キラル医学

キラル医学研究

 キラル体は、光学異性体や鏡像異性体とも呼ばれますが、右手と左手の関係のように、鏡に映さないと同じにならない物質のことを指します。体内のたんぱく質を作るアミノ酸には、光学異性体のうち、L-体しか存在しないと長い間考えられていましたが、最近、D-体もごく微量存在することが判明しました。生命の進化の過程でD-体とL-体のバランスが変わってきてきたことは、生命の起源にも関わっています。

深遠なキラルアミノ酸の世界は、従来の医学になかった価値をもたらしています。早期診断法や根本的治療法がなかった領域、例えば、腎臓病やウイルス感染症、さらには難病において、D-アミノ酸が活用できることが分かってきました。D-アミノ酸を通じた研究は新たな生命の不思議も解明しつつありますが、研究成果を医療応用し、人々の健康にも役立てられるような方向にもかじを取り、現在、研究開発を進めています。

研究内容

 腎臓は体内に微量しか存在しないD-アミノ酸を管理しています。逆に言うと、腎臓病によって腎臓の機能が少しでも変化すると、血液や尿のD-アミノ酸が鋭敏に変動します。我々はD-アミノ酸をバイオマーカーとして腎臓病の診断に応用する研究を進めています。

また、ごく微量しか存在しないD-アミノ酸に、腎臓の機能を良くする機能や、腎臓病の原因となる生活習慣病を抑制する機能があることも解明してきました。

 D-アミノ酸研究はウイルス感染症領域にも広がっています。ウイルス感染症では、症状が重症化したり、回復傾向を早期に検出したりする方法がありません。また、治療薬は大変高価になっています。ウイルス感染症に共通する診断法や治療法の開発に、キラルアミノ酸を活用しています。 

 D-アミノ酸研究は難病研究開発に活用されています。難病は原因が不明で、まずは難病患者で何が起きているのか、病態を解明しなくてはなりません。しかし、一般的な研究手法では病態が十分に解明されていません。D-アミノ酸のように、これまでと全く異なる新しい視点からの研究が必要です。

 さらには、新しい革新的な技術も取り入れたて研究開発を行っています。その一つが情報解析です。難病には情報自体がほとんどない状態です。我々は難病情報を整理し、疫学調査や、独自に開発した機械学習を用いた病態の解析も行ってきました。すべての難病患者さんに最先端の技術を介して恩恵をもたらすべく、研究活動を行っています。

お問い合わせ

木村友則 

大阪大学医学部腎臓内科学招へい教員

E-mail t-kimura※ kid.med.osaka-u.ac.jp (※に@を入力して送信願います。)