機械翻訳を使ってみよう
機械翻訳を使ってみよう
1.対象
高校生
2.授業時間
60分から90分程度
3.授業の概要
この授業の最大の目標は,単にツールを知ることではなく,「機械翻訳を使いこなせるようになること」です.
現代社会において,機械翻訳は急速に普及しており,中には社員に英語の学習を禁止する企業まで現れています.しかし,機械にすべてを丸投げすることには大きなリスクが伴います.たとえば,日本語特有の「省略する文化」が原因で,「私はウナギ(を食べる)」という言葉が「I am an eel(私はウナギという魚です)」と誤訳される問題が起こります.実際に,自治体の防災メールにおいて,機械翻訳のミスにより誤った避難指示が出されてしまった事例も紹介します.
授業では,以下の多様なツールと活用法を徹底的に攻略します.
• YouTube: 自動生成された日本語字幕を,さらに他言語へ翻訳する機能の活用
• Microsoft Translator: パワーポイントのスライドショーにリアルタイムで翻訳字幕を表示する手法
• 音声翻訳アプリ: ドラマ『silent』でも話題となった「UDトーク」や,多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra」の操作
最も重要な学びは,機械翻訳を使いこなすために必要なのは外国語の知識以上に,「母国語(日本語)を正しく使う能力」であるという点です.翻訳ミスを防ぎ,AIが正しく処理できる「やさしい日本語(はっきり・最後まで・みじかく)」のルールを伝授します.
機械翻訳は「すべてを任せるもの」ではなく,あくまで「人を助ける道具」です.英語が主流の時代が終わりを告げようとする今,機械を通じて多言語を理解し合う新しい時代のコミュニケーション術を身につけましょう.
4.授業のねらい
この授業のねらいは,「機械翻訳を道具として自在に使いこなせるようになること」です.
具体的には,YouTubeの字幕機能や音声翻訳アプリの実践的な操作を学び,日本語特有の「省略」が招く誤訳のリスクを理解します.その上で,翻訳ミスを防ぐための「やさしい日本語」(はっきり・最後まで・みじかく)を用い,機械を正しく制御する能力を養うことが目標です.最終的には,機械翻訳を「すべてを丸投げするもの」ではなく,「人を助ける道具」として主体的に活用する姿勢を身につけます.
学校では英語を学習していますが,英語の重要性は徐々に薄れてきており,他の言語の重要性が高まってきますが,外国語をいくつも学ぶことは不可能です.現実的には機械翻訳を活用するしかない状況に至ると予測されます.機械翻訳はただ使えばうまくいくというわけではなく,正しく使わないと誤訳だらけの使えないものになってしまいます.本学習を通して,機械翻訳をうまく使えるようになってもらいたいと思います.
5.実施実績
高校生への授業はまだ実施できていませんが,短大1年生に授業しました.そのときのアンケートからは,受講者が単にツールの使い方を覚えるだけでなく,機械翻訳の背後にある言語的課題や,人間側の責任について深く理解し,成長していく様子が鮮明に読み取れます.
受講者の感想と成長の様子は以下の4つのポイントにまとめられます.
実践的なスキル習得と驚き
YouTubeの多言語字幕機能や,プログラミング教材「Scratch」を用いた翻訳実習,ドラマ『silent』で話題となった「UDトーク」や「VoiceTra」の操作に高い関心が示され,多くの受講者が,これまで知らなかった具体的なツールの活用法を習得したことに喜びを感じています.実際,「翻訳アプリの使い方だけでなく,YouTubeの字幕の付け方ができるようになった」という声や,「これまでGoogle翻訳しか知らなかったが,ChatGPTやDeepLなど多くの選択肢があることを知った」という感想から,情報活用の幅が大きく広がったことがわかります.
誤訳のリスクに対する危機意識
自治体の防災メールで「川から離れて」が誤訳され,逆の指示になった事例に衝撃を受けた受講者が多く見られ,単なる「便利さ」の享受から,「技術の限界と社会的責任」への理解へと意識が深化しています.「誤訳の結果を見てぞっとした」という感想や,「パソコンを信じ切るのではなく,自分でも知識を持つことが大事」という自省が見られます.「機械は間違っていないが,入力する日本語に問題がある」という構造的な視点を持てるようになった点は大きな成長です.
「母国語の運用能力」への意識改革
日本語特有の「省略」が誤訳を招く(「私はウナギ」問題など)ことを学び,多くの受講者が自らの言葉遣いを振り返っており,この授業の核心である「外国語の勉強以上に,正しい日本語を使う能力が大事」というメッセージが強く浸透しています.「やさしい日本語(はっきり・最後まで・みじかく)」という基本ルールを学び,「回りくどくても正しい日本語を使うことが大切だと感じた」や「略し言葉を使いすぎないようにしたい」といった,コミュニケーションの質の改善に向けた意欲が見られます.
社会的役割と未来への展望
公務員志望の学生が「やさしい日本語を読んでみたい」と考えたり,道案内などのボランティア活動に役立てたいと考えたりする様子が見られることから,機械翻訳を,自分たちだけでなく多様な人々を支えるための「道具」として捉え直しています.機械翻訳を「すべてを任せる魔法」ではなく,「人を助ける道具」と位置づけ,人間が内容を確認しながら主体的に使うべきだという結論に達しています.
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