九州大学,熊本大学,崇城大学の薬学部に於いて実施したX線解析の中で印象に残っている化合物を以下に紹介した.三次元座標がCCDCに未登録の化合物については投稿論文の図を用いた.
シクロオクタテトラエンが4πで反応した非常に珍しい例.本例はシクロペンタジエノンはアセナフテンが宿環したもの,
発見のきっかけになったのはジフェニルシクロペンタジエノン誘導体であり,付加体の構造は HAJMEK である.
大型計算機のプログラムをワークステーションに移植して解析を実施した.結晶の非対称単位に2個の分子が入っているため解析に苦労した例(次図は線画表示,緑:COT,紫:シクロペンタジエノン).
←結晶の非対象単位の構造
CPCについて
以下CPCと略称するCyclopentadienoneは上記の構造である.
室温で単離可能な回転異性体(アトロプ異性体)
フェンサイクロンとN-ナフチルマレイミドとの付加体は結晶抱接ホストとして幅広い溶媒を包摂する.
ブタノンを包摂した際のホストの構造
相互作用
結晶パッキング図
結晶抱接化合物
ベンゼンを包摂するホスト化合物
ステレオ図
シクロペンタジエノンとアゼピンとの [4+2] 付加体がコープ転位したエノン体は室内蛍光灯の光で [2+2] 付加体を与えた.4員環の部分は大きくめくれた構造を有している.
>Ph-Ph<の単結合は1.657 (5) Aと異常に長いことが判明した.
シクロオクタテトラエンはビシクロ体との間に平衡が存在する.本例はフェンサイクロンがビシクロ体と反応した 2:1 付加体の例.結晶化の際に,ベンゼンとメタノールを抱接する.フェンサイクロン付加体が結晶抱接ホストとして機能する可能性を強く示した例.
電子欠如型シクロペンタジエノンとベンゾキノンのDiels−Alder付加体に光を照射するとスチレン二重結合とケトン基との2+2環化付加体が生成する.
(a) ホスト
(b) ホストーゲスト
トルエンはdisorderの状態で抱接されている.
メチル基の向きが反対の構造が混在しているため,キシレンのような構造を示している.
左図はシクロペンタジエノンについての周辺環状反応のスキームであるが,ダイアザシクロペンタジエノンの場合も同様に考えることができる.
X線解析の結果は anti-endo 体であることからアゼピンの2,3-位に [4+2] 付加した後,コープ転位したと考えることができる.
Anti はカルボニルとアゼピンの窒素の関係.Syn 体はアゼピンの4,5-位に付加した後.コープ転位すれば生成する.
座標データが登録されていないため,投稿論文に掲載された下図を参照してほしい.
Diaxaazulene 3 を4πソース2とアミノフルベンから合成できたと報告(森,兼松)されたが,実際は化合物4であることが指摘されたため,4πソースの構造解析を依頼された.その結果,ジエン体は2ではなく1であることが判明した.X線解析を担当した筆者が熊大異動直前であったため,座標データが追補資料として投稿原稿に添付されたか否か不明である.
K.Harano, M.Yasuda, K.Kanematsu, Heterocycles, 1983, 20, 19, DOI: 10.3987/R-1983-01-0019
[4 + 6]π Cycloadditions of thiadiazole 1,1-dioxides to 6-dimethylaminofulvene: a synthesis of a diaza-azulene
Masato Mori and Ken Kanematsu
Abstract Treatment of 2,5-bis(alkylsulphinyl)-1,3,4-thiadiazole 1,1-dioxides with 6-dimethylaminofulvene in acetone gave 5,6-diaza-azulenes in good yields; solvent effects support a concerted mechanism for the formation of the cycloadducts.
M. Mori and K. Kanematsu, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1980, 873. DOI: 10.1039/C39800000873.
対面したベンゼン環を繋ぐ単結合長は1.583Å,右図は水素原子を登録するのを忘れたため,Avogadroソフトで計算位置に水素を付けたもの.
HOMOとLUMOを1分子に描画した図
4-dimethylaminophenyl基がHOMO に、4-nitrophenyl基がLUMOに局在化し、FMO相互作用による安定化が示唆された.X線解析結果からは分子充填が分子間相互作用の様式で安定化していることが分かる.
Additional details
Deposition Number 1119157
Synonyms (4a,10a-Ethylene-1-oxy-2-thio)-1,4a,5,10a-tetrahydro-3-methyl-10-thia-isoalloxazine
Deposited on 13/04/1984
Associated publications
Publication Image Y.Maki, M.Tanabe, M.Sako, K.Hirota, K.Harano, Chemistry Letters, 1983, 1093, DOI: 10.1246/cl.1983.1093
力場計算構造 X線三次元座標は未登録状態.
TUPSAY : 7,7a-Dimethyl-7-hydroxy-imidazolino(3,2-a)pyrrolidine-5-spiro-2'-(3-methyl-1,2,5,6-tetrahydropyrazine)
Space Group: P 21/c (14), Cell: a 7.156(2)Å b 15.314(2)Å c 11.689(2)Å, α 90° β 94.70(2)° γ 90°
T.Yamaguchi, M.Eto, K.Watanabe, N.Kashige, K.Harano, Chemical and Pharmaceutical Bulletin, 1996, 44, 1977, DOI: 10.1248/cpb.44.1977
TUPSAY01 : (2R*,3R*,5R*)-1,2-Ethyleneamino-1,7,10-triaza-2,3,6-trimethyl-3-hydroxy-spiro(4.5)decan-6-ene
Space Group: P 21/c (14), Cell: a 7.156(2)Å b 15.314(2)Å c 11.689(2)Å, α 90° β 94.70(2)° γ 90°
T.Yamaguchi, M.Eto, K.Harano, N.Kashige, K.Watanabe, S.Ito, Tetrahedron, 1999, 55, 675, DOI: 10.1016/S0040-4020(98)01079-5
TUPSAYは速報,TUPSAY01は詳報,速報には座標は未登録
6π+2π付加体,実は4π+2π付加体だった.
EZBTCH10 : 3,4:5,6-Dibenzo-14-ethoxycarbonyl-8,10-diphenyl-14-azatetracyclo (9.3.2.02,7.02,10)hexadeca-7,12,15-trien-9-one
Space Group: P 21/n (14), Cell: a 15.119(10)Å b 14.532(6)Å c 13.042(10)Å, α 90° β 91.40(6)° γ 90°
M.Yasuda, K.Harano, K.Kanematsu, Journal of Organic Chemistry, 1980, 45, 2368, DOI: 10.1021/jo01300a021
工事中