歩きスマホを測定しよう
歩きスマホを測定しよう
1.対象
高校生
2.授業時間
50分×2回程度
3.授業の概要
この授業は,教育用マイコンボードmicro:bit(マイクロビット)を活用し,社会問題である「歩きスマホ」の時間を測定するプログラムを作成する探究学習プログラムです.
テーマの定義: 歩きスマホを「画面を見ながら歩くことで周囲への注意が低下する危険な行為」と定義し,その時間を定量化することを目指します.
学習プロセス: マイクロビットの加速度センサの仕組みを学び,まず無線通信機能を使って歩行時の「揺れ」をリアルタイムでグラフ化する予備実験を行います.そのデータをもとに,歩行を判定する「閾値(しきいち)」を決定し,変数や時間の計算を用いたアルゴリズムを構築します.
技術要素: MakeCodeエディタによるビジュアルプログラミング,変数の活用,ミリ秒単位の稼働時間を利用した時間計測などが含まれます.
4.授業のねらい
この授業には,単なるプログラミングスキルの習得を超えた,科学的・社会的なねらいがあります.
社会課題の解決: 身近な危険である歩きスマホをテーマにすることで,テクノロジーを社会問題の解決に役立てる視点を養います.
データ駆動型の意思決定: 勘に頼らず,予備実験で得られたグラフや数値から論理的にプログラムの条件(閾値)を導き出すプロセスを重視しています.
論理的思考の実装: 「開始時刻」の記録や「状態を保持する変数(フラグ)」の活用など,複雑な事象をプログラムに落とし込むための高度なアルゴリズム思考を習得させます.
5.実施実績
2026年1月29日に,高田高校の6年制コースの5年生2名に授業を実施しました.この授業の効果について,「技術的・科学的理解の深化」「論理的思考力の育成」「探究意欲の向上と視野の拡大」の3つの観点から説明します.
技術的・科学的理解の深化
この授業を通じて,生徒はマイクロビットに搭載されたセンサの具体的な仕組みと,それに対応する物理的・数学的概念を実感を持って理解することができます.
センサの仕組みの理解: 加速度センサがx・y・z軸の各方向だけでなく,それらを合成した絶対値で動き(揺れ)を検知できることを学びます.
物理法則との結びつき: 「質量 × 加速度 = 力」という物理の基本式を背景に,加速度を「力」として捉える視点を得られます.
数学的概念の実感: 物体を衝突させた時の加速度をプロットするとsin(サイン)やcos(コサイン)のグラフを示すことを知り,授業内容が数学的知識と繋がっていることに興味を持つ生徒もいます.
論理的思考とデータ分析力の育成
単にコードを書くのではなく,実験データに基づいて論理を組み立てる力が養われます.
客観的データに基づく意思決定: 予備実験で歩行時のデータを無線で飛ばしてグラフ化し,その数値をもとに「数値がいくつ以上なら歩いていると言えるか」という閾値(しきいち)を自分で決定するプロセスを体験します.
高度なアルゴリズムの構築: 「歩きスマホ中か否か」という状態を変数(フラグ)で管理したり,稼働時間の差分から秒数を算出したりする,実践的なプログラミングロジックを習得できます.
探究意欲の向上と課題解決への意識
現実の社会課題をテーマにすることで,学びを実社会や自身の研究に活かそうとする姿勢が育まれます.
探究活動の幅の拡大: 生徒からは,加速度センサの値を取得しプログラムに利用できることに感動し,「自分の探究の幅が広がりそう」といった前向きな感想が寄せられています.
批判的・創造的な改善姿勢: 作成したプログラムが「ただ歩いている時間を測っているだけ」という限界を認識し,明るさセンサを併用してスマホ画面の光を測るといった,より精度の高い解決策を自ら考えるきっかけを与えます.
社会課題への関心: 「歩きスマホ」が周囲の注意を低下させ,事故やケガの原因になるという社会問題の解決にテクノロジーで挑む姿勢が身につきます.
資料
講義資料