三種中学校での「課題解決プログラミング」体験教室を振り返って(2026.9.7, 8)
三種中学校での「課題解決プログラミング」体験教室を振り返って(2026.9.7, 8)
2026年9月7日,8日の両日,秋田県の三種(みたね)中学校にお邪魔し,3年生の全クラスを対象としたプログラミング体験教室「自習室の集中度モニタリングシステムを作ろう」を開催しました.
今回は,熱気と笑顔に満ちあふれたその2日間の授業の様子を,講師としての想いとともに振り返ります.
多くのプログラミング授業では,コードの書き方やロボットの動かし方をステップバイステップで教えることが多いかもしれません.しかし,私の授業のスタートはいつも「プログラミングの手順」ではなく,「解決したいリアルな問題」から始まります.
今回のテーマは「テスト前の自習室」に現れる課題です.
「テスト前,自習室でみんなが一生懸命勉強しているけれど,ついおしゃべりしてざわざわしてしまうことがある.集中したい子は静かにしてほしいけれど,自分からは言い出せない.一方で,先生は職員室で仕事をしていて,自習室が騒がしくなっていることに気づけない……」
この学校生活でよくある困りごとを,「プログラミングという道具」を使ってどう解決するか?それを生徒たち自身に考えてもらうことが,この授業の最大の狙いでした.
使う道具は,手のひらサイズの小さなマイコンボード「micro:bit(マイクロビット)」です.
授業を始める際,私は生徒たちにいつも決まって伝える「掟」があります.
答え(解決方法)は1つではない!
絶対に壊れないから,何を試してもいい!(感電もしません!)
失敗して覚えるものだから、どんどん失敗しよう!
プログラミングは,失敗を繰り返しながら自分なりの正解を形作っていく,極めて自由で創造的な活動です.この掟を伝えると,最初は「難しそう……」と不安げだった生徒たちの表情が,一気に柔らかくなっていきました.
授業は全2コマ(100分間)という短い時間でしたが,段階的に技術を学び,最終的にシステムに統合していくカリキュラムです.
まずはパソコンで作ったプログラムをmicro:bitに転送する練習から.ボタンAが押されたら,LED画面に自分の名前がローマ字で流れるプログラムを作成しました.名前が実際に動き出すと,教室内は「おお!動いた!」と早くも大盛り上がり.慣れてきた生徒は,Aボタン・Bボタンを連打するとハートマークが大きくなったり小さくなったりする「ドキドキプログラム」を作って遊んでいました.自由に遊んでもらうことこそが,学びを深める一番の近道です.
次に,今回の本命である「マイク」を使った騒音測定です.micro:bitは,まわりの音の大きさを「0(静か)」から「255(最も騒がしい)」の数値で教えてくれます.この音の大きさをLEDに棒グラフとして表示させるプログラムを組みました.「あーっ!」と声を出すとグラフがぐいーんと伸びる様子は,目で見えない「音」がビジュアル化される新鮮な体験です.
さらに、これを条件分岐(もし〜なら)を使ってプログラムに判断させました.
静かな時(まわりの音が20未満):すやすや眠っている顔 😴
普通(20以上50未満):ニコニコした笑顔 🙂
うるさい(50以上):悲しい困り顔 😢 (※閾値の数値は,生徒自身がデモ波形を見ながら自分の感覚で調整してもらいました
自習室の情報を「離れた場所にある職員室」へ伝えるために,今度は無線通信機能を学びます.無線を体感するための教材として開発したのが「ふりふり無線じゃんけん」です.micro:bitをシャカシャカ振ると,加速度センサーが感知し,変数と乱数を使って「グー(0)」「チョキ(1)」「パー(2)」の手がランダムに決まります.それと同時に無線でペアの相手にデータを送信し,相手の画面にもじゃんけんの手が自動的に表示されるという仕組みです.お互いにタイミングを合わさなくても,後出しなしのじゃんけんがワイヤレスで成立する面白さに,どのクラスも教室中で「じゃんけん,ポン!」という大歓声が響き渡りました.
そして最終ゴールとして,これまで学んだ「音を測るプログラム」と「無線でデータを送るプログラム」を合体させ,
【自習室側】:騒音レベル(0, 1, 2)を判定して無線で送信する
【職員室側】:データを受信し,うるさいレベル「2」が届いたらLED表情と警告音で先生に知らせるという「自習室の集中度モニタリングシステム」の構築を目指しました.
しかし,生徒たちが試行錯誤やペア同士での実験を全力で楽しむあまり,どのクラスも本来のシステム完成前に授業終了の時間を迎えてしまいました.
講義の締めくくりとして,私はこう伝えました.
「みんなが作ったプログラムを組み合わせれば,自習室のシステムは必ず完成させられます.これをどう完成させるかは,みんなへの宿題,そしてこれからの自由探究として残しておきます.ぜひ,STEAMプラザ(三種中に設置された自由にSTEAM学習ができるスペース)で,先生を助けるシステムを完成させてみてください!」
完成品をただ組み立てるだけなら簡単です.しかし,時間が足りなくなるほど夢中になって試行錯誤し,「どうやったら作れるだろう?」と頭を悩ませることこそが,本当の学びです.
授業後の振り返り(アンケート)には,私の胸を熱くする言葉がたくさん並んでいました.
「最初はプログラミングって難しそうで苦手意識があったけれど,やってみたら意外と簡単でとても楽しかった!」
「小さな機械なのに,こんなにたくさんのことができるなんて驚いた.私たちの学校生活にもプログラミングを反映できるところがあるとわかった」
「ロボットを動かすだけじゃなくて,日常生活の身近な悩みや問題を解決できることがわかった.家でもやってみたい!」
「プログラミングは難しいもの」という先入観が壊れ,自分たちの生活をより良くするための「身近な道具」として捉え直してくれたこと.それが,何よりの収穫です.
三種中学校の皆さん,先生方,本当に素晴らしい時間をありがとうございました!
私はこの後,週末には福島でプログラミング教室を実施します.全国を巡る過酷なスケジュールですが,三種中の子どもたちから分けてもらったエネルギーでがんばっていけそうです.
皆さんの机の上にある小さなmicro:bitには,未来を変える無限の可能性が詰まっています.ぜひ,お父さんやお母さん,おじいちゃんやおばあちゃん,そして学校の先生が困っていることを,プログラミングの力でやさしく解決してあげてくださいね.
皆さんが素晴らしい未来のクリエイターになっていくことを,心から応援しています!
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