ダム聖堂」としてあり、また、女性名、音楽、彫像、絵画などで広く普及している。
ところが、カトリック以外のキリスト教派ではマリアはそれほどの扱いはされていない。
正教会系ではマリアは神聖な扱いとはしているが「聖母」とは言っていない(聖神女という)。また、プロテスタント系ではマリアは聖なる人物とは見なされていない。
マリアの死後の被昇天にしても、カトリックは肉体・魂ともに天国に召されたとされるが、正教会系では魂のみが召され、プロテスタント系では被昇天はないとされる。
注:カトリックの被昇天が正式に教義になったのは1951年ということで意外と最近だ。
カトリックの聖母マリアは今やキリストと並ぶとも劣らない位の地位を得て、特に芸術世界ではキリスト以上の人気だろう。教会堂建築との直接の関係はないが、名称や内部装飾として欠かせないものとなっている。
3 キリスト像
教会堂内正面に十字架があり、そこにキリストが張り付けになっている・・・日本人が持つイメージであるが、この形はカトリックだけのものであり、正教会やプロテスタントの教会堂では十字架はあるがキリストは張り付けになっていない。
また、教会堂内外にキリストやマリア、聖人などの立体像が並んでいる姿を連想するが、このイメージも基本的にはカトリックのものである。それらを飾る為の台や窪みなどが建築の壁面などを形作る。
一方、正教会系では立体像は禁止されイコン(聖像画)と言われる平面の絵画、モザイクタイル、フレスコ画などがもちいられており、カトリックに比べると内外の壁面は平面的な構成となっている。