公開講座「機械翻訳を活用しよう」〜AI時代に求められる人間の問いかけとコミュニケーション〜(2026.10.3)
公開講座「機械翻訳を活用しよう」〜AI時代に求められる人間の問いかけとコミュニケーション〜(2026.10.3)
2026年10月3日(土),本学にて令和8年度公開講座「機械翻訳を活用しよう」を開催いたしました.当日は地域のみなさま(17名)にお集まりいただき,最新のAI技術や機械翻訳のしくみ,そしてこれからのコミュニケーションのあり方について,実践的な体験を交えながら楽しく学んでいただきました.
今回は,講座でお話ししたハイライトや当日の様子を,私からのメッセージとともに振り返り記事としてお届けします!
「答えを探す」から「問いを立てる」時代へ
2022年11月にChatGPTが登場して以来,AIの進歩は私たちの社会や生活を大きく変え続けています.これまでのAIは「顔認証」や「おすすめ表示」といった判別・予測が中心でしたが,生成AIの登場によって文章や画像,翻訳まで自ら「生成」できるようになりました.
こうした時代の中で,人間の価値は「正解を探す能力」から「どのような問いを立てるか(指示を出すか)」へとシフトしています.AIは優秀な解答者ですが,起点となる問いをつくるのは私たち人間にしかできない役割です.
「私はウナギ」〜機械翻訳はなぜ間違えるのか?〜
講座では,私が子ども向けのプログラミング学習ツール「Scratch」で自作した翻訳プログラムを使って,機械翻訳の仕組みをみんなで体験しました.
そこで例として取り上げたのが,飲食店で注文する際の「私はウナギ」という日本語です.人間同士であれば「ウナギが食べたいんだな」と文脈で理解できますが,主語や動詞を省略して機械に入力すると,AIは素直に "I am an eel"(私はウナギです) と訳してしまいます.
過去には行政の防災メール等で避難指示が誤訳されてしまった事例もあり,AIの性能云々の前に,「人間側の日本語の省略」が誤解や誤訳の大きな原因になっていることを確認しました.
カギを握るのは「やさしい日本語(和分和訳)」
機械翻訳を賢く使いこなすコツは,英語を勉強すること以上に,「翻訳しやすい日本語に言い換えること(英語の学習でも英訳しやすい日本語に直す和分和訳という学習法があるそうです)」にあります.
講座では,以下の「やさしい日本語」3つの基本ルールをご紹介しました:
はっきり言う(主語・動詞を入れ、省略しない)
最後まで言う(途中で止めずに文を完結させる)
短く・やさしく言う(難しい表現を避け、短い文に分ける)
たとえば,「当館では飲食をご遠慮ください」は「ここでは食べたり飲んだりしないでください」と言い換えるのがやさしい日本語です.
スマホ1台で広がるユニバーサルコミュニケーション
後半では,無料アプリ「UDトーク」や「VoiceTra(ボイストラ)」を活用し,スマホで声を文字化・翻訳する体験を行いました.
音声翻訳アプリは,海外旅行や外国の方との対話はもちろんのこと,耳の不自由な方や高齢のご家族との日常会話,福祉・介護の現場でも大きな力を発揮します.AI技術は,多言語の壁だけでなく,さまざまなコミュニケーションのバリアを取り払ってくれる頼もしいパートナーです.
講座を終えて&受講者のみなさまからの声
受講後のアンケートでは,「人は問いをつくり,AIは解答を作るという役割分担に納得がいった」「『私はウナギ』の例で普段の言葉遣いを振り返る良い機会になった」「耳の遠い家族や介護の現場で使ってみたい」など,温かい感想を多数いただきました.
機械翻訳は非常に便利ですが,決して万能ではありません.ハルシネーション(誤った情報の出力)のリスクもあるため,最後の確認や心の通ったニュアンスの補正は人間が行う必要があります.
「怖がらず,過信せず.」 分かりやすい日本語を意識しながら,ぜひAIと協力して,いろいろな方との交流や対話を楽しんでいただければ幸いです.ご参加いただいた受講生のみなさま,本当にありがとうございました!
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