校務効率化から始める教育DX:高田中・高にて「AIを活用した授業設計・実施・改善」研修を担当しました(2026.9.2)
校務効率化から始める教育DX:高田中・高にて「AIを活用した授業設計・実施・改善」研修を担当しました(2026.9.2)
2026年9月2日に実施されました高田中・高等学校の教職員研修で講師を務めました.日頃よりすぐ隣の短期大学に籍を置いており,高田中・高等学校情報教育アドバイザーという肩書も頂戴しておりますが,これまで先生方と直接ゆっくりとお話しする機会は限られておりました.この度,校長先生よりご依頼をいただき,講師を務めることができました.ありがとうございました.
当日は多くの先生方にご出席いただき,温かい雰囲気の中でお話しできましたことを,この場を借りて深く御礼申し上げます.本記事では,当日の研修内容を振り返りながら,,これからの教育現場において私たちがどのようにAIと向き合い,共生していくべきかについてご報告いたします.
研修の冒頭では,私自身が日頃の業務の中で直面する「リアルな課題」からお話しさせていただきました.
近年,様々な学校から研修のご依頼をいただく機会が増えておりますが,それに伴い「事前アンケートの結果を分析し,当日の講義に反映してほしい」というご要望を多くいただきます.しかし提供されるデータが「紙に印刷された自由記述のアンケート」であったり,組織外アカウントの制限により「CSVファイル(未整理のデータ一覧)」の状態で手渡されたりすることが少なくありません.
これらを従来のExcel関数やピボットテーブルを用いて手作業で集計・分析する場合,多大な時間と労力を要します.そこで私は,以下のような生成AIを活用した効率化を提案し,実演いたしました.
アナログ情報のデジタル化: 紙のアンケート用紙をスマートフォンのカメラ等で撮影し,画像をAIツールにアップロードして「文字起こし」を指示するだけで,即座に高精度なテキストデータ化が可能です.
CSVデータの瞬時な集計・分析: Gemini Notebook(旧NotebookLM)にCSVファイルをそのまま読み込ませ,「項目ごとに省略せず集計・分析してほしい」と指示を入力するだけで,瞬時に可視化や傾向分析が行われます.
私たちが強調したいのは,「定型的な事務作業は生成AIに委ね,教員は本来の主たる業務である『生徒と向き合う時間』や『創造的な教育活動』に専念すべきである」という点です.
2022年11月のChatGPTの登場以降,生成AIは急速,に社会へ浸透し,生徒たちもレポート作成やプログラミング,要約などに日常的に活用し始めています.学校現場においてAIを一律に「禁止」することは,もはや現実的ではありません.
ここで重要となるのが,「AIをどのように使いこなすか」によって,生徒の学力や成長に決定的な差が生まれるという事実です.
先行研究などでも指摘されていますが,AIの利用傾向には明確な二極化が見られます.
学力が停滞する活用法:AIに直接「答え」を求め、それをそのまま出力・模倣する.
学力が向上する活用法:AIに「アプローチ方法や解き方のヒント」を問い,思考のプロセスを自らの力にする.
生成AIは,24時間いつでも真摯に応答してくれる「極めて優秀な学習パートナー」になり得ます.このパートナーから単なる答えを書き写すのか,それとも主体的な学びのヒントを得るのか.「適切な問いを立てAIから有益な知見を引き出す方法」を指導することこそ,これからの教育者に求められる重要な役割であると考えます.
後半は,私自身が日々の講義準備や自己分析において,どのようにAIを「思考の壁打ち相手」として活用しているか,具体的な実践プロセスを共有いたしました.
例えば,高田中・高での出前講義の準備にあたり,私はまずAIを用いて同校のカリキュラムや特徴について多角的にリサーチを行いました.その上で,難関大を目指す「6年制コース」から,基礎の確実な定着を重視する「3年制Ⅰ類進学クラス」まで,それぞれのコースの特徴や学力レベルに適したプログラミング学習コンテンツ(実験データの統計分析からScratchを用いた基礎実習まで)をAIと対話しながら精緻にマッピングしていきました.
また,私自身が作成した授業スライドや指導案をAIに読み込ませ、客観的な「チェック(査読)」を受けさせた事例もご紹介しました.
AIからの指摘事例: 「講義全体のテーマが『プログラミングによる社会貢献(医療・防災)』という社会的価値の高いものであるにもかかわらず,途中に脈絡のない『じゃんけんプログラム』が挿入されると,全体のストーリー一貫性が損なわれ,生徒の納得感が薄れる懸念があります。再構成を推奨します」
この指摘は極めて合理的であり,私自身も即座に教材の改善を行いました.授業案の妥当性を同僚の先生方に何度も確認していただくのは,時間的・心理的な配慮から躊躇われる場面もありますが,AI相手であれば時間を問わず,何度でも建設的なフィードバックを受けることが可能です.
今回の研修における私自身の反省点として,お伝えしたい情報を詰め込むあまり「50ページ」に及ぶ膨大なスライドを用意してしまい,当日に先生方がご自身の端末を操作して体験する時間を十分に確保できなかった点が挙げられます.この点については,今後の大きな改善の課題と捉えております.
しかしながら,研修後に先生方からお寄せいただいた振り返りアンケートを拝読し,非常に大きな手応えと感動を覚えております.
「これまで生徒に対してAIの安易な使用を制限していましたが,今後は『どのようにAIへ問いを立て,適切なヒントや記述プロセスを導き出すか』という,より建設的な指導アプローチに挑戦したいと思います」
「一からの資料作成を任せるのではなく,自身の作成した授業計画に対する『最終チェック・壁打ち』としてAIを活用するという視点は大きな発見でした.周囲に気を遣うことなく,実践的なアドバイスを得られるため,早速試してみたいです」
「テクノロジーの進化に対して,また新しいことに取り組むことに対して苦手意識や心理的ハードルがありましたが研修を通じて『まずは身近なところから一度触れてみよう』と前向きな一歩を踏み出す勇気を得られました」
このように,校務の負担軽減だけでなく,日々の授業改善や教育実践の高度化に向けて,前向きな意識の変化を共有していただけたことは,アドバイザーとしてこの上ない喜びです.
当日の講義動画(アーカイブ)や使用したスライド資料,デモ用のサンプルデータは,すべて専用のGoogleサイトに集約し共有しております.振り返りや復習の際に,お時間のある折にいつでもご活用いただけますと幸いです.
生成AIは人間の仕事を奪う脅威ではなく,私たちの教育をより豊かにし,業務を最適化するための強力な「パートナー」です.
まずは,
AIツール(GeminiやCopilotなど)を立ち上げてみる
「明日の授業の展開方法」について簡単に相談(壁打ち)してみる
過去のアンケートデータなどの整理・要約を試験的に任せてみる
といった,日々の小さなトライから始めてみてください.教員自らがAIという新しい道具を楽しみ,主体的に活用する背中を見せることこそが,これからの時代を生きる生徒たちに対する最も価値のある教育実践に繋がると確信しております.
高田中・高等学校の教職員の皆様,今回は大変有意義な時間をありがとうございました.今後もアドバイザーとして,皆様の校務改善や授業開発を全力でサポートしてまいりますので,どうぞお気軽にご相談ください.