塗装ブース
ブースの種類とその特徴
ブースの種類とその特徴
①塗装ブースとは
塗装ブースとは、自動車補修において重要な工程である「塗装」を行う部屋のことを指します。塗装ブースが必要な理由は、塗装ブース内をクリーンに保つことで塗装面にホコリが付着することを防止し、さらにはその場で乾燥まで出来ることです。
②フィルターの必要性
塗装ブース内では塗装をするため、作業者にとっては塗装ミストと有機溶剤を体内に吸収させない工夫が必要になりますし、またその塗装ミストと有機溶剤を屋外に垂れ流すと、環境汚染の原因となります。
そこでフィルターが必要になります。フィルターには給気側と排気側の2種類があり、それぞれ役割が異なります。給気フィルターは、塗装ブース内にホコリ等が混入することを防ぎます。対して排気フィルターは、ブース内の塗装ミストや有機溶剤が屋外に漏出するのを防ぐ働きがあります。
③塗装ブースの種類
(1)自然給気式 塗装ブース
現在でも最も簡易的で一般的な塗装ブースです。この自然給気式塗装ブースの特徴は、排気側にのみファンがあり、その排気ファンによってブース内を(外気圧より僅かに)負圧にし、塗装ブース内の空気を引き抜くことで、塗装ブースの内部の空気を外気と循環させる方式です。フィルターは給気側と排気側の両方にありますが、その特性上、塗装ブースの僅かな隙間からホコリが混入するリスク(塗装ブース内を負圧にすると、給気フィルター以外の隙間からも空気が入ろうとするため)があります。
(2)圧送式 塗装ブース
自然給気式から一段階進化したブースが、こちらの圧送式塗装ブースになります。自然給気式(ファンは排気ファンのみ)とは異なり、新たに給気ファンを設けることにより、塗装ブース内に入る空気は必ず給気ファンを通ることになるため、自然給気式と比較してホコリの混入を大幅に抑制することが出来ます。
(3)圧送式 乾燥機能付き 塗装ブース
圧送式の発展型として、給気ファンの手前にヒーターを設置することで、給気ファンから暖かい空気がブース内に流れ込むことを利用して、塗装ブース内で乾燥まで完了させるブースが登場しました。これにより仕上がり状態(完成状態)で塗装ブースから物を搬出できるようになり、作業性が大きく向上しました。
(4)上下圧送式&セミダウン方式 塗装ブース
上下圧送式は天井から床下へ空気が流れる方式で、ホコリが塗装面に付着しにくく、現在では上位機種を中心に主流になりつつあります。これに近い方式で、セミダウン方式という物もあり、こちらは給気ファンが天井の前方方向についており、排気側が反対側の床面に設置されています。このセミダウン方式は、殆どの場合ピット工事が不要なので設置が(上下圧送式に比べれば)簡単な変わりに、空気の流れが横方向になるため、上下圧送式よりもホコリを引きずる可能性があると言われています。
④フィルター交換の目安
塗装ブースには、給気フィルターと排気フィルターの2種類が設置されていますが、それぞれ役割が異なるため、消耗・交換のタイミングも異なってきます。
具体的には、排気フィルターは塗料のミストや有機溶剤がこびりつくことになるため、給気フィルターに比べて寿命が短くなります。また、フィルターとして性能が落ちる時間も早いため、小まめな交換が必要になってきます。
⑤ファンの種類
塗装ブースに使用されるファンには2種類に大別され、一つはシロッコファン、もう一つは有圧換気扇です。この2種類の他にもリミットロードファンやターボファンもありますが、今回は割愛します。
シロッコファンは、圧送式塗装ブースの給気・排気ファンに多く使われる方式で、風量効率に優れているのが特徴です。自動車用の塗装ブースでは、通常5.5kw(7.5馬力)で用いられることが多いです。
注意が必要なのは、日本の労安法でブース内の環境の規定があり、仮に容積が大きなブースだと上記の馬力では規定に届かない場合があり、その場合はより大きな(10馬力など)パワーを持つシロッコファンを使用することもあります。
有圧換気扇はモーターに直接プロペラが取り付けられている物で、一般的な換気扇に似た見た目をしています。その構造上、空気がモーターを通過するため防爆仕様に出来ません。また、シロッコファンに比べると風量効率が悪いため、ビニールブースや低価格のオープンブース等に用いられることが多いようです。
↑ 有圧換気扇 ↑シロッコファン